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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第2章 新米冒険者、異世界で奮闘する。

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45話 鉄の巨大猪







 要塞の外で戦闘が始まった頃、ミリア、エレナ、そしてその護衛役であるソフィー、アフラ、パトリックが要塞内部で待機していた。


「私達こんな所で待機しているだけでいいのでしょうか? せめて城壁の上に居たほうがいいのでは?」


 エレナは自分達が戦いに参加せずにいることに、心苦しく思ってソフィーに意見する。


「城壁の上も、流れ矢とか飛んできて危険よ? アナタ達は初心者なんだから、今はここでおとなしくしていればいいの」


 そんなエレナに、ソフィーはそう答えた。


「ですが……」


 そして、エレナがそう言いかけた所でソフィーはこう呟く。


「心配しなくても、すぐにここも戦場になるわよ……」


 そう呟いたソフィーは緊張した顔で空を見上げる。


 一方外ではオークの前衛部隊との戦いが続いていた。

 リディアが胸壁の影に隠れて、高級オーラ回復薬で消耗したオーラを回復させている横で、リズも一緒に魔法回復薬で回復させている。


「リズ、大丈夫? アナタこんな長時間戦闘は初めてでしょう?」

「いやー、きついッス。少し休憩したいッス……」

「なら、少し休憩してなさい」


 リディアはリズにそう指示すると、再び弓による射撃を再開させる。


(お姉ちゃんが、こんなに簡単に休憩を許してくれるなんて、この戦いはかなり危険なんッスね……。シオンさん、無理せず無事でいてくださいッス)


 リズが紫音の心配をしていた頃、その紫音もクリスの指示で後方に下って休憩していた。


「高レベルの魔物との戦いが、こんなに精神的にきついなんて……」


 紫音がそう呟くと、近くで休んでいた”月影”の女性メンバーが声を掛けてきた。


「新米冒険者さんなら仕方ないわよ。それよりも休める内に休んでおきなさいよ? すぐに休めなくなるから」


「それって?」


 紫音が質問しようとした時、オークの前衛部隊が後退を始める。

 それを見たユーウェインや、四騎将は口々に同じ指示を出す。


「アーマーボアが来るぞ! 迎撃準備!」

「シオン、戦えるならこっちに戻ってきて!」


 クリスに呼ばれた紫音は前衛に戻ってきた。


「あのー、アーマーボアというのは?」


 紫音がクリスに尋ねると、クリスはオークの方を指差して「アレよ」と簡潔に答える。

 その指差す方を見ると、全身鉄か鋼でできた鎧を纏った巨大猪が五体、堀の仕切りの線上に配置されている。


 あの鎧で覆われた巨大猪が一直線にこちらに突進してくるのは、説明を受けなくても予想できた。


 そして、あの巨体の突進力から来る破壊力も……

 クリスは紫音に以下のようなアーマーボアの撃破プランを説明する。


 まず魔法部隊が足止めのために、射程距離ぎりぎりの堀の前で岩の壁を作り、それで突進を一度食い止める。


 そうするとアーマーボアは少し後退してから、二度目の突進をして今度こそ岩の壁を突き破るので、そこに前職によるオーラウェイブで一斉攻撃してダメージを与える。


 すると、そのダメージでアーマーボアは動きが鈍くなるので、魔法部隊がとどめを刺す。

 という連携である。


 不安そうな紫音にクリスが言葉を続けた。


「大丈夫。これまで、この作戦で撃退してきているから」


 それを聞くと紫音は黙って頷き刀を構えるが、クリスに止められる。


「その刀ではなく、その腰に着けている鋼の剣を使いなさい。でないと、その刀ではオーラに耐えきれずに砕けてしまうかも知れないわ」


 ユーウェインも同じことを言っていたのを紫音は思い出すと、すぐさま刀を納刀すると代わりに鋼の剣を抜きオーラを剣に溜め始める。


 紫音がオーラを剣に溜めた時、それと同時にアーマーボア達が地面を脚で数回引っ掻いた後、突進を開始した。


 鎧を纏った巨大猪が突進してくるその様子に、紫音は何かに似ていると感じてしまい、つい考え始めてしまう。


(なんだろう…戦車……? 車……? トラック……!?)


 紫音はその言葉を連想した瞬間、元の世界で自分を跳ねたトラックを思い出した。


 そしてその時のことがフラッシュバックして、トラウマにより体が硬直し体が震え何も考えられなくなってしまう。


 ロックゴーレム戦でも岩に衝突した時に思い出したが、すぐさま全身に痛みが走ったため痛みに気を取られトラウマの症状が出なかった。


 岩の壁を創るため紫音の横で、ロックウォールの魔法を詠唱していたクリスが紫音の異変に気付く。


 瞳孔が開き、剣を震えながら持っている紫音にクリスが問いかける。


「どうしたの、シオン!? しっかりしなさい!」


 左手で魔法詠唱中のワンドを持ったまま、開いた右手で紫音の体を揺するが、紫音からの反応はない。


 クリスは仕方なく魔法詠唱に専念し、土煙を上げ疾駆してくるアーマーボアの前にロックウォールを発動させ、岩の壁を創り出す。


 そこにアーマーボアが激しく激突し、ロックウォールの半分を砕いた。

 さすがのアーマーボアも激しい激突で脳震盪を起こしたようだが、頭を振り後退し始める。


 その衝突音は要塞内にも聴こえて、何が起きているか解らないエレナ達は驚くが、察しの付いている説明して二人の不安を払おうとするソフィー。


「今の衝撃音はアーマーボアっていう鎧を着た巨大な猪が、迎撃用の岩の壁にぶつかった音だと思うわ」


「そんな魔物がいるのですか? シオンさんは大丈夫でしょうか……」


 エレナの心配の言葉に、ミリアも心配そうな顔をしている。


「大丈夫よ、お姉さまが付いているもの。それに、団長やユーウェイン様、それに四騎将様だっているんだから問題ないわよ」


 紫音はその衝撃音で我に返ると、トラックとアーマーボアへの恐怖心で無意識にピンチと心が判断し女神の秘眼を発動させた。


 女神の秘眼を発動した紫音の心は強化され、精神を守る機能が働きトラックへのトラウマはアーマーボアへの怒りに変換される。


「許さない、アーマーボア!!」


 紫音はトラックに似ているアーマーボアが憎くてしかたがなく、あの鉄で全身が光っているあの四足歩行が許せなかった。

 その様子を見たクリスが紫音に問い掛ける。


「もう大丈夫なの?!」


「はい、何が大丈夫なのか解らないですけど大丈夫です! あの四足歩行を今すぐ倒すという事は分かっていますから!」


 クリスは紫音が冷静さを欠いている事を心配したが、当面の敵は認識できていたので暫く様子を見ることにした。


 何より自分も次の魔法を詠唱しなければいけなかったからだ。




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