337話 格闘家対決 その2
前回のあらすじ
”冒険者イズナなんとか”を繰り出して、勝利したと思われた三面ガール。
だが、スレイプニルの“トライアングルなんとかー”を受けて、引き分けになってしまう。
マオチーム残り3人、スーパーぬいぐるみチーム残り4人、マオチームが不利の状況になってしまうのであった。
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「私達のチームが3対4で不利だから、ここは3対3の6人タッグマッチで決着をつけるというのはどうかな!?」
手に持ったカンペをガン見しながら、アフラはそう提案する。
「いや、そんな無茶な提案を、あの魔王が飲むはずがないわよ!? だって、明らかに無茶苦茶な提案だもの! 向こうには何のメリットもないもの!」
魔王が返答する前に、ソフィーの高速のツッコミが炸裂した。―が
「よかろうまお!」
胴体の辺りに”まおう”と書かれたフードマントを頭から被った魔王(?)が、本編とは違うキャラなのか語尾に”まお”とつけながら、アフラの提案を受け入れる。
「受け入れた!? こんなアホな提案を受け入れるの!?」
あまりの出来事に、思わず叫んでしまうソフィー。
「ただし、そちらの提案を飲んだのだから、戦いのルールはこちらで決めさせてもらうまお」
だが、そこは魔王(?)。ルールを決めさせるまおと提案してきた。
「相手は本編で、いろいろな作戦を考えてきた魔王よ。きっと、とんでもないルールを言ってくるに違いないわ……」
魔王(?)が提案してくるルールに対して、警戒を強めるソフィー。
すると、突然リングが浮上して、空中で停止する。
「戦う場所は、この浮遊六面型リングだまお。そして、ルールは両リーダーのどちらかを倒すというものだまお」
だが、提案してきたルールは、変なリングと特に卑怯ではないルールだった。
「意外と私たちにとって、不利ではないルールで驚いたけど、何より驚いたのはこのリングの方よ! どうやって、浮いているの!? 魔法なの!?」
「その試合方法をうけよう!」
マオが魔王(?)の提案を受けると、両チームはソフィーのツッコミを無視して、それぞれのコーナーポストに移動する。
「答えないわよね!? だって、私のツッコミは台本に書いてないものね!」
ソフィーのツッコミを完全に無視して、魔王(?)が提示したリングの上で、対峙する両チーム。
ゴングが鳴り響き、戦いがいよいよ始まる。
すると、ガシャーンとなり、なんやかんやあって、こう… なんか凄いことになって、デコレーションツリーみたいな状態になった。
「えっ!? なにこれ!? なにこれ!?」
あまりにも訳のわからない状況に、ソフィーが読者の感想を代弁しているとマオと魔王(?)を残して、アフラとヨルムンガンド(へび)、ソフィーとエイク(へらじか)と別れて、それぞれ六面リングで一対一の戦いになってしまう。
次回 さらば、燃え尽きたアフラ
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(このままだと、やられちゃう… )
アフラは、エマの連続蹴りを両腕で捌きながら、このピンチを打開する方法を考えていた。
彼女の戦闘センスは悪くない。むしろ、一流の格闘家として通用するレベルだ。
だが、相手のエマも格闘家としては一流である。
(なんとか隙をついて、距離が取れれば何とかなるんだけど……)
だが、アフラの思考とは裏腹に、エマはアフラとの距離を一定に保つように立ち回り、隙を見つけられない。アフラは意を決し、エマとの間合いを大きく開けるために後ろに全力で走ろうとする。まさにその瞬間だった。
「ラピット… アロー!」
ノエミは4本の矢を右手の各指の間に挟んで持ってオーラを溜めると、弓の右側から番えて連続でエマめがけて素早く放つ。彼女は猟兵としての視野の広さから、クリスから遊撃の指示を受けていたのだ。
そして、アフラの苦戦を見逃さなかったノエミは、仲間を助けるために動いた。
「!?」
エマは突然の攻撃に驚きながらも、飛んでくる矢を全て回避する。
ノエミは更に2本続けて矢を放つが、これも回避されてしまう。
だが、その間にアフラは「にゃにゃにゃ~!」と、戦場を右側に向かって爆走してエマとの間に大きな距離を空ける事に成功する。
「逃さない!」
エマはアフラの後を追うと、戦場の右端付近で追いつき背後から攻撃を仕掛けようとした。
その時――!
