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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第3章 冒険者の少女、新しい力を求める

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58話 骨折り損のなんとやら







「それでは、私はこれで帰ります」


 天界に帰ろうとしたフェミニースを紫音は引き止めて、ダメ元で彼女にお願いしてみる。


「待ってください、フェミニース様! 私に【女神武器】をください!」


 フェミニースはその願いを聞くと残念な顔をして、首を横に振りこう答えた。


「残念ですが紫音、今のアナタにはまだ与えられません。まだ、アナタはそれ程の事をなしてはいません」


 紫音はその答えが帰って来るのは解っていたが、その答えを実際に聞くと残念な気持ちになってしまう。


「そうですよね……」


 残念そうな顔をする紫音を見たフェミニースは、独り言のように小さな声で呟いた。


「身近にいる頼りになる人間に、聞くことはいいことです」


 紫音はその独り言を聞くと


「身近にいる頼りになる人間……」


 その呟きで、ミレーヌの顔が思い浮かんだ。


「ミレーヌ様!」


 フェミニースは紫音のその言葉を聞くと、笑顔で彼女を見て最後にこのような言葉をかける。


「では、紫音、ミリア、リズ。私はこれで帰ります。これからも、頑張りなさい」

「はい!」


 三人がそう答えると、フェミニースは眩しい光を放つ。


「眩しい……!」


 三人がその光で視界を失っている間に、彼女はその場から居なくなった。


「居なくなってしまったッスね、ハンニャ―仮面のお姉さん」

「うん……」


 リズの思わず出てしまった言葉にミリアが答える。

 二人は正直、まだ事態を飲み込めずにいた。


「アレ? 私、今まで何していたんだっけ?」

「私も、一体……」

「何かしていたようなー」


 エレナ、ソフィー、アフラの意識が戻る。


「たしか……、北東の獣人拠点へ向かっている途中で……」

「今日はもう帰ろうか…」

「そうね…。何もしていないけどなんだかすごく疲れたわ」


 紫音がみんなに提案すると、その提案にソフィーが賛同する。


「そうですね。私も何故か疲れました」

「たしかに、何か疲れたね―」


 エレナとアフラも、覚えのない疲れを感じて同意した。


「私もどっと疲れたッス……」

「わたしも……」


 リズとミリアも疲れを隠せないでいる。

 こうして、一同は何の結果も得ず何とも言えない気持ちのまま街への帰路へと就いた。

 その頃、黒い女魔戦士は魔王城へグリフォンの背に乗って逃げ帰っていた。


「あんなのが、出てくるなんて反則じゃない!」


「ドーモ。黒い女魔戦士サン。般若仮面です」

 いつのまにか後ろに現れた般若仮面に、彼女は驚くがグリフォンの背中であるここに逃げ場はない。


「今は“クナーベン・リーベ“と、名乗っているのだったかしら?」

「わっ、私達のする事に干渉しない約束でしょう?!」


 クナーベン・リーベと呼ばれた女魔戦士は、内心怯えながら精一杯虚勢を張ってそう般若仮面に意見する。


「確かにそう言いました。けど、こうも言いました。天河紫音には一年経つか、女神武器を手に入れるまでは手を出すなと……」


「少し挨拶しようとしただけよ…。アナタのお気に入りが…、これから私達の宿敵になるかもしれない相手が、どの程度できるのかを……」


 リーベには般若仮面が、今の言い訳で納得していないことが仮面越しでも伝わってきた。


「同じ仮面を着けている者として、今回は見逃してください!」


 リーベは両手を付いて懇願する。


「駄目です、約束を破る悪い子にはお仕置きです」

「そんな、どうか御慈悲を!!」


「……、わかりました。しかし、次は許しませんよ」


 リーベは許されホッとするが、般若仮面はさらに言葉を続けた。


「ただし、今回のペナルティとして、私は紫音達の側に少し肩入れします」

「わかりました……」


 あとで魔王様に叱られると心の中で思いながら、取り敢えずお仕置きの恐怖から開放されたことに安堵するリーベであった。


 街への帰路を歩いている紫音に、ソフィーが話しかけてくる。


「ねえ、シオン・アマカワ。アナタにお願いしたいことがあるのだけれど?」

「ミリアちゃんはあげないよ!」


 紫音がそう即答すると、ソフィーが呆れた表情をするが、直ぐにこのような頼み事をしてきた。


「いや、誰もそんなこと言ってないでしょうが! 違うわよ、今回のことをお姉様に説明して欲しいの。このままでは、私……と、あとアフラは使えない奴認定されて、お姉さまのあのクールな表情から蔑んだ眼で見られちゃうわ! まあ、それはそれで、そういうお姉様も見られていいのだけれど……」


 ソフィーが上級者の発言をしたが、紫音はまだそこまで到達していないので、理解できずに無視することにして彼女にこう答える。


「わかったよ。クリスさんには、私からお話しておくね」

(あの黒い女魔戦士の話もしないといけないし……)


「上手く言ってよね。お姉様の私への評価が懸かっているんだから」


 街についた紫音は、そのままクリスに会いに行って件の話をすることにした。


「そう、話はわかったわ。その仮面の黒い女魔戦士のことは、街でも話題になっているわ。“竜の牙”を壊滅させたって、ちょっとした騒ぎになっているの。まあ、フェミニース様が出てきたのなら、向こうも暫くは大人しくしているかも知れないわね」


「今武器が壊れて持っていないので、そうだといいんですけど……」

「ついに壊れてしまったのね。ちょっと待ってなさい、倉庫にいい武器がないか探してくるわ」


 クリスは暫くして武器庫から、鋼のサーベルを手に戻ってくる。


「これしかなかったわ。形が似ているから持ってきたけど、無いよりはいいでしょう?」

「はい、ありがとうございます。」


 紫音はクリスから、鋼のサーベルを借り受けると家路につく。

 その頃、魔王城では狂乱の宴が始まろうとしていた……



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