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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第6章 逆襲の魔王軍(仮)

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225話 幼女ちゃんに叱られる



 前回のあらすじ

 次の戦いに備えて、オーラの刀を作る練習をしていた紫音の前に現れたのは、謎の幼女ちゃんであった。


 #####


 紫音はマオに指定された岩の前に立つと、オーラの刀を八相に構えて息を整え精神を集中させる。


「はあっ!」


 そして、気合一閃オーラの刀を目の前の岩に振り下ろす。

 すると、岩には深く綺麗な縦一文字の斬撃の跡が残る。


 紫音は斬撃を終えた後振り返って、後ろで見守るマオに自信満々の顔でこう言った。


「マオちゃん。お姉さんの太刀捌きと、オーラの刀の威力はどうかな? ちゃんと、斬れたでしょう?」


 すると、その紫音の言葉を聞いたマオは呆れた感じで、こう言い返してくる。


「やれやれ、やはりこの程度か…。だから、オーガすら倒せんというのだ! 今から我が手本を見せてやる。危ないから、我から3メートル程離れよ」


 紫音が指示通り彼女から3メートル離れると、マオはマントの中から先端に宝玉の付いた杖を取り出す。

 すると、その杖は前後に伸びて彼女の身長と同じくらいに伸びて、マオが魔力を込めると魔力で出来た刃が宝玉から作り出されていき、その刃は2メートルぐらいまで伸びていく。


「すごく長い…」


 紫音がその長さに驚いていると、マオはその大鎌を水平に構えて説明を始める。


「我のこの鎌は魔力で作られておるが、貴様のオーラの刀と根本的なところは変わらぬ。さあ、とくと見るが良い!」


 マオはそう言うと、岩の前に立ち体を大きく捻ると、「やあっ!」と気合とともにその大鎌を水平に振って、岩に横一文字に斬りつけた。


 すると、岩の魔力の刃で斬りつけられた部分は横一文字に消し飛んで、数センチの隙間ができ、上の部分がだるま落としの要領で大きな音を立てて、残された下の部分に落下する。


「どうだ、シオン。貴様が得意満面で岩につけた刀傷との違いを、とくと見て己の未熟さを恥じるがよい!」


 紫音は真っ二つになった岩を見て、マオにドヤ顔を見せたことが恥ずかしくなった。

 さらにかわいい幼女に厳しく窘められるという、一部の者にとってはご褒美の状況もメンタルの弱い彼女にとっては、凹む要因でしか無い。


 紫音は凹みそうになるところを何とか堪えて、年上の余裕を忘れて幼女に大人気なく反論する。


「ずっ、ずるいよ、マオちゃん! マオちゃんの鎌の刃は長いんだから、岩を真っ二つに出来るのは当たり前だよ! でも、私のオーラの刀は、あっ…」


 紫音はそこまで言うと、マオの言いたいことを理解する。

 自分がオーラの刃を長くする技術がないことが問題であり、使えていれば同じ様に岩を真っ二つに出来たこと、そしてカリュドーンの足を斬れたことも……


「我が貴様を未熟と言う訳に気付いたようだな。我がカリュドーン戦でオーラの大剣で戦えと言った真意も! あの時貴様が、オーラの大剣を習得していれば、この岩のようにカリュドーンの足を真っ二つに出来て、戦いはもっと楽に進めることが出来たであろう」


「はぅ!?」


 幼女による一部の者にとってのご褒美タイム、紫音にとっての説教タイムはまだ続く。


「そして、これから貴様が戦うオーガやリザードの硬い巨躯にも、一度で大きなダメージを与える事も、上手くいけば一撃で屠る事もが出来るであろう。そして、貴様が倒そうとしている魔王も体は大きく、生半可な攻撃ではダメージを与えるのは難しい。貴様が本気で魔王を倒したいなら、オーラの大剣を作る技は必ず覚えねばならないのだ!」


「はぅぅ…」


 紫音はすっかり幼女の説教で凹んでしまう。

 だが、気持ちを持ち直すと、紫音はマオに宣言する。


「わかったよ、マオちゃん! 私これからオーラの大剣…オーラの大太刀の練習をして、必ず使えるようにするよ!」


「うむ」

「そのためには、まず<女神の秘眼>を発動させて、オーラスキルを強化しないー」


 紫音がそこまで言うとマオは瞬時に跳躍して、紫音が防御する間もなくその頭にチョップを叩き込む。


「この愚か者が!!」

「ひゃぅ!」


 幼女に説教され、チョップを受けて頭を押さえる紫音には、もはやお姉さんとしての威厳はもはやどこにもなかった。

 元からあったかどうかはわからないが…


「マオちゃん、なにするの!?」


 紫音が頭を抑えながら、涙目でそう尋ねるとマオはこう答える。


「そのような、いつ発動するか解らぬものに頼ってどうする!」

「発動条件は、恐らくだけど私がピンチになった時だよ!」


 紫音は、いつも危機的状況に陥った時に<女神の秘眼>が発動していた為に、そう推察していたが厳密には<紫音が、本当に危機敵状況と感じた時>である。


「ならば、その危機的状況とやらに発動するというのを、我に見せてもらおうか!」


 マオはそう言うと、宝玉の付いた杖に魔力を送り込み魔力の刃を作り出して、戦闘態勢を取る。


「行くぞ、シオンよ!」


 そして、紫音に鎌を振り上げ突進してきた。


 彼女はその小さな体で軽々と大きな鎌を振り回し、紫音に斬撃を次々と打ち込んでくる。

 紫音は折れた刀で何とか防ぐが、次第に捌ききれずにアチコチに切り傷を負っていく。


「やめてよ、マオちゃん! 痛いよ…」


 紫音の訴えを無視してマオは攻撃を続けながら、紫音に問いかけてきた。


「どうした、アチコチ切り傷だらけで危機的状況だと言うのに、<女神の秘眼>は発動していないではないか!」


「マオちゃんが相手だと、ピンチだなんて思えないよ! 魔物相手なら発動するよ!」


 紫音の反論を聞いたマオは、彼女を厳しく窘める。


「そのように、自分の認識や感情で発動しない技など技とは言えぬ。己が意思でいつでも使えるからこそ、戦いの場で信頼できる技と言えるのだ! そのような気構えでは、いざという時に技が発動せずに、己どころか仲間をも危険に晒すことになるぞ!」


 マオのその言葉を聞いてハッとする紫音。


(マオちゃんの言う通りだ…。【冒険者育成学校】の卒業試験の時に、私はスライム相手に発動できなかった…。そのせいで、ミリアちゃんを危険な目に合わせて、私は危うくR18指定になるところだった…)


「マオちゃんの言う通り、私は心も技も未熟だったよ……」


 紫音のその言葉を聞いたマオは、攻撃を止めて諭すようにこう言ってくる。


「未熟を恥じることはない、誰もが皆始めは未熟なのだ。問題は己を未熟だと認めて、そこからどうするかだ。まあ、これは我もある者から、言われた言葉だがな……」


 マオは杖を倒しながら、幼女には似合わない遠い目をしてそう言った。


「私頑張るよ、オーラの大太刀を使えるようになって、みんなを守れるように!」

「うむ」


 マオは紫音の決意を聞くと、彼女の目を見てその瞳に決意が宿っている事を確認すると、フードを被り魔力を込めて姿を隠す。


 こうして、紫音はオーラの大太刀を習得するために、修行を始める事になる。


 ######


 次回より新章開始となりますが、その前に恒例の幕間の茶番を挟みます。


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