「はいおーらぱーーんち!!」
アフラはオーラを溜めた拳を地面に叩き込む。
すると、アフラを中心に土煙が発生し煙幕となり、彼女とエマの姿を覆い隠す。
戦場の端にまで来たのは、周囲で戦う者達の視界を土煙で阻害しないためであった。
「くっ!?」
エマは咄嵯にバックステップして、視界の利かない土煙の中から脱出しようとする。
「そこだ! おーらぱーーんち!!」
だが、その前に側面からアフラの攻撃を受けてしまう。不意を受けたエマであったが、咄嗟に腕でガードしてダメージを抑える。しかし、その衝撃で体勢が崩れてしまい、側方に飛ばされてしまうが、土煙の中からは脱出することに成功した。
エマが不意を突かれてしまったのは、土煙が起きる前にアフラが正面にいたからである。そのため視界が利かない中で攻撃してくるなら、当然正面からだと思い込んでいたからだ。
しかし、アフラはその気配察知能力で、エマの位置を把握して土煙の中でも攻撃を当てることができたのであった。
(不味いわね…。向こうは、どうやら視界が利かなくても、こちらの位置が分かるみたいね……。同じ攻撃方法を取られると厄介ね……)
エマは遠くで四天王と戦う紫音をチラリと見てから、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
(シオン・アマカワと戦うまでは、できるだけ稼働時間を温存しておきたかったけど… 仕方がないわね…!)
そして、アフラが追撃してくる前に、ある決断をくだしたエマは、龍の頭が描かれた右の篭手に付いている宝玉に魔力を込めた。すると、右篭手の宝玉が輝き始める。
そのエマの姿を見て、全身の毛が逆立つような感覚を覚えたアフラは、“土煙で見えないところをバシーンといくよ! 作戦”を再び実行するために、拳を振りかぶった。
「はっ はいぱーおーら― 」
「悪いけど、アナタにはもう何もさせないわ」
「!!?」
だが、アフラが拳を地面に叩きつける前に、エマの蹴りがアフラの腹部に直撃する。そして、そのままアフラの身体は宙に浮きあがり、後方に吹き飛ぶ。
「うにゃあぁぁあ!?」
アフラは叫び声をあげながら、地面に激突するが即座に立ち上がる。
しかし、その視線の先には既にエマの姿はなかった。
「え? どこに行― 」
次の瞬間、アフラの背中に激痛が走る。
「にゃあ!?」
アフラは慌てて振り向くと、そこには蹴りを放った後の姿勢でいるエマがいた。
(はっ 速い…… ソフィーちゃんより、速い……)
「うぅ~!でも、負けるもんか~!」
彼女は気合を入れて構えるが、高速で移動するエマの動きに対応できない。
そこからは、サンドバック状態であった。エマの高速移動からの攻撃を一方的に受け続ける。
ノエミも援護射撃をしたいが、エマの動きが速すぎて狙いを定められない。
アフラも何とか反撃しようと試みるも、その全てが空を切る。
エマは女の子であるアフラの顔や頭を意図的に狙わないために、アフラは意識を失うことが出来ず、結果として身体の苦痛が長引いてしまう。
「うにゃ…… うぅっ…… まけ…… ない…… よ……」
だが、エマの連続攻撃を受けて、アフラは膝をつく。
「これで終わりにするわ……」
そんなアフラに、エマはトドメの一撃を加えようとする。
「うぅ…… 私は…… まだ…… やれる……」
だが、その意思とは裏腹にアフラの視界は、エマからゆっくりと地面に変わっていく。
遂に身体に限界がきて、その場に倒れ込んでしまったのだ。
(このまま倒れるのは… やだな…… みんなを守れなくなっちゃう……)
アフラは心の中でそう思っていると、視界が暗くなっていく。
「アフラーーーー!!!!」
戦場にソフィーの悲鳴にも似た絶叫が響き渡る。




