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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第6章 逆襲の魔王軍(仮)

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214話 オークの王出陣



 ユーウェインが右側に来ると、エイクが彼目掛けて突進してくる。

 彼はその突進をオーラステップで横に回避すると、側を通り抜けるエイクの横っ腹に魔法剣「トルネイド」を当てる。


 回避しながらの斬撃なので、斬撃の威力はないがトルネイドのダメージはエイクを襲う。


「ムモー?!」


 斬った場所に発動する魔法剣に、流石のエイクも逃げ切れずにトルネイドの竜巻に巻き込まれ、上空まで巻き上げられ地面に落下するとそれなりのダメージを受ける。


「ムモー(泣)」


 ダメージを負ったエイクは、鳴きながら左側にいるアンネの所に駆けていった。

 ユーウェインは続けて、ケルベロスの元に向かい剣を構える。

 ケルベロスことクロエも、目の前の彼が強敵だと瞬時に感じると構えを取った。


「でやぁぁぁぁ!」

「やぁぁぁぁ!」


 ユーウェインはクロエに数度斬りかかり、彼女はその斬撃を”ケルちゃん””ベルちゃん”で捌くと蹴りで反撃するが、女神武器の特殊能力で身体強化された彼はその蹴りを難なく回避する。


 そして、ユーウェインとクロエは再度攻撃を応酬しあうが、お互い有効な攻撃を相手に与えることができずにいた。


(何と情けない男だ、ユーウェイン・カムラード! 幼い姿に惑わされて、魔法剣を放てないとは!)


 彼は司令官として、ここで彼女を倒さねばならない事は解っているのだが、どうしても魔法剣を使うことが出来ずに心の中で自分の弱さを責める。


(この人も手加減している…。シオンお姉さん達といいこの人といい、私が子供だからと敵なのに手加減してくれる…。元の世界で、こんな人達に出会っていれば… 私は……)


 クロエもユーウェインが、魔法剣を使ってこないことに一瞬そのような考えが頭をよぎるが、すぐさま頭から消し去ることにした。その考えを持ってしまったら、戦えなくなってしまうからである。


 その頃左側では、スギハラの連続技<雪月花>を受けたフィルギャが、(・(ェ)・)この顔から、(>(ェ)<)この顔になって、(;(ェ);)この顔でアンネの元に逃げてきたら、ちょうど同じ様な顔をしたエイクが右の戦場から走って逃げてきた。



「フィルギャ、エイク。アンネの鞄の中で、回復するの~」


 二体の傷ついた姿を見たアンネは、二体を鞄に入るサイズに戻すと、鞄の中にしまって回復させる。


「そこの黒いお兄さん許さないの~! フィルギャの仇なの~!」


 そして、スギハラを見てプンプン怒り始めるアンネ。


(あんな幼い子が相手とは… やりずれえな…。どうしたもんかな…。とりあえず、狼からやるか…)


 スギハラはアンネとの戦いを一先ず置いて、刀を構えながらフェンリルの方を向く。すると、そこで女神武器の特殊能力の効果が切れてしまう。


「こんな時に!? ぐふっ!」


 スギハラは能力の反動で吐血して、その場で膝から崩れ落ちそうになるが、刀を地面に刺して片膝を付きながら何とか倒れないようにする。


「ハァ…ハァ…、やべぇな…これは…。早く回復しねえと…」


 スギハラが、残された力で何とか腰の鞄から回復薬を取り出そうとしていると、アンネがフェンリルにスギハラを攻撃するように指示を出す。


「フィルギャを虐めたから罰をうけたの~。フェンリル、あの黒いお兄さんをやっつけるの~」


 幼い彼女は、スギハラのことを自分の友達を虐めた人間としか認識していないため、容赦なく攻撃命令を下す。


「がるる~!」


 フェンリルが、スギハラをその鋭い爪で襲おうと飛びかかる。


「スギハラ殿、危ない