306話 腐女子少女、考える
<シェフ ソフィー 畑から開墾して、料理する春野菜スペシャル その6>
㋛「土地を開墾する所から始まったこの企画。前回野菜も実り、寒空で料理を作ることになったソフィーちゃん。果たして、今回こそ料理が作れるのでしょうか?」
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<1月23日 午前10時 農園>
㋐「えーと、フライパンに鍋に… アレ? リズちゃん、食器は?」
慌てて馬車の荷台を探す衣装担当リズマツ(以下㋷)であったが、どうやら見つからなかったらしい。
㋐「もしかして、食器を忘れたの?! 皿がないと料理できないよ!?」
㋛「お皿がないと完成した料理を盛りつけできないね…」
㋷「お姉さん達、ごめんなさい。リズね… 昨日、夜遅くまでカードデッキの構成を考えていて、夜更ししちゃったから朝起きられなかったの… それで、お皿忘れちゃったの…」
リズは上目遣いと潤んだ瞳で、庇護欲を大いに掻き立てながら<あざとリズ>で謝罪してくるが―
㋞「可愛さで誤魔化しているけど、忘れた理由に同情の余地がひとつもないじゃない!!」
ソフィーには、あざとリズは通用せずにしっかりと突っ込まれてしまう。
㋛「リズちゃん、いいんだよ! 過ちは誰にでもあるんだから!! それに、お皿なんて【作れば】良いんだから!!」
だが、紫音にはクリティカルヒットなので、彼女は可愛いあざとリズを抱きしめながら、その失敗を許すと同時にとんでもない発言をして、しっかり者のソフィーは当然聞き逃さなかった。
㋞「はあっ!? 今、何をシレッととんでもないこと言ったのよ!? このダメ先輩!!」
㋐「それは良い意見だよ、紫音ちゃん! 確かに無ければ【作れば】いいだよ!!!」
アキはソフィーの発言と存在を無視して、台本通りに話を進める。
㋐「畑も1から作ったのだから、皿も1から作ればいいだけの話だよね!!!」
だが、そこは気の強いソフィーなので、大人しく引き下がるわけもなく、アキとの舌戦を開始する。
㋞「”皿も1から作れば―”じゃないのよ!! 皿なんかなくても、フライパンや鍋から直接食べなさいよ! そもそも、こんな機材も禄に揃ってない所で料理するんだから、皿がなくても問題ないでしょうが!!」
㋐「だからこそ、盛り付けだけには拘るべきでしょうが! それに、”シェフ”ソフィーちゃんも料理人として、盛り付けにこだわりあるでしょう?」
㋞「別に拘りなんて無いわよ!! 直食いが嫌なら、そのへんで適当に食器を買ってきてあげるわよ!!」
㋐「こんな畑ばかりの所に、近くに食器屋なんてないよ?」
㋞「それを言うなら、皿を作るところもないじゃない!!」
次回に続く
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「アキさん、どうしたのよ? 急に真面目な顔で、考え込んで…」
ソフィーは、いつもと違う真面目なアキの表情に、そう尋ねると彼女は考えるのを中断して、こう答える。
「わかったかも知れない… リザードの王、撃破の方法… 」
「えっ!?」
そのアキの思いがけない言葉に、一同は思わず驚きの声をあげた。
「本当に!?」
ソフィーが食い気味でそう質問すると、アキは自分の仮説の話をする前に、そのソフィーとアフラにこのようなお願いする。
「ユーウェインさん達にも、作戦の提案をしたいから連れてきて欲しいの。ユーウェインさんが無理なら、リディアさんかエドガーさんを連れてきて。クリスさんは絶対に連れてきて!」
「わかったわ!」
「おっけー!」
ソフィーとアフラは前線に向けて、急いで彼らの元に向かう。
彼らを呼びつけたのは、前線で説明している所を、デイノスクスに襲われたら元も子もないからである。
「さて、私はその間に作戦を詰めるから、邪魔しないでね」
そう言うと、アキは自分の顔の前に”フレミングの左手の法則の形にした左手“を当て、作戦を考え始めた。
だが、傍から見たら赤いノースリーブとサングラスを掛けた格好をした人物が、フレミングの左手を顔に当てて真剣な表情で考え込んでいる姿は、情報が多すぎて渋滞を起こし掛けている。
彼女の脳裏には、次々と過去のゲームの記憶が蘇る!
「まずは、尻尾から斬りましょう!」
「こんなもの運ゲーじゃない!」
「やっぱ、エルフ♂だわ~」
「えっ? 何故パーティが男キャラだけなのかって? もちろん私の趣味に決まっているじゃないか、紫音ちゃん」
「えっ? どうして、美少年二人が、裸で一緒のお風呂に入っているのかって? 別に不思議なことじゃないでしょう? 私達だって、小さい頃は一緒に入っていたじゃない」
「えっ? どうして、カッコイイ男性二人が、裸で一緒のお布団に入っているのかって? 別に不思議なことじゃないでしょう? 私達だって、一緒に入って寝たじゃない」
「私達は裸で一緒に寝たことは一度も無いよ!!」
「さあ、言ってみ。その可愛いお口で、ライアスの”グレートランス”で、何を連想したのか言ってみ?」
「アキちゃんのバカ~!」
「さあ、エフエフでもするか~。おまっ お前コレ! エフエフはエフエフでも、”エ”イジと”フ”レドリックが、”エ”キサイティングに”フ”ァイトする(もちろん性的)、略して”エフエフ”じゃないか!!」
「アキちゃんの馬鹿~!」
(ダメだ! 後半、紫音ちゃんへのセクハラ行為しか思い出していない!!)
しかし、思い返すと紫音にかなりのセクハラをしていることに、自分でも少し引きながら、それでも親友関係でいられるのは、紫音の闊達な性格のおかげであろう。
お詫びに感謝の言葉を言えればいいのだが、恥ずかしいので後で何か奢ろうと考えつつ、今度はちゃんとした事を思い出すために集中する。
アキの脳裏には今まで培ってきたゲームの経験、主にRPGのボス攻略の経験が駆け巡っていた。
そして、それを参考にデイノスクス討伐の作戦を練り上げる。
「撃破までの道が見えた!」
アキは目をカッと見開く演出を行い閃いた感を出したが、サングラスを掛けているので誰も気づかなかった。
そもそも、アリシアは紫音の戦闘を応援するのに夢中でアキを見ておらず、ミリアもそうかなと彼女の方を見ると、ミリアはアキのことを不安そうな表情で見ていてくれた。
(かっ 可愛い… 紫音ちゃんが事あるごとに理由を付けて、抱き締めたくなるのが解る!!)
ミリアが紫音ではなくアキを見ていたのは、デイノスクスが怖いからという単純な理由であり、そのため考え込んでいるアキを見ていたのであった。
「ミリアちゃんはいい子だね~」
「???」
ミリアは何故アキに褒められたのかわからないので、少し不思議そうにしており、その姿もまた可愛い。
アキはユーウェイン達が来るまで、ミリアの帽子を左手で彼女の頭から持ち上げると、右手で彼女の頭を撫でて癒やしを得ることにした。




