284話 出発!
前回のあらすじ?
「前回のクロエちゃんの『3匹の子豚』は、中々ユニークなお話だったね。私は同じ創作家として、クロエちゃんの創ったお話は興味を惹かれたよ」
「そうかなぁ? 私は元のお話の方が好きだけど…」
「まあ、人それぞれの感性だからね」
アキの意見に紫音はそう答えるが、その物語が面白いかどうかはアキの言う通り、好みの問題である。
「因みに紫音ちゃんなら、どんな『3匹の子豚』のお話を創る?」
「えっ!? うーん… 私なら最後はオオカミも一緒に仲良くがいいかな~」
「シオンさんらしいですね」
紫音のハッピーエンド案に、同じくハッピーエンドが好きな温和なエレナとミリアが共感する。
「まあ皆仲良くという緩いラストが、ほのぼの好きのシオンさんらしいッスね」
「紫音ちゃんらしい、面白くも何とも無い答えだったね」
だが、リズとアキには不評なようで、彼女達からはダメ出しを受けてしまう。
「じゃあ、アキちゃんならどんなお話にするの?」
紫音は自分の和やかエンドを否定したアキに対して、逆に自分ならどういう話にするのかを安易に尋ねてしまう。
もちろんアキの改変された『3匹の子豚』はこれである。
「そうだね… 私なら…
狼(♂)が甘い吐息を「フ~」と一番上の豚(♂)の耳に吹きかけると、豚(♂)の服はみるみる脱げてしまう。
狼(♂)「さて、これでオマエを食べる為に邪魔なモノは無くなったな。オマエの身体をたっぷりと味あわせて貰おうか」
一番上の豚(♂)「やっ、やめろ。この狼め…」
狼(♂)「口では嫌がっていても、オマエの―
「紫音パーーンチ!!」
「あぐぅ!?」
ミリア達良い子にアキのBL3匹の豚を聞かせないために、紫音は彼女の肩に鉄拳をお見舞いして強制終了させる。
「ミリアちゃん達がいるのに、それ以上は言わせないんだからね!」
「紫音ちゃん。回を重ねるごとに、威力が上がってきているね…」
紫音はアキに聞けば腐った話になる事を予想できたのに、その自分の失念を棚に上げて、親友を鉄拳制裁する。
アキの話が何だったのかミリア達が疑問に思う前に、機転を利かしたエレナはミリアに『3匹の子豚』改変の質問をしてみた。
「ミリアちゃんなら、どんなお話にしますか?」
ミリアは大勢の前で答えを言うのが恥ずかしいので、紙に書いた自分の答えを恥ずかしそうに皆に見せる。
【ブタさんのお家が、お菓子で出来ている】
ミリアの出した彼女らしいメルヘンな答えに、「相変わらず、ミリアちゃんは可愛いな~」と皆がほっこりしているとリズがジト目でこう突っ込む。
「ミリアちゃん。フリップの出し方とその答えがあざとすぎッス」
「そんな…」
ミリアは別に狙った答えではないのに、親友から厳しい言葉を言われて、思わず涙目になってしまう。
涙目のミリアを
「さっきの答え、ミリアちゃんらしい優しい答えでお姉さんは好きだよ!」
と、紫音が慰めているのを後目に、復活したアキがリズにどう改変するか聞いてみる。
「では、リズちゃん! こんな『3匹の子豚』は嫌だ、どんな『3匹の子豚』?」
「大喜利みたいになっているじゃない!」
ソフィーのツッコミが決まった所で、リズは満を持して答えの書かれたフリップを皆に見せる。
【兄弟の3つの家が、変形合体する!】
そして、答えの書かれたフリップを出した後に、目を輝かせて補足説明するリズ。
「しかも、組み合わせで3タイプに変形合体するッス!!」
「ゲッ○ー○ボじゃない!!」
ソフィーの素早いツッコミが入った所で、アキは続けて次の回答者を選ぶ。
「はい、ノエミちゃん! こんな『3匹の子豚』は嫌だ、どんな『3匹の子豚』?」
アキに選ばれたノエミは、無言のまま伏せていたフリップを持ち上げ見せてくる。
そこに書かれていた答えは―
【豚をぶった】
「大喜利じゃなくて、駄洒落じゃない!!」
大喜利の答えでなくダジャレが書かれていた為に、ソフィーが間髪入れずにツッコミを入る。
だが、それを見計らっていたノエミは、ツッコミが終わった後にさっとフリップを裏返す。すると、そこには答えの続きが書かれていた。
【翌朝まで…】
「どれだけ叩くのよ! 可愛そうだから、やめてあげなさいよ!」
ソフィーはそう突っ込むと同時に、ノエミのその答えに彼女の心の闇を見たような気がした。
「では最後、アフラちゃん! こんな『3匹の子豚』は嫌だ、どんな『3匹の子豚』?」
「私のこたえはねー コレだよー」
アキに呼ばれたアフラは、元気いっぱいにフリップを見せてくる。
【ぶたまんは、おいしいよ! (>(●●)<) 】
「ただの感想じゃない! この能天気腹ペコ娘!!」
先程まで大喜利を否定していた筈のソフィーではあったが、最後の答えに只の感想を出してきたアフラに怒りを覚えて、彼女の体を揺さぶりながら突っ込む。
「おまけに、その感想の横に書かれた豚の顔文字がイラッとするのよ!!」
「うわぁ~ やめてよ、ソフィーちゃん~」
そして、ソフィーはそのような理不尽な怒りをアフラにぶつけて、いつもより体を激しく揺さぶってしまうのであった。
おしまい
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それぞれが夜を過ごした翌日―
早朝から獣人本拠点攻略の為にフラム要塞に集まった冒険者達は、馬車に乗って次々と出発する。
目的地到着は何事もなければ昼頃となっており、そこから陣営を設営し昼食を食べて、少し休憩してから攻略戦となる予定だ。
その道中、馬車の中で紫音は既に少しうんざりしていた。
それというのも、馬車に自分と紫音の二人だけなのをいいことに、王妹様がやけに距離を詰めて座ってきて
「シオン様… わたくし不安です…」
「不安なのは解るけど、あまりくっつかないでよ…」
くっつこうとしてくるからであり、その度に馬車を御者台で操縦するレイチェルから
「シオン君、何が起きているんだい!? キャッキャウフフかい? キャッキャウフフかい!!?」
と、問い質してくるからであり
「そういう事にはなっていませんから、運転に集中してください」
「そうです! レイチェルは運転に集中しなさい」
その都度、紫音は外で操縦しているレイチェルに返事をするのを、続けていたからである。
あと、誰のせいでこうなっているんだと思っていた。
その頃オーガ本拠点では―
「ZZZZZ」
「紫音、その黒猫耳としっぽも可愛いわ~ ZZZ」
昨日の夜の出来事が祟って、ぐっすりお休みしていた。




