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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第1章 少女、冒険者目指して奮闘する。
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02話 2人の女神(2)



「そもそも、どうして魔物がいるのですか?」


 紫音のその根本的な疑問に対し、フェミニースは答える。


「もちろん、私の世界には創造当初は魔物などいませんでした。争いが起きないように、私は国を一つだけ建国させ世界を治めさせましたが、人間というのはとても欲深い生き物のようで、その一つの国の中で争い始めました」


 そこまで言い終えたフェミニースの顔は、悲しい表情に包まれていた。


「そこで、私はどうすれば人間同士が、争わなくなるか考えました……。そして、人類に共通の敵である魔物を創れば、人間同士で争っている場合ではない状況になると閃いたのです」


 そう言ったフェミニースの顔は、先程とは一転して明るい顔になっていた。


「でも、それでは人間の戦う相手が、同じ人間から魔物に変わっただけで、結局世界から争いは無く― 」


 そこで、紫音は発言を止めた。


 何故なら、フェミニースの後ろで先輩のやることは絶対と思っているミトゥースが、紫音に「余計なことは言うな」と眼で圧力を掛けてきたからである。


「何でもないです。すみません、お話を続けてください……」


 そんな女神の威嚇に、紫音が抗える訳もなくそう発言するしかなかった。


 フェミニースは何か言おうとしてやめた紫音に、違和感を覚えたが説明を続ける。


「そうして、私は魔物を創り出すシステムと、その創り出される魔物を統括する魔王を作り出して、<魔王システム>として世界に構築したのです。それからというもの、人間同士の争いは無くなり― 」


「魔王もいるのですか!?」


 紫音は、またもさらっと彼女の口から飛び出したとんでもないワードに、ミトゥースの圧力を忘れてつい発言してしまった。


「魔物がいるのだから、魔王がいたっておかしくはないでしょう? それに、魔王に魔物を統括させるほうが、魔物達に好き勝手させるより色々と対応しやすいじゃない」


 ミトゥースが先輩のサポートをさりげなくする、できる後輩アピールで補足説明をしてきた。


「でも、魔王というからには、すごく強いですよね? 世界が認めるような活躍する女性を目指せということは、その魔王を倒せってことですよね?」


 紫音は、ミトゥースの圧を感じつつ、恐る恐る質問した。


(これを聞いておかないと、自分の今後に関わる!)


 こう考えたからである。


「そうですね、魔王は強いです。人間達からしたら絶望的かもしれません。ですが、ミトゥースが最初に言ったように、あなたが努力を惜しまず自分を成長させ、志を同じくする仲間達と協力すれば倒せるはずです」


 フェミニースは、不安な顔をしている紫音に対しそう諭すと、さらに彼女の不安を払うであろう話を始める。


「何故なら、約200年前の最初の魔王は、人間達に討伐されているからです。ちなみに今の魔王は2代目で、5年前に人間同士でまた争いそうになったので、先手を打って私が創りました」


 勿論そのような成功例を聞かされても、紫音の不安は払われなかった。

 あと、後半の言葉は聞き流しておこう… 何故なら、ミトゥース様がそのような圧を出しているからである。


「200年前の人ができたからと言って、私にできるかどうか― 」


 紫音が不安そうにそこまで言いかけると、再びフェミニースが金色に輝く瞳で近づいてきて、先程より時間を掛け優しく諭した。


「紫音なら、大丈夫~ 大丈夫~」


「お任せくださいフェミニース様、2代目もすぐに初代のようにしてやります!」


 すると、再び紫音の心に自信が湧いてきて、テンションが変に上ってしまった彼女は、自身に満ち溢れた表情でそう宣言した。


 フェミニースの説得(洗脳?)によって、自信を持った紫音は、そもそもフェミニースがどうして、自分を転生させてくれるのか質問する。


「ところで、フェミニース様はどうして私に二度目の人生を、しかも、夢を叶えるようなチャンスを与えてくださるのですか?」


「そうですね…。あなたが良い子だからというのと… あと、私の若い頃に… どことなく似ていると思ったからです」


 その質問に対して、フェミニースはこのように答え、目は遠くを見つめており、何処と無く悲しそうな表情をしている。


 自分の悲しい過去を、思い出してしまったのかもしれない…


 紫音はフェミニースが、自分と似ていると聞かされ驚いた。


 何故なら、フェミニースは女神というだけあり、知的で凛としていて子供の自分と違って、大人の女性であり、自分と似ているところなんてどこもない。


(どこか似ているかな?)


 そう思いながら、フェミニースの体を失礼のないように見ていた紫音の目が、その女神の胸に止まった瞬間、紫音は思わず「あっ……」と声を漏らしてしまった…


 そして、紫音は完璧と思われたフェミニースの控えめな部分を見ながら、このような事を考えてしまった。


(フェミニース様も、過去に爽やかイケメンの男の神様に振られたのかな…)


「紫音、あなたが今考えているであろうことは違いますよ!」


 フェミニースは、その紫音の視線に気づき慌てて胸のあたりを腕で隠しながら反論したが、明らかに動揺していた。


「紫音、何かお姉様の世界の質問は無いかしら?」


 これ以上、この空気はまずいと思ったのか、できる後輩ミトゥースが話題を切り替えた。


「言葉や文字はどんなものですか? やっぱり、お金も必要ですよね? それと食べ物は口に合いますか? 生水は飲んで大丈夫ですか? トイレはどうなっているのですか?! お風呂は!?」


 紫音は、正直色々聞きたいことがあったがとりあえず、海外旅行に行く時のような質問をして、旅行前の気分になってテンションが上ってしまう。


「言葉や文字は、私の力で大丈夫なようにしておきます。お金も暫くは、大丈夫な金額は与えます。そのほかの事は、世界のガイドブックを持ち物に入れておくので、それを読んでおいてください」


 テキパキと質問に答えるフェミニース。


(修学旅行前の教師と生徒か!)


 そして、そのやり取りを見ていたミトゥースは、そのように一瞬思った。

 だが、すぐさま―


(女教師お姉様……アリね!!)


 フェミニースの女教師姿に、思いを馳せるのだった。

 



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