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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第2章 新米冒険者、異世界で奮闘する。

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36話 新PT実戦開始と思ったら






 ソフィーとの戦いの翌日―


「今日は、ついに外で魔物を退治しに行きます! 準備の後に屋敷入口に集合!」


 紫音は朝食を済ませると、少しテンション高めにそう宣言した。

 さっそく昨日使えるようになったオーラステップを、実戦で試したくてしょうがなかったからである。


「あのー、私まだ矢弾代(実家からのお小遣い)が、ないッスけど……」


 リズが遠慮がちに紫音にそう言うと、紫音はこう答えた。


「矢弾代は、私がこの前貰った報酬から出すから。とはいっても、そんなに予算はないからできるだけ安いのでお願いね」


「了解ッス!」


 その紫音の提案に、リズはビシッと敬礼して答える。


「シオンさん、バナナはおやつに入るッスか?!」

「バナナは美味しいので持参可とします!」


 二人の質疑応答が済んでから、一同は各部屋に装備を取りに行った。


 準備を済ませ屋敷の入口に向かうと、エレナとミリアが既に待っており、ミリアを見ると彼女の装備している魔法使い帽子とコートは、明らかに彼女のサイズにしては大きめでコートは袖をめくり腰のあたりで丈を調整しており、帽子も深く被る感じになっている。


 そして、何より気になるのが両手に持ったこれまた彼女には少し大きめの杖で、素人の紫音が見てもかなりの一品に見えた。

(さすが、名門出身ともなるといい装備を持っているな~)


 そう思いつつ、紫音はあのだぼだぼのコートは戦闘に不向きだと思ってミリアに、それとなく別のモノに着替えるように促してみる。


「ミリアちゃん。そのコートは大きすぎて動きづらいと思うから、別のコートのほうがいいんじゃないのかな?」


 その紫音の意見に、ミリアは何か言いたげな表情をしていると、出仕前のミレーヌが通りかかって、紫音にこう説明する。


「シオン君、ミリアちゃんのその装備は亡くなった姉さんの… ミリアちゃんの母親の形見なのだ。だから、ミリアちゃんはそれを着けて戦いたいのだよ」


 ミリアはミレーヌの説明にコクコクと頷く。


 ミレーヌはミリアの気持ちは痛いほど解るが、紫音の言う通り戦闘に向かないその服装に不安を覚え、可愛い姪を傷つけないように優しく着替えてくるように語りかける。


「でも、ミリアちゃん。シオン君の言う通り、そのコートは流石に戦闘では動きづらくて危ないし、何よりみんなに迷惑を掛けることになるかも知れない。だから、着替えたほうがいいかな」


 ミリアは尊敬する二人にそう言われると、それが正しいのだろうと思って頷くと自分の部屋に着替えに行った。


「帽子はそのままでいいからね!」


 紫音はミリアにそう言うと、ミリアは嬉しそうに走っていく。

 あの帽子は試験でも着けていたから、問題ないと思ったからであった。


「あの杖も形見なのですか?」


 紫音はミレーヌに質問する。


「ああ、あれは優秀な姉さんが女神から与えられた【女神武器】の一つ”グリムヴォル“だ」

「【女神武器】って何ですか?」


 紫音はさらにミレーヌに質問する。


「【女神武器】とは女神に選ばれた者だけが与えられる武器で、とても強力な武器で武器自身が使い手を選ぶ。まあ、大抵子孫や血縁関係があるものに引き継がれることが多い。

 私の“ガンバステイン”、ユーウェインの“グラムリディル”、スギハラの“司一文字”などがある。まだあと幾つかあるがそれは自分で調べてくれ」


「ああ、あとリズ君のあれもそうだな。彼女の家に伝わる”グシスナルタ“だな」


 そう言ったミレーヌの目線の先には、一品物の弓を持ったリズがやってきた。


「お待たせしたッス。あれミリアちゃんは?」

「今コートを着替えに行っているの、少し待ってあげて」


 暫くすると、ミリアがサイズの合ったコートに着替えて戻ってくる。


「どうだ、シオン君。アレは私がミリアちゃんに似合うと思って買ってあげたんだ。とても良く似合って可愛いよ、ミリアちゃん!」


 ミレーヌは紫音に嬉しそうに語った。


「ところで、今日は街の外に魔物を退治しに行くのだろう? 気をつけていくのだぞ」


 そして、ミレーヌはそう言うと紫音の耳元で、彼女にだけ聞こえるようにこう言ってくる。


「シオン君、危険な魔物と戦わないようにな。くれぐれもミリアちゃんを危険な目に合わせないようにしてくれ」


「わかっています、今日はこのPTでの初の実戦なので、弱いレベルの魔物だけと思っています」


「そうか、ならいいんだ」


 そう言ってミレーヌは行政府に向かう。


「では、魔物退治に出発!」 


 紫音達は武器屋に立ち寄り、鉄の矢を購入すると街の外にでた。

 外を適当に歩きながら魔物を探すと、リズのイーグルアイがゴブリンを見つける。


「ゴブリン一体を発見ッス!」


 まずは訓練通りに、エレナが強化魔法をPTメンバーにかけた。


「プロテクション!」


 強化魔法を受けて、リズがグシスナルタを構えて遠隔射撃に入る。


 グシスナルタはリズが持つには少し大きく、ちゃんと弓を引けるのか怪しかったが、リズはグシスナルタに矢をつがえすんなりと弓を引き絞り、狙いを定めて矢を放つ。


 放たれた矢は、真っ直ぐゴブリンめがけて飛んでいくと、見事に頭に命中しゴブリンを撃破した。


「やったね、リズちゃん!」

「すごい!」

「やったね、リズちゃん……」


 リズはゴブリンを一撃で倒せた要因でもある、自分の持つ女神武器の説明を始める。


「このグシスナルタは、私のように力がない者でも、ロングボウ並みの射程距離と威力が出せる弓なんッス。以前は姉が使っていたッスが、姉が【女神武器】を頂いたので、自分が貰ったッス。だから、この辺の低レベルの魔物なら、鉄の矢でもヘッドショットで一撃ッス」


 リズは魔物を見つけるたびに、ヘッドショットで次々と倒していく。

 紫音はオーラステップを使いたかったが、リズが一人でサクサク遠距離狙撃によって倒していくため出番が回ってこない。


「ミリアちゃんのそのコート可愛いですね、よく似合っていますね」

「ありがとうございます……。これは、ミレーヌさんに選んで……、貰ったものです……」


 そのため、エレナとミリアは雑談を始めている。


(これで、いいのかな……? いや、良くない! だって、これ私達なんの経験にもなっていないもの! このままでは、私達は楽しいピクニックになってしまう!)


「リズちゃん! ヘッドショット禁止!」

「えー、何でなんッスか?」


 リズは紫音の唐突な気勢を殺ぐ発言に困惑した。


「だって、リズちゃんが一人で倒してしまったら、みんなの経験にならないから」

「そうかもしれないッスけど、倒せるのに倒してはいけないとは変な感じッス」


 彼女は納得していない感じだったが、胴体を狙うほうが楽なのでまあいいかと思う。

 そして、そんな彼女達一行を同じくイーグルアイによって、遠くから観察する者がいる事を一行はまだ気付いていない。



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