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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第7章 少女新たなる力を手に入れる

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230話 幼女ちゃんに諭される




 アルトンの街への帰り道、馬車の中でクリスは疑問に思っていたことをアキに尋ねる。


「埃の事を気にしていたけど、どうしてかしら? あれほど大きな屋敷なのだから、掃除が行き届かない事も不思議ではないと思うけど…。私が元の世界で住んでいた屋敷も、お手伝いさんが掃除してくれていたけど、埃は少し残っていたわ」


 そのクリスの質問に、アキは自分なりの考えを彼女に話し始める。


「そう、そこなんです。普通あれほど大きな屋敷に住んでいれば、掃除するのも大変です。なので、あれ程売上を上げて資産があれば、お手伝いさんやメイドさんを雇って掃除して貰うはずです。現に倹約家のミレーヌ様ですら、雇っています。ですが、詩織さんは雇っていません。雇っていれば、来客のお茶を自分で用意はしないと思うんです」


 つまり、アキが言いたいのは詩織が不便であるにも関わらずに、一人で住んでいるのは何故かということで、彼女の考えは何か他人に知られてはいけない秘密があるのではないかということであった。


 それが、何かはわからないが……

 紫音がそのアキの考えに対して、思いついた意見を述べてみる。


「思っているより儲けていないのかも?」

「そんな事あるわけないだろう! あれだけ売れているんだぞ、印税でガポガポだよ!」


 自分の意見を聞いたアキが、予想以上に強めの言葉で否定してきて、紫音は少し気後れしながらも、次の意見を言ってみる。


「じゃ、じゃあ、節約家なのかも…」


「節約家なら、あんな無意味にデカイ屋敷なんて最初から購入するか! よく考えてから、発言しろ! メイド服着させて、メイドとして家で可愛がるぞ!」


 アキに再び強い言葉で否定された紫音は、気持ちが凹みそうになりながら、何とか奮い立たせて突っ込んだ。


「どうして、メイド!?」


 アキの言い分はもっともであるが、一概にそうとは言い切れない。

 見栄のために大きな屋敷を買って、その後は節約するのは十分にありえる事だが、彼女はそれを勢いで誤魔化した。そして、アキはメイドさんも大好物であった。


 結論としては、辺鄙な場所で不便なので今は住んでいないから、メイドを雇っていないという事になった。だが、それなら”どうして今回あの屋敷で会うことにしたのか?”という新たな疑問が湧いてくる。


 しかし、いくら考えた所で正解は本人に聞かなくては解決しないので、議論はそこまでとすることにして、話題は明後日来るリザード軍の話になる。


「シオン、修行は間に合いそう?」


 紫音は落ち込みながら答えた。


「たぶん、間に合わないと思います…」


「そう…」


 その答えを聞いたクリスは、リザード戦はいつものように紫音に頼れないかもしれないと思い苦戦を覚悟する。


 ミレーヌの屋敷の門の前まで、馬車で送ってもらった紫音とアキは操縦してくれていたノエミにお礼を言うと、彼女はコクッと頷いてから馬車を走らせた。

 屋敷の門から、屋敷まで歩きながらアキが紫音に、真面目な顔で話しかけてくる。


「紫音ちゃん」

「何?」


「さっきの話だけど、お小遣い上げるからメイドになってくれないかな?!」

「ならないよ!」


 アキの申し出を紫音はすぐさま拒否した。

 夕食後紫音はリザード戦に備えて、就寝までオーラの大太刀の練習することにするが、昼間の事が気になって、練習に身が入らずにいた。


 修行してオーラの大太刀が使えるようになって、活躍したとしてもフェミニースが自分を嫌っているなら、女神武器も貰えない…。

 そうなれば、魔王を倒すのは更に困難になってしまう。


(フェミニース様が私のことを嫌っているなら、この練習だって意味があるのかな…)


 紫音が折れた刀を見ながら、フェミニースへの不信感を募らせていると、背後から声を掛けられる。

 振り返り目線を少し下げると、そこには頼れる幼女マオが立っていた。


「どうしたのだ、そのような沈んだ顔をして。何か悩みでもあるのか?」


 マオに悩みを聞かれた紫音は、年下だと言うのに何故か彼女にフェミニースの事で悩んでいることを打ち明けてしまう。

 すると、マオからはこのような意見が返ってきた。


「そうかの~。我からしたら、オマエほどこの世界で女神に気に入られている者は、おらんと思うがな」


「そんなことないよ…。以前私がお願いしても、フェミニース様は女神武器をくれなかったのに、アキちゃんやリズちゃんには簡単に与えているし……」


 紫音の言葉を聞いたマオは、すぐさまこの様な事を言ってくる。


「簡単に手に入れたあの二人は、オマエほど活躍しているのか? それで、称賛を得ているのか?」


「それは…」


 マオの言う通りで、戦果から言えば紫音のほうが上げており、それは冒険者ランクに現れていて、知己からの冒険者としての評価も紫音のほうが高い。それは、皆が紫音の頑張りを知っているからであった。


「今オマエが新しい女神武器を与えられても、使いこなせずにまた壊してしまうのがオチであろう。強い武器を手に入れた所で、リズのように使えこなせなければ意味がないからな。だからあの女神は、オマエに頑張って努力して使いこなせる力を得て欲しいと思っているのだ」


 リズがイマイチ活躍していないのもニューミーを使いこなせていないからで、本人もそれが解っている、そのために今も修行を続けている。


 マオにその様に諭された紫音は、確かにそうだと思ってフェミニースが自分を嫌っているのではなく、試練を課しているのだと思った。

 そして、この試練を超えた時にきっと女神武器を与えてくれるのだと…


(それにしても私は、どうして年下のマオちゃんに悩みを打ち明けているんだろう…。私の方がお姉さんなのに…)


 紫音はどうして自分が年下幼女に頼ってしまったのか考え、一つのとんでもない答えを導き出してしまう。


(アキちゃんに聞いたことがある…。世の中には合法ロリと言われているお姉さんが居ることを! もしかして、マオちゃんはその合法ロリのお姉さんなのかもしれない!!)


 マオが幼女に見える合法ロリの年上お姉さんなら、自分がマオを頼ってしまったのも納得がいく。


(そういえば、本人も子供扱いするなと言っていたし、幼女にしては頼れるところもそれなら辻褄が合う)


 紫音はそう考えてから、マオを見るがどう見ても見た目は幼女であった。




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