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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第1章 少女、冒険者目指して奮闘する。
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02.5話 2人の女神(2)




「では、紫音。これよりあなたに、私の世界に合うように再構築した体を与えます。何か希望はありますか? 髪や瞳の色を変えたいとか、身長を変えたいとか? でも、魔王を倒す力というのは駄目です。その力は努力して得てこそ価値があるのですから」


 フェミニースから要望を聞かれた紫音は、少し考えた後に遠慮がちにこのようなお願いをする。


「では、あの……、その……、胸のサイズをもう少しだけ……、ほんの少しだけ大きくして頂ければなー、なんて……」


 すると、その紫音の願いを聞いたフェミニースは、今迄にないほどの怒りのこもった声で、紫音に説教を始める。


「紫音、このお馬鹿さん!! 大きな胸など立派な女性になるのに必要ありません! 大きな胸があれば、強くなれるのですか? 魔王が倒せるのですか? 活躍する女性になるのですか?!」

 

 あまりの剣幕で怒るフェミニースに紫音は、できる後輩女神ミトゥースに助け舟を求めるべく彼女を見た。


 するとミトゥースは、視線は遠くに向け、存在感を消し空気になることに徹し、自分に話題が振られる事が無いうちに嵐が過ぎ去るのを待っていた。


(ミトゥース様!? アナタ、それでも私がいた元の世界の女神様ですか?!)


 このように心の中で叫びながら、紫音はフェミニースの<大きな胸は活躍する女性には不要論>を、説教と共に聞かされていた。


 できる後輩女神ミトゥースには、紫音が自分に助け舟を求めていたのは判っていた。


 だが、年齢の平均サイズより少し大きめである自分が、この談義に加わるのは大変危険であり、


「そうそう、胸なんて大きくたって、肩が凝るだけですよ~」


 ましてや、こんな発言をうっかりしてしまえば、憧れのフェミニースの好感度は間違いなく下がるであろうし、最悪敵認定をされてしまうかもしれない。


 そのため彼女は自分に助けを求める、か弱き存在に心を痛めつつ嵐が過ぎ去るのを待つことにした。


「すみません、フェミニース様。私が間違っていました……」


 フェミニースの説教を聞かされ続け、半泣き状態の紫音はフェミニースに謝罪する。

 だが、女神の怒りは収まらず厳しい答えを返す。


「駄目です、紫音。罰として新しい体の胸のサイズを小さくします!」


 すると紫音はその答えを聞くと、同時にボロボロ泣きだしてしまう。

 彼女がここまで泣いたのは、人生で始めてかもしれない。


「これ以上小さくなったら、私は自分が女の子だと言う支えを何にすればいいかわかりません…。このサイズは、私が女の子だという最後の証なのです!!」


(※あくまで、紫音個人の感想です)


 このような想いを、フェミニースに泣きながら訴えた。


「お姉様!」


 自分の死の受け入れさえ涙を見せなかった紫音が、あまりにも泣く姿を見てミトゥースは思わず、フェミニースに紫音への恩情を求める呼びかけをしてしまった。


 フェミニースも紫音が泣き出してしまったことに動揺しており、ミトゥースに言われるまでもなくそうするつもりだったので、少し狼狽えながらすぐさま紫音に宥めるようにこう語りかける。


「嘘、嘘ですよ、紫音。反省してくれれば、それでいいのです。そうだ、1cm、1cm大きくしましょう!」


「それはいい判断です、お姉様! よかったわね、紫音」


 フェミニースのその意見に、ミトゥースがすかさず相槌を打つ。


 それを聞いた紫音は、嬉しさのあまり泣き止み


「本当ですか? 本当に1cm大きくなるのですか?! 私、もう上げて寄せなくても、AAサイズだと胸を張って言ってもいいのですね!」


 そう言って、満面の笑顔で喜ぶ紫音だった。


 1cmだけで喜ぶ紫音を、初めて愛らしく思えるミトゥースだった。


「コホン…… 紫音、これよりあなたに新しい体を授けます!」


 フェミニースが紫音に手をかざして、女神の力を発動させる。


 すると、手から不思議な光が放たれ紫音の全身が光に包まれると、新しい体と服・装備が創られる。


「これが新しい体……」


 あまり変わった実感を得られなかったが、これでもう一度生きられるのだと思うと嬉しさがこみ上げてきた。


「武器は刀にしておきました。あの世界では、かなりのランクのものです」

「はい、ありがとうございます」


 紫音の旅立ちの時が来る。

 旅立つ紫音にフェミニースは、このような話をしてくる。


「では、名残惜しいですが、これでお別れです。今からあなたを私の世界【フェミニアース】に転送します。最後になりますが、先程さんざん魔王を倒せと言いましたが、無理だと思えば魔王を倒す必要はありません」


 さらにフェミニースは話を続ける。


「倒すのが一番解りやすい活躍の方法であるというだけです。それに倒したところで人はまた争いを初めて、私はまた魔王を創ることになるでしょう」


 そして、最後に今迄で一番、優しい顔と声でフェミニースはこう語りかけた。


「だから、あなたの考える人々の役に立つ立派な女性になりなさい」

「はい、精一杯がんばります!」


 紫音がそう答えると、フェミニースは名残惜しくならないうちに、転送ゲートを開く。


「色々とお世話になり、ありがとうございました」


「頑張りなさい、元気でね」

「アナタの活躍を願っていますが、無理せず息災でね」


 明るく送り出すミトゥースに対して、フェミニースは旅立つ妹を心配する姉のようであった。


「行ってきます!」


 紫音は一瞬二人の女神に惜別の思いを抱くが、元気に別れの挨拶をすると、深くお辞儀をして、転送ゲートに入って旅立っていった。


 紫音が旅立った後、ミトゥースは名残惜しそうにしているフェミニースに


「お姉様は、余程あの娘を見込んでいるのですね。今までの転生者の中でも一番の強化をしていました。あれなら、あの娘のこれからの努力次第で、魔王を倒せると思います」


 このような自分の見解を述べ、続けてこう質問する。


「やはり、四年前に転生させた紫音よりも総合能力では上のあの者ですら、未だに結果を出せていないから、あの子には結果が出しやすくなるように、能力を強化したのですか?」


 フェミニースは、質問に答えなかった。

 ミトゥースも空気を読んでそれ以上聞かず、話題を紫音のことに切り替える。



「さすがはお姉様が見込んだ娘、とてもいい娘でしたね」

「そうでしょう? だって昔の私に似ているのですから」


 フェミニースは、嬉しそうに答えた。


 こうして、紫音は異世界へと転生する。

 彼女が異世界で、活躍出来るかは女神のみぞ知る



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