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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第3章 冒険者の少女、新しい力を求める

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59話 きょうらんのうたげ








 フェミニアースの最北に位置する、魔王が君臨する居城・魔王城。


 200年前、前魔王が同じく居城としていたが前魔王討伐の後、廃墟となっていたこの城を現魔王が修復し改装して住んでいる。

 檻に入れられたまま魔王ビイエ・ルシファーの前に引き出された“竜の牙”の捕虜たちは、自分達にこれから起こることへの不安の表情でいっぱいだった。


 目の前には、魔王ビイエ・ルシファーが3メートルもあるその巨体を、豪華な魔王の玉座に座して恐ろしい雰囲気を漂わせている。


 魔王ビイエ・ルシファーは、頭には二本の角、口は大きく牙が生えており爪も鋭い、まさに魔王というテンプレのような分かりやすいデザインであった。

 その傍らにはさっきフェミニースに、お灸を据えられて帰ってきたばかりのリーベが、THE・悪の幹部という様な感じで立っている。


「俺達を一体どうする気だ!」

「もしかして、魔物の餌にでもするきか!?」


 ”竜の牙”団員達のその問いかけに対してリーベが口を開く。


「そんな勿体ないことはしない。お前達は今からこのカンペに書かれたとおりにしろ。大人しくそのとおりにすれば命は助けてやる」


 黒い禍々しいフルプレートを着用した魔王直属暗黒騎士が、ガチャガチャと金属音を鳴らしながらカンペを持って檻に近づく。


 ”竜の牙”団員達は恐る恐る何が書かれているか見ると、そのカンペにはこう記されていた。


 A:攻め 見た目は大人しい草食系なのに中身は積極的な肉食系な感じで

 B:受け 生意気だけど、意外と押しに弱い感じで


 B「お邪魔しまーす。あー、疲れた、疲れたー!」

 A「ちょっとB、これから勉強するんだよ?」


 B「その前に休憩しようぜ!!」

 A「まだ何もやってないけど?」


 B「いーのっ! よーし! ベッドどっくせーん!」

 A「………ねぇB。この間の話ちゃんと覚えてるよね?」


 B「そっ…それは、その……。あ! ……あの日の夜っ、俺、禄に寝れなかったんだからな!」

 A「じゃあ……そろそろいいよね?」


 B「……なに、が?」

 A「Bの返事。僕、まだ聞いてないんだけど?」


 B「ちょちょちょ!! 言うの?! 言ったじゃん!! ……ねっ、寝れなくなったって!!」


(BがここでAを押さえ込む)


 B「っ……なに!?」

 A「好き同士って何するかわかる?」


 B「…わか、わかんないっ……、」

 A「そっか……。じゃあ、教えてあげないとね」


 B「……なっ、っふ、ん……むぅ……!! ……っ?!」

 A「ねえB……、僕にこうされるのは嫌?」


 B「そんなの、わかんな…っ」

(※この後は割愛させていただきます)


「こんなこと、するわけないだろうが!!」

 ”竜の牙”団員達から一斉に反発の声が上がる。

 だが、これは仕方ないことであった、BLは男性にはやはり受け入れがたいのである。


「魔王様、やらないって言っていますー」

「うむ、仕方ない。では、暗黒騎士~、次のカンペを」


 魔王の指示により暗黒騎士がカンペを捲る。そこに記されていたのは、またもやBLの掛け合いシーンであった。


「これはあの名ドラマ、“オジサンらぶ”の部長が挙式直前で、秋田を諭して槇を探しに行かせる胸キュンの名シーンである! 配役はそこの素敵なオジサマが部長役で―」


 リーベが、早口で説明するが途中でまた反発の声が上がる。


「今回は、そんなシーンはないから! プラトニックだから!! 部長の純愛だから!!」


 リーベが怒って反論するが、冒険者として戦場で戦ってきた者たちにとって、とうてい受け入れられる世界ではなかった。


「魔王様、またやらないって言っています。どうしますか?」

「じゃあ、逆にどんなシチュエーションならするんだよ!」


 魔王が少し切れた感じで、団員達に尋ねる。


「そもそも、ホモなんて俺達は興味ないんだよ!」


 団員達のこの返答に、魔王とリーベは声を揃えて光に速さでこう突っ込んだ!


