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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第6章 逆襲の魔王軍(仮)

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217話 謎の少女




(私の飛び蹴りを防いだ子と、シオン・アマカワ……。マズイわね……)


 紫音とマオ二人と対峙するエマは、このように自分の不利を悟りどうするか悩む。


「うっ!」


 すると、特殊能力の発動が切れて、その反動で吐血してその場に膝をついてしまう。


「こんな……、ときに……」


 エマはそう言って、何とか立ち上がろうとするが体に力が入らない。


「あんまり、無理しないほうがいいよ。その状態はホントにキツイから……」


 その様子を見て、紫音が実体験からそうアドバイスをする。


「ひとまず、勝負はあったな。どうするシオンよ?」


 マオは紫音にエマへの処遇を尋ねると、紫音は即答した。


「どうするって、こんな状態の人をどうもしないよ。えーと、サタナエルさんでしたっけ? 高級回復薬…飲みます?」


 紫音は鞄から回復薬を取り出しながら、苦しそうに地面に膝をつくエマにそう尋ねる。


「敵の…、情けなんて…、受けないわ……」


 彼女は苦しそうな声でそう答えた。

 紫音が手に回復薬を持ったまま、心配そうにその様子を見ていると、上空からスレイプニルに乗ったクロエがエマを回収しにやってくる。


(まずい、エマ姉がピンチだ! 相手はシオンお姉さんとあと一人… 誰?)


 クロエはそう思いながら、エマの近くにスレイプニルを着地させた。


(小さい女の子だ…。アンネより幼いかも……)


 クロエはマオを観察しながら、エマの前に立って紫音達と対峙する。


「えーと、ケルベロスちゃん。私達はこれ以上戦う気はないから、サタナエルさんを連れて帰ってあげて。あと、これよかったら使ってあげて」


 紫音は対峙しているクロエにそう言って、手に持っていた高級回復薬を投げ渡し、自分は鞄からオーラ回復薬を取り出すとそれを飲み始めた。


 クロエは、エマに紫音から貰った回復薬を飲ませて、スレイプニルに乗れるぐらいまで回復させると、彼女をスレイプニルの背に乗せ、自分も乗ってその場を後にする。

 本拠点に帰る二人を見送りながら、マオは紫音に問いかけた。


「行かせてしまって、良かったのか? 次出会えばまた戦うことになるというのに…」


 マオの問いかけに、紫音は少し元気のない感じでこう答える。


「そうかも知れないけど…、私には人を殺すのは無理だから……」

「では、次出会った時には、どうするつもりだ?」


 紫音はこのマオの質問には元気な感じでこう返答した。


「大丈夫だよ、アキちゃんに聞いたことがあるの。昔の団扇を持った偉い人が敵対している人を<七回捕まえて、七回逃してあげる>をしたら、仲良くなれたって。私もそれを試してみるよ!」


「変った話があるものだな…」


 紫音の返事を聞いたマオは、にわかには信じられないといった顔でそう答える。


「それよりも、今の私にはもっと大事な事があるよ!」


 紫音はそう言うと、両手でマオを抱えあげるとアキ達のいる所にダッシュで向かう。

 そこには、丁度休憩中であったソフィーとリズも一緒に居た。


「ソフィーちゃん、リズちゃん、丁度いい所に! この子だよ、私をこの前助けてくれた幼女ちゃんは! ほら、本当に居たでしょう!?」


 紫音はそう言って、両手に抱えたマオをソフィーとリズに見せつける。


「我を子供みたいに抱えおって、離さぬか馬鹿者!」


 マオは紫音の腕の中でジタバタしていた。

 それを見たソフィー達からは、予想外の反応が返ってくる。


「シオンさん…、遂に犯罪に手を……」


 リズがいつもよりジト目に磨きをかけてそう言ってきた。


「アナタ、一体どっからそんな小さな子を攫ってきたのよ!!」


 ソフィーが紫音の犯罪を追求する。


「シオンさん…」


 紫音が罪を犯したと思って、とても悲しそうな顔で見るミリア。


「みんな、酷い! どうして、私が犯罪した前提なの!? 私は罪なんか犯してないよ!?」


 紫音は、涙目で一同に突っ込んだ。


「いいから、早く降ろせ(怒)」


 マオが半ギレ気味でそう言うと、紫音も流石に察して彼女を地面に下ろす。


 そして、マオをみんなに紹介する。


「この子は、私を二度も助けてくれたマオちゃん。小さいけど凄く強いんだよ」

「マオだ、よろしく頼む」


 紫音の紹介の後に、マオは一同に挨拶をしてソフィー達も自己紹介を行なう。


「ところでお前達…。呑気にしておるが、アレは放っておいていいのか?」


 マオは一同に、オークの王を指差しながら言った。

 冒険者達はオークの王カリュドーンと戦っているが、ユーウェインとスギハラは未だ回復中で紫音一行がここで呑気に話をしているために、主力がおらずに苦戦している。


「すっかり忘れていたわ! アフラ! 行くわよ!」

「りょうかーい!」


 ソフィーはアフラに声をかけると、カリュドーンの元に走っていった。


「ミリアちゃん、私達も行くッス!」

「うん…」


 リズとミリアもソフィー達に追従する。


「私も…っと思ったけど、武器が折れて取りに行っているところだった」


「今のお主のオーラでは、普通の武器では耐えられんぞ。先程のようにオーラを伸ばして刃にしたほうが良いと思うぞ」


 紫音が武器を取りに行こうとすると、マオが紫音にアドバイスをしてきた。


「でも、あれはオーラを刃の形として維持するのに、すごく集中力が必要で疲れるんだよ…」

「だが、魔王との戦いで使えるようになっておいたほうが良い技だぞ」


 マオは泣き言を言う紫音を嗜める。


「魔王との戦いで…。マオちゃん、私やってみるよ!」


 紫音はマオにそう言って、みんなの後を追う。


「マオちゃんは、手伝ってくれないの?」


 残されたアキがマオに尋ねる。


「我はいかぬぞ。アレを倒すのはお前達の役目だからな」

「役目か… なるほど、それもそうだね…」


 アキはそう言ってから、エレナの耳元で囁く。


「エレナさん、マオちゃんを見張っていて。この子は何か隠しているわ」


 そして、エレナにマオの監視を頼んだ後に、紫音達の後を追った。


「とは言ったものの…、アヤツらだけでは心配だな…。もう少し前で様子を見るか。と、いうわけで回復役の娘よ、我はもう少し前に出るからな」


 マオは話が聞こえていたのか、監視を頼まれていたエレナに一言告げると、前線近くまで移動を開始する。


 エレナは負傷者の回復で、移動できないのでマオを見送ることしか出来なかった。


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