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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第8章 少女新たなる力で無双する(予定)

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302話 親の意地(前編)





「ヤツの言った事は、強がりでもないと思うぜ。ヤツを斬りつけた時、手応えを感じなかった。悔しいが俺のオーラスキルでは、ヤツの鱗にあまりダメージを通せなかった…」


 スギハラは追いかけてきたユーウェインに近づくと、彼にだけ聞こえるように悔しそうな声で、デイノスクスが決して虚勢を張っていないことを話す。


「エドガーの報告から、魔法もあまり効いていないらしい。恐らく効いているのは、シオン君とリズ君の攻撃だけだろうな…」


 ユーウェインの言う通り、リズのGRファミリアの魔法の矢攻撃は、命中すればそれなりのダメージを与えている。


 GRファミリアの魔法の矢は、無属性であるために属性耐性の鎧の影響を受けずに、ダメージを与えることが出来るからであった。


 そして、リズはその鋭敏な頭脳をフル回転させると、着弾予測眼を徐々に修正させて命中率を上げてきている。


 人間達がデイノスクスに苦戦しているその頃、エレナの故郷パロム村ではエレナの父親の薬品工房では、父親達が昼夜交代で薬品の製造をおこなっていた。


 そのおかげで、前回オーガとの要塞防衛戦で消費した分の薬品を生産することができる。


 商工ギルド長の命令で、妨害を続けてきていた支部長のハーヴェイは、腕の立つルーカス・アシュフィールドの護衛によって工房に手を出せずにいた。


 そのため領主の屋敷で、バトラーとハーヴェイはとある悪巧みをおこなうとしていた。


「バトラー様、頼まれていた例のモノです」


 ハーヴェイは、紫色の布からとある薬品を取り出す。

 それは、この国では禁制とされている禁止されている違法な薬品であった。


「これがあれば、あの薬屋にご禁制品密造の罪を被せることが出来る」


 禁制品の薬品を手に取ると、バトラーはニヤリと悪い笑みを浮かべる。


「よし、あのルーカス・アシュフィールドとかいう若造が、薬草摘みの護衛で工房を離れた時を見計らって、工房に捜索に入る。そして、これを証拠にウェンライトを拘束して、工房も封鎖すれば全ては上手くいく」


「何卒、お願いいたします」


 悪がそのような企てをおこなっているとは知らず、工房ではエレナの父ゴードンが作業の合間に休憩を取っていた。


 そこに、そんなゴードンを労うためにルーカスが、飲み物を持って話しかけてくる。


「親方、ご苦労さま」

「ああ、ルーさん。ありがとう」


 ルーカスから、飲み物を受け取ったゴードンは、首から掛けたタオルで汗を拭くと、その飲み物を口にした。


 因みにルーカスは工房の一同から、親しみを込めて”ルーさん”と呼ばれている。


「ルーさんのお陰で、薬品作りも順調に進んでいるよ。ありがとう」


 一時期は頓挫しかかった薬品作りが、ルーカスの護衛で順調に製造できるようになったゴードンは彼に感謝して頭を下げた。


「親方、頭をあげてください」


 ルーカスは慌てて、ゴードンに下げた頭を上げるように言うと


「私はたいした事はしていませんよ。全ては親方や工房のみんなが、頑張った成果ですよ」


 薬品作りが上手くいっているのは、自分ではなく工房のみんなの功績だと話す。


「特に親方が圧力や妨害に負けずに、信念を貫いたおかげですよ」


「信念だなんて… そんな立派なものではないよ。私の娘はね、冒険者をやっていてね。要塞防衛戦や本拠点攻略作戦にも、PTの皆さんと参加しているんだ。その娘達が必要としている薬品を、圧力や妨害に屈して作るのを諦めてしまえば、娘や仲間の皆さん、それに多くの冒険者が傷ついても回復できずに、厳しい戦いを強いられてしまう…」


 ゴードンはそこまで言うと飲み物を一口呑んだ後に、照れた感じで話を続ける。


「そうなってしまった場合、仲間の皆さんに… 何より娘に父親として、胸を張って会うことができなくなってしまう… だから、私は父親として、娘に恥じないようにしようとしただけで、信念ではなく”親としての意地”を貫こうとしただけだよ」


「親方のその”親としての意地”が薬品作りを続けさせ、その薬品のおかげで娘さんと多くの冒険者が助かる。やはり、親方は立派な人ですよ」


「ルーさん… よしてくれ、照れるじゃないか」


「ハハハッ」と、二人は笑い合うとゴードンはこのような事を話し出す。


「こんな話をしてしまうなんて、ルーさんは不思議な人だな」


 ゴードンは、僅か数日前に会ったばかりのこの青年をどうして、このような自分の気持ちを正直に話すほど信用してしまっているのかと不思議に思ってしまうが、そのことに気付いても何故か嫌な気分ではない。


「こんな事は、シオン君以来だ…」


 娘が紫音を連れて来て会った時も、娘のPTメンバーとはいえ、ゴードンは何故か彼女に絶対的な信頼をおいて、娘を託してしもいいと考えてしまっていた。


「そうだ、ルーさん。これは、誰にも言わないでくれよ? 先程名前を出したシオン君というのは、実はあの英雄アマネ様の直系ではないが子孫らしいんだ。そのせいか若い娘さんなのに、凄く強くて大活躍していると娘が手紙で嬉しそうに書いて送ってくるんだ」


 またしてもゴードンは不思議に思いながら、娘から口止めされている話をこの青年にしてしまう。


「誰にも言いませんよ。それに、実はその事は私も知人から聞いていて、知っているんです」


 実はルーカスも<少しキザな魔法剣士><姪想いの天才魔法使い>から、紫音の好意的な内容の報告を受けていた。


 ただ<困った妹>からは、出会った事以外報告を受けていない。


「親方~! 薬草の在庫がもうありません」


 そこに従業員がやってきて、薬草の在庫切れを報告してくる。


「わかった! ルーさん、すまないがまた護衛を頼めるかい?」

「もちろんです」


 ルーカスは席から立ち上がると、薬草採りの護衛のために数人の従業員と共に山に出掛けていった。


 そして、その様子を少し離れていた所から窺っていたハーヴェイの部下は、ルーカスが山に向かった事を直ぐに主人への報告に向かう。




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