「BLはホモじゃねえよ!! ロマンだよ!! ファンタジーだよ!! わかっているんだよ……」


 言い終わった二人は少しテンションが下っていた。

 気を取り直した魔王とリーベは次のシュチュの話し合いをする。


「しょうがない、いつものあのシュチュで行く? リーベ……」

「そうですね、魔王様……」


 そうすると屈強なオーク達が魔王の間に入ってくる。


「我々は上級者なので、屈強なオーガ×イケメンでも、全然大丈夫なのさ!!」


 屈強なオーク達が、檻の中にいる団員達を力任せに引きずり出し狂乱の宴が始まる……


「アーーーーーーーーッ!!」


 魔王城に団員達の断末魔の叫びが響き渡る……


「やっぱり、無理矢理シュチュはグッとはきてもキュンキュンはしませんね……。」

「そうだね、やっぱり合意のもとの純愛系が見たいね……」


 魔王とリーベは、その光景を見ながら感想を述べあう。

 三年前に人類側の戦力が減った原因の一因がこれであった。


 捕虜になった男冒険者達は同じ目に合わされ、心に深い傷を負い引退するものが続出したのだ。


 三日後に捕虜となっていた団員達が、フラム要塞近くに開放されているのが発見されることになる。もれなく手で尻を押さえていたという……


 リーベと交戦したその日の夜、晩御飯後に紫音はミレーヌに【女神武器】について尋ねる。


「ミレーヌ様、【女神武器】ってどうしたら、手に入れることができるのですか?」


 ミレーヌは紫音の質問にこう答えた。


「【女神武器】は女神フェミニース様に、認められる程の活躍をしなければならない。但し人々の為にという、正しい心も持っていなければならない」


「一体どれくらい活躍したらいいんですか?」


「そうだな、人によるとしか言えないな。私は二年魔物と戦った時点で与えられたが、カムラードやスギハラは四年ぐらいだったし、クリス君やエスリン君も二年だったかな……」


(それほどかかるのか……)


 落胆している紫音に、ミレーヌが説明を続ける。


「もう一つ手っ取り早く入手する方法がある。そして、この方法なら今の君にも手に入れることが出来るかもしれない」


「今の私にもですか?!」


 紫音は思わぬ朗報に期待が膨らむ。


「それは、ミリアちゃんやリズ君のように先祖、肉親から受け継ぐという方法だ。勿論この方法でも正しい心は持っていないと【女神武器】は使えないが、君なら大丈夫だろう」


「でも、私の先祖には………… あっ!!」


「思い出したようだな。そう、君の先祖の英雄 アマネ・アマカワ様が与えられた【女神武器】だ」


「天音様の【女神武器】……」


「但し、この方法にも一つ問題がある。それは、たとえ受け継げたとしても、その【女神武器】はあくまでアマネ様が与えられたもので、彼女の戦い方には合っていても、君の戦い方に合うかどうか解らないといことだ」


(確かに同じ流派でも、微妙に刀の振り方が違うことがある。その振り方に武器が調整されているかもしれない……)


 紫音が考え込んでいると、ミレーヌが彼女の背中を押す。


「まあ、取り敢えずその辺のことは、手に入れてから考えてみてはどうかね? 今のままでは取らぬ狸のなんとやらさ」


「そうですね!」


(確かに、また今度いつあの黒い女魔戦士と出会うか解らない。早く強力な武器を手に入れないと!)


 紫音は天音の【女神武器】を手に入れる決意をする。


「ところでミレーヌ様。天音様の【女神武器】は、今はどこにあるのですか?」


「今は王都近くの聖墓だよ。言い伝えでは、そこにあるアマネ様の大きな墓石に封じられていると聞く」


「王都近くの聖墓……」


(私がこの世界に初めて来た時に転送された場所だ……。フェミニース様は、私がこうなることが分かっていたんだ……)


 紫音はフェミニースの心遣いに感謝しつつ、そこまでしてくれるなら、もう初めから【女神武器】をポンッと出して欲しいと思った……





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