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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第1章 少女、冒険者目指して奮闘する。

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24.5話  激闘!スライム戦






「自分達がピンチを演出して、ミリアちゃんの戦う勇気を奮い立たせるという作戦に、お姉さんも解って乗っかってくれたんじゃないんスか?」


 リズの説明に紫音は年上のお姉さんとして、”もちろん!”と格好良く答えたかったが、信頼を勝ち取るために嘘はいけないので、正直にダメなお姉さんの答えを返すことにした。


「私は本当にミリアちゃんの魔法以外、効果的な攻撃がないと思ってそれで必死に……」


 紫音の返事を聞いたリズは、ジト目でこう答える。


「私はてっきりお姉さんが対抗策も無いのに、一度退却して体勢を立て直そうって言い出さないから、一緒にピンチを演出してくれているのだと思ってたんスけど……」


(確かに一度撤退すればよかった! 急にスライムに襲われたから、驚いて冷静な判断ができなかったよ! 私のバカ~!)


 紫音はそのリズの言葉を聞いて、自分の戦闘経験不足を再び痛感した。

 そして、この程度の判断もできないのに年上のお姉さんとして、頼れる姿を見せたいと思っていた自分が急に恥ずかしくなってしまう。


 年下のリズに騙された形となった紫音は、自分の未熟さに赤面しその顔を両手で隠して落ち込んでしまう。


「シオンお姉さん、私はお姉さんのこと格好良くて、素敵だと思います……」

「ありがとう、ミリアちゃん!」


 そんな紫音が落ち込んでいるのに気付いたのか、ミリアは彼女に近づいてきてこう言ってくれた。


(ミリアちゃんは、なんて可愛いこと言ってくれるのだろう!)


 紫音はミリアの励ましで元気になったので、リズに自分に黙っていたことを抗議することにする。


「リズちゃん。それならそうとお姉さんだけにでも、言ってくれれば良かったのに… おかげでお姉さんは、危うくR18になるところだったよ?!」


(そうしてくれれば、もう少し心に余裕ができたんだけど……)


 リズを年上の余裕をすっかり忘れて、紫音は彼女にそのように追求すると、リズが紫音に対してこう反論してきた。


「だって、お姉さん。嘘が下手じゃないッスか……」

「はぅ!?」


 紫音はリズの言い分が的確すぎて、反論できず年下に涙目にされてしまう。


(私…、リズちゃんのこと少し苦手かも……)


 紫音はリズに苦手意識を抱く。


 そして、そう思ってリズの眠そうに目を開いたジト目を見ていると、その眼が某スナイパーのような鋭い眼光に見えるような気がしてきたが、よく見るとやっぱり覇気のない寝ぼけ眼であった。


「これで、ミリアちゃんも宿敵のスライムを倒せて自信が付いたんじゃないッスか? ミリアちゃんは、そもそも才能はあるッス。それに魔法の勉強を一杯してきたんだから、あとは自分に自信を持てば立派な魔道士に直ぐになれるッス!」


 確かに少し荒療治ではあったが、ミリアは勇気を出すことができたのは間違いない。


「ありがとう、リズちゃん」


 そのためリズのこの言葉に、ミリアは素直にお礼を言うと二人は笑顔で笑い合う。


「じゃあ、時間もないから先進もうか?」


 紫音は取り敢えず時間も迫っているので、二人に先に進むことを促すことにした。

 先程と同じ順番でリズが先頭を歩いていると彼女が足元にある何かに気付く。


「足元にワイヤートラップがあるッス!」


 リズが指差す先に細いワイヤーが張られている。


「リズちゃん解除できる?」


 弓使いは目が良いので、斥候を兼任する事が多く罠の発見やその解除を担う事があるので、紫音はリズに尋ねてみた。


 だが、この問にリズは首を横に振ると、キリッとした顔でこう言い放つ。


「私には無理ッス。自分は弓兵なので、トラップの解除には興味が無かったから、授業はサボっていたッス!」


 そう言い切ったリズの態度には、”やましさ”や”後ろめたさ”は無く、むしろ清々しささえ感じる。開き直っているだけだが……


(サボっていたことをキリッて顔で言われても…。まあ、私も真面目に受けていたけど、解除は苦手だから、強くは言えないけど……)


 紫音がそう思っていると、リズはトラップをこのように分析する。


「まあ、どうせ学校側もそんな危険なトラップは仕込んでいないはずッス。この感じだと足さえ引っかからなければ大丈夫なはずッス」


 そう言ったリズは、ピョンと軽快なジャンプでワイヤーを飛び越えてみせた。


「やっぱり、大丈夫みたいッス。お姉さんはミリアちゃんを背負って、飛び越えてくださいッス」


「どうして?」

「ミリアちゃんだとこういう場合、必ずワイヤーに足を引っかけるッス」


「がーん!」


 ミリアは親友の無慈悲だが的確な一言に、ショックを受けて涙目になっている。

 だが、リズの言っていることは的を射ており、ミリアは運動音痴なので恐らく足を引っ掛けて、転倒してしまい泣いてしまうだろう。


 そんな悲しい姿は見たくない紫音は、その誰も得をしない悲劇的な未来を避けるために、思案して彼女なりに素晴らしい作戦を思いつく。


「たしかにミリアちゃんのスカートは丈が長いから、ワイヤーに足を引っかけてしまうかもしれないから、お姉さんがおんぶするね」


 恥ずかしがり屋のミリアは、丈の長いスカートを着用していたが、流石に運動神経の悪い彼女でもそれで足の動きが阻害され、ワイヤーに足を掛けることは無いだろう。


 だが、”運動神経が悪い”と言われるより”スカート丈の長さが悪い”と言われた方が、冒険者としての矜持は保たれるだろう。(※あくまで紫音の考えです)


 紫音はミリアの前でしゃがむと、できるだけ彼女を傷つけないような言い回しで、おんぶされる事を促す。


「では、シオンお姉さん、お願いします」


 ミリアは小柄なのでとても軽く、紫音はちゃんとご飯を食べているのかなと心配になってしまった。


 一方、ミリアは憧れの紫音におんぶされて嬉しそうだった。

 試験終了時間まで、残り1時間半……


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