43.5話 これってNTR?
「リディア、その子は知り合いなのかい?」
ユーウェインは、リディアがリズを連れて行こうとしたので質問する。
「はい隊長、この子は私の妹でリズ・エドストレームと言います。現在のグシスナルタの所有者です。まだ少し幼いですが、きっと我々の戦力になってくれると思います」
「そうか、君の妹か。四騎将である君がそう言うのなら頼もしいな。リズ君、君の力に期待している。だが、無理はする必要はない、危なくなったら逃げても構わない。これはリズ君だけではなく、他の者達にも当てはまることだ。君達はまだ若く未来があるのだから」
「はい!」
「勿論ッス!」
彼が若い紫音達に、そう言うと紫音とリズはそう返事をする。
「クリスさん、エレナさんとミリアちゃんの事頼みます」
「クリス君にも、前衛で戦って欲しいのだが」
「ですが、カムラード様。私には盾役の居ない彼女達を、守らねばならない理由がありまして……」
クリスがユーウェインに事の顛末を説明する。
「それなら……、パトリック!」
「隊長、お呼びですか?」
ユーウェインが名前を呼ぶと、重装鎧と大型の盾で身を固めた屈強な騎士が近づいてきた。
「彼の名はパトリックと言って、私の部下の中でも優秀な盾職だ。彼女達は彼にガードさせるので安心して貰いたい」
クリスにそう説明したユーウェインは、そのままパトリックに指示を出す。
「パトリック、君は彼女たちを護衛しろ。彼女達は未来の戦力になる存在だ、気を引き締めて守り抜け!」
「はっ!」
パトリックと呼ばれた屈強な騎士は、ユーウェインに敬礼するとミリア達に挨拶する。
「自分の名はパトリックであります、全力でガードさせていただきます!」
「よろしくおねがいします」
エレナが挨拶すると、その後ろからミリアがペコリと頭を下げる。
「アフラ、アナタは念の為、予定通り彼女達と行動しなさい」
「りょうかーい!」
クリスの指示に、アフラが右手を上げ元気に返答する。
「では、準備に取り掛かろうか! シオン君は私についてきてくれ」
「みんな無理せず、命を大事に頑張ろうね!」
仲間にそう言った紫音は、ユーウェインに連れられてこの場を去った。
「リズ、私達も行くわよ」
「わかったッス、お姉ちゃん。ミリアちゃん、エレナさんお互い頑張ろうッス」
リズも姉に連れられて立ち去った。
「みんな無茶はするんじゃないぞ」
「アフラ、ちゃんと彼女達を守るのよ」
そう言い残すとスギハラとクリスも居なくなった。
ミリアがあまり馴染みのない人に囲まれて、不安そうにエレナの後ろにいると聞き馴染みのある人物が、そんな彼女に声を掛けながら近づいてくる。
「今から、そんな風に不安そうにしていてはダメよ!」
それはツンデレ少女ことソフィーであった。
そして、彼女は更に言葉を続ける。
「これから行われる戦いは、凄く危険なんだから今からそんなことでは戦い抜けないわよ!」
ミリアがソフィーにそう言われて、さらに不安そうにしているとソフィーは、自信に満ちた顔でミリアにこう言ってきた。
「でも、安心しなさい! 私がアナタを守ってあげるから。だから、アナタが不安がることは何もないんだからね!」
どうやら、アフラだけでは心配なのでクリスに派遣されてきたようだ。
「ありがとう……、ソフィーお姉さん……」
ミリアが潤んだ瞳でお礼をする。
「べっ、別にいいわよ、お礼なんて。そうだ、お菓子食べる?」
すると、ソフィーは照れながら、鞄からラッピングされたクッキーを取り出した。
(あのジト目にも後であげないとね)
ソフィーはこの前のお詫びにとミリアとリズに、わざわざ手作りでクッキーを用意していた。彼女は意外と女子力が高く、お菓子も作れるし、鎧の下もおしゃれな服を着ている。
「これ手作りですか……?」
ラッピングを見てミリアはそう質問した。
「別に美味しくなければ、無理して食べなくてもいいのよ」
「美味しいです」
笑顔でそう答えたミリアの感想に、ソフィーは嬉しそうだ。
その頃、ユーウェインに連れられた紫音は、同じくリディアに連れられたリズと武器保管庫で鉢合わせていた。
「シオン君。君はオーラ技で武器を壊したことがあるそうだね。この鋼の剣を予備で持っていきたまえ。強力なオーラ技を使う時だけこちらを使って、使い捨てにするといい」
ユーウェインはそう言うと紫音に鋼の剣を渡した。
「リズ。アナタのことだから、優れた矢をあまり持っていないでしょう? ここから持っていきなさい」
「色々な矢があるッスね……、強力な魔法スクロールもあるッス! お姉ちゃん、これも貰ってもいいッスか?」
「ええ、いいわよ」
紫音とリズは必要な物を手に入れると、先程の広場に戻ってくる。
すると、要塞の兵士たちが整列していて、重苦しい雰囲気が漂っていた。
他の冒険者達も整列はしていないが集まっている。
紫音とリズはスギハラ達の近くに慌てて行くと、ユーウェイン達はその整列した兵士の方へ向かう。
紫音が周りを見るとミリアがソフィーと、とても仲が良さそうに話しながらクッキーを食べているのが見えた。
(はぅ?! 知らない間に私の可愛いミリアちゃんが、あんなにソフィーちゃんに懐いている……!?)
ミリアが他の人と仲良くすることは、いい事だとは思う紫音…
だが、少し仲が良すぎる二人を見ていると、少し複雑な気持ちになってしまう。
(これがアキちゃんに聞いたNTRっていうやつなの!?)
「㋞:フフ……、自分からクッキーをおねだりしてくるなんて、本当に食いしん坊さんね。すっかり、私のクッキーの虜のようね……」
「㋯:そっ……それは……」
「㋞:体は正直ね。私のクッキーを、そんなに美味しそうに食べちゃって……」
「㋯:そんなこと……、言わないでください……」
「㋞:すでに私のクッキーなしでは、生きていけないようね……。これからはあの人のことは忘れて、私を憧れのお姉さんとしなさい……。そうしたら、さっきからアナタが欲しがっている私のクッキーをもっとあげるわ」
「㋯:ごめんなさい……シオンさん……。わたし、もうソフィーお姉さんのクッキーなしでは……、生きていけないれひゅぅ~。わたしは今からソフィーお姉さんを、憧れにしましゅ~」
(※作者のNTRの知識不足と技量不足のせいで、このような表現になっています。)
(いやぁぁぁぁ! 私ミリアちゃんの憧れのお姉さんが、私ではなくなってしまう!!)
紫音は一人訳の分からないことを考えて、頭の中で発狂していた。
これからオークとの死闘だと言うのに、意外と余裕があるようだ。
それとも余裕がないから、おかしな事を考えるのか……
女神のみぞ知ることであった。
「紫音の場合、後者だと思います」
フェミニースはそう答えた。
次回につづく……




