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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第8章 少女新たなる力で無双する(予定)

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291話 リザード本拠点に散る!




 前回のあらすじ


 主人公らしく”ヤレヤレ”して、活躍し続けると思われた紫音であったが、ダメなお姉さんに戻ってしまい”やれやれ……”と言われてしまうのであった。



 ######




 リズをウォーターブレスから守ったこのマジックバリアは、前回リーベとの戦いでリズではアイギスシャルウルの防御面に不安があると考えた女神達が、


「だったら、GRファミリアから、強力なマジックバリアを出して、守ればいいじゃない!」


 という、幼い子供を思いやる心(甘やかし)から、GRファミリアに取り付けられた防御機能である。


 ケットさんも同じ機能を持っているが、展開範囲はGRファミリアのほうが広い。


 ただし、マジックバリアなのでMPが無ければ使えないが、Nミトゥルヴァには周囲の魔力を吸収する宝玉が内蔵されているので、最悪リズだけを守るマジックバリアは展開可能である。


「ホーーー」


 ミーはリズの頭の上に浮遊しながら、前回と違い彼女を守りきれた事に羽を広げて喜んでいる。


「コラー、ミー! こんな機能を隠していたッスか! 先に教えておいて欲しかったッス! おかげで、一瞬走馬灯が見えそうになったッス! これが、ミリアちゃんなら泣いているところッス!」


 だが、ジト目の御主人様はマジックバリアを隠していた事にご立腹であった。


 危機は乗り切ったリズではあったが、MPをかなり消耗しているため、彼女は愉快なお姉さん達が待っている後方に戻って回復することにする。


 リズはウォーターブレスを防いだが、他の冒険者はそうはいかず、ダメージを受ける前に後退を開始して戦線は後退を始める。


 ヒュドラはウォーターブレスを吐きながら、後退する人間達を追いかけるためその巨体を揺らしながら前進する。


 が、その時―


 アキのゴーレムが水辺から頭を出して、丸い目を光らせると勢いよく水の中から飛び出す。


 そして、内蔵させた水属性”ウォーターストーム“のスクロールを発動させたバックパックから、ウォータージェットのような強力な水流を出してヒュドラまで素早く移動する。


 当然ヒュドラは反応して、ウォーターブレスで迎撃するが、アキのゴーレムは全身流線型をしているため、ウォーターブレスを受けても水は丸みを帯びたその体の左右に流れて、あまりダメージを受けていない。


 そのため、アキのゴーレムはウォーターブレスを物ともせずに、ヒュドラの右斜めまで接近するが、ヒュドラは右端の首を横薙ぎにして攻撃を加えてくる。


 だが、アキのゴーレムはその横薙ぎ攻撃を地面に片膝を付いて、身を屈めて回避すると右腕の先に付いた鋭い鉄の爪を、そのヒュドラの右端の首元に突き刺して1つ目の首を切断した。


「アレは間違いない! アキちゃんのゴーレムが来たんだ!」


 そのゴーレムの活躍を見た紫音が、そう呟くとアキのゴーレムがゆっくりと立ち上がり、それに合わせて、アキは余裕の笑みを浮かべる。


「カッコいいッス!!」


 リズはアキのゴーレムを見て目を輝かせながら、後方へと向かう。


 それでは、遅ればせながらアキのゴーレムを紹介しよう。


 今回のゴーレムは全身鉄で作られており、全体的に丸みを帯びているのは、今までのアキのゴーレムの特徴ではあるが、今回は流線型を意識しているため、特にあちこち丸みを帯びている。


 そのおかげで水の抵抗を受けづらくなっており、ヒュドラのウォーターブレスによるダメージを軽減することができる。


 両腕の先には、それぞれ鋭い爪が4つ付いており、その破壊力はヒュドラの首を切断するほどである。


「名付けて、IGM-07型(Iron Golem Marine)ズゴーレムだよ」


 赤い服を着たアキが、紫音達に新しいゴーレムを紹介する。


「前回のヒュドラとの戦いを教訓に作ったゴーレムで、全身を鉄にして形を流線型とすることで、ウォーターブレスへの対策とし、両腕の先を爪にすることで、首を切断する武器としたんだよ」


 アキの狙い通り、ズゴーレムはウォーターブレスを受けるがもろともせずに、お返しとばかりに鋭い爪を首に刺して切断していく。


 ヒュドラはウォーターブレスが、あまり効いていないと判断したのか、首を振り回しての打撃に変更してくる。


「むむ… あのヒュドラ、やるな…」


 アキはズゴーレムに命令を出しながら、思わず声に出してしまう。

 それは、彼女にだけズゴーレムの耐久値が見えており、首による攻撃がウォーターブレスの時よりも減少が早いからである。


「さらに出来るようになったね、ヒュドラ! だけど、今は亡き『かっこいいできる紫音ちゃん』が守り抜いたみんなを、私の前で倒させる訳にはいかない!」


 彼女はどこかで聞いたような事を言った後に、エメトロッドに魔力を込めて、ズゴーレムに攻撃命令を下す。


「まあ、確かに『カッコいい先輩』は、もういないわね…」


 ソフィーが紫音を見ながらそう突っ込むとその彼女からは


「二人共ひどいよ!!」


 当然このような反論が返ってきた。


「私は今のシオン様もステキだと思います!」


 それに続くように、紫音LOVEのアリシアが素敵だと言ってくれる。


(コクコク)


 そして、ミリアも頷いて紫音が素敵だと肯定してくれる。


 その頃、オーガ本拠点では―


 クロエとアンネ、エマは、人間達が攻めて来るまでの時間潰しとして、オールドメイド(ババ抜き)をしていた。


「どれかな~」


 エマの手札から、どれを取るか悩んだクロエは


「これだ!」


 と、端の一枚に指を掛ける。


 すると、「くぅ~ん」とエマの後ろで座っているフェンリルが、悲しそうに鳴いたのに気付いたクロエはそのトランプを取るのを止める。


 そして、クロエが隣の札に指を動かすと今度は「わん!」と、フェンリルは嬉しそうに鳴いて尻尾を振る。


「よし、これだ!」


 クロエはエマの手札から一枚を取ると自分の手札の中から、ペアになる札を取り出して場に出す。フェンリルは、今朝散歩してくれたクロエへのお返しに、手札を見て教えているのであった。


「フェンリル~ クロエお姉ちゃんに教えちゃダメなの~」


 だが、その様子を見ていたアンネに叱られるとフェンリルは、「くぅ~ん」と鳴いて、クロエの後ろに隠れる。


「フェンリルは、今朝散歩してくれなかったアンネより、私の味方をしてくれているんだよな~」


 クロエにそう言われながら、頭を撫でられたフェンリルは嬉しそうに尻尾を振り、「わん!」と鳴いて答えた。


 今朝散歩しなかった事を、一応引け目に感じているアンネはバツの悪そうな表情で「うぅ~」と声にならない声を出すしかできなかった。


 こうして、彼女達はもう暫く呑気にトランプをすることになる。




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