表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第2章 新米冒険者、異世界で奮闘する。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/383

28話  謎の影、少しだけ現る





「ミレーヌ様、今の最高位魔法メイルストロームだったのでは……!?」


 エルフィが、目の前で発動した強力な魔法の正体をミレーヌに質問しようとしたが、先程までそこにいた彼女は既にいなくなっていた。


「ミリアちゃん、よく頑張ったね~」


 ミレーヌは感極まってミリアに抱きついた。


「ミレーヌさん…、どうしてここに…?!」


 ミリアは叔母が突然現れて、自分を抱きしめたことに驚いた。


「ミリアちゃんが心配で付いて来ちゃった!」


 ミレーヌはキリって顔で答えた。


 紫音とリズもミリアのところまで歩いて来て、彼女の側にミレーヌが居ることに気付く。

 回復薬を飲みながら、紫音は関係を知られないように声は掛けずに、ミレーヌに一礼だけする。


「やっぱり、あの後ろから付いてきていた怪しいマスクの人は、心配で後を追ってきていたミレーヌ様だったんッスね……」


「リズ君、気付いていたのかい?」


 どうやら、リズはミレーヌが尾行していた事に気付いていたようで、その本人に確認するとあっさりと認めた。


「イーグルアイの範囲内だったッス」


 ミレーヌの質問に、リズはイーグルアイで見えていたと答える。


「シオン君、リズ君、2人もよく頑張った。イレギュラーなロックゴーレムに対してもよく対応したな」


 ミレーヌは三人を改めて褒めた。


「見ていたよ、三人共。よくアクシデントを乗り越えて、見事試験をクリアした。卒業試験は文句なしに合格だ」


 どこから見ていた校長が、そう言いながら三人に合格を告げながら近づいてくる。


「おい! 何しれっと出てきて、それらしいこと言ってんだ! 貴様らの不手際でとんでもないことに、なるところだったんだぞ!」


 ミレーヌがいつものように、アイアンクローを校長に繰り出そうとしたがさすがは老いたとはいえ元Aランク、アイアンクローをギリギリ防いでいる。


「そのことについては、本当に申し訳なかったと思っていますから……!」


 校長はアイアンクローを防ぎながらそう答えた。


「あのー、校長先生。借りていた刀を壊してしまったんですけど……」


 紫音は壊れた武器を校長に見せながら、弁償しないといけないのか訪ねる。


「構わんよ、壊してもいいように装備を貸し出しているのだから。この学校で武器を壊すのは君だけではないよ。何せこの学校は初心者を育てる場所だからね」


 校長は紫音の不安を払ってくれた。


「それでは、諸君。そろそろ学校に戻るとしよう」


 そう言って、校長は学校に向い歩き始める。


「装備を装着しなおしたら後を追うので、先に行ってください」


 紫音は外した装備を拾い装備し直しながら、一同に先に学校に帰るように促す。


「私は紫音さんを待って一緒に行くッス」


 すると、意外とリズが待つと言い出し、ミリアもその言葉にコクッと頷いた。


「そうか、では先に行くよ」


 ミレーヌはエルフィを連れて先に行こうとして、何者かの視線に気づきその方角を向く。


(遠いな…。だが、確かに誰かに見られている……)

「ミレーヌ様どうかいたしましたか?」


 急に立ち止まって、遠くを見ているミレーヌにエルフィが不思議がって質問する。


「いや、何でもない……」


 ミレーヌは、この距離なら問題ないとしてその場を後にした。


「さすがは冒険者ランクSS……、この距離でも気付くなんて……。さて、連絡しないと……」


 その遠距離から望遠鏡を覗いていた者は、そう呟くと女神の栞を取り出し誰かに連絡する。


「彼女達は、私が造った特別製ロックゴーレムを倒しました。途中ピンチになっていましたが、最後はオーバーキルって感じで倒しました。さすがはあの女神様のお気に入りってところですね。それに、PTメンバーも只者ではないですね……」


「はい、では私も引き上げます」


 そして、何者かへの通信を終えると何処かへ立ち去った。


「二人共お待たせ、学校へ戻ろう」


 紫音は装備をつけ直すと、二人と今日ここまで来た道を戻るため歩き始める。

 歩きながら紫音は、二人にこのような話をはじめる。


「私は、今日までこの女神様から貰った身体強化を、借り物の力だって思っていたの。こんな力要らないって思っていた…。でも、この力のおかげで、ミリアちゃんを助けることができたし、その後に助かって二人と一緒にロックゴーレムと戦って倒すことができた。だから、今はこの力があってよかったって思えるようになったよ」


 何故こんな話を年下の二人にしたくなったのか、当の紫音にも解らなかった。

 もしかしたら、共に命をかけて戦ったからかもしれない。


「この世界では、みんな大なり小なり女神の加護で身体強化されてるッス。だから有り難く使えばいいと思うッス。ミリアちゃんはどう思うッスか?」


 リズが自分の考えを述べながら、後ろを歩いているミリアを見ると少し遅れていることに気付く。


「シオンさん。ミリアちゃんは引き篭もっていたから、体力ないッス。少し歩くペースを落としてくださいッス」


 リズの一言にミリアは本当の事とはいえ、少しショックを受ける。

 ミリアは疲れ切ってフラフラと歩いていたので、紫音はその場でしゃがむとミリアをおんぶすることにした。


「シオンさんも疲れているのに、おんぶなんてしてもらうわけには……」


 ミリアがそのように遠慮すると紫音はこう答える。


「大丈夫、お姉さんは体力に自信があるから。それに年下は年上の厚意に、素直に甘えるのが礼儀だよ」


「では、お願いします……」


 そう言われたミリアは、遠慮がちにその言葉に甘えることにして、リズに杖を持って貰うと紫音におんぶしてもらう。


「ミリアちゃん、引き篭もってお勉強ばかりでなく外に出て、体力もつけなくては駄目だよ?」


 紫音はおんぶして歩きながら、ミリアにそう忠告する。


「がんばります……」


 ミリアはそう答えたが、こうやって紫音におんぶしてもらえるなら、このままでもいいかも知れないと思った。


 紫音達の先を歩くミレーヌは校長に話しかける。

 ミレーヌが紫音達と一緒に歩かなかったのは、校長との会話を三人に聞かせたくなかったからであった。


「校長、確かに試験に使う魔物はフェミニース教会から提供されているのだったな?」


「はい、教会の神秘の力で捕獲していると聞いています。今まであのようなアクシデントは起きなかったのですが……。」


「最初からあのゴーレムが送られてきたという可能性は?」


「いえ、それはないです。我々があの場に配置した時は、少なくとも試験用のいつもの低レベルのロックゴーレムでした。ちゃんと遠くから魔法を使って、岩石飛ばしを使わないか試しました」


 ミレーヌが話しながら観察した所、校長が嘘を言っているようには見えない……


「そうか……」


(ロックゴーレムが急激にレベルアップしたのか、それとも誰かがすり替えたのか……、そうなると、あの遠くから見ていた奴か、何のために?)


 彼女はそう答えながら、色々と考察を続ける。


(目的はミリアちゃんか!? ミリアちゃんが可愛いからか!? 可愛いミリアちゃんに嫉妬して、虐めようとしたのか!! ゆるさん… ゆるさんぞっ! じわじわとなぶりご― )


 だが、次第に考察は暴走し始めた……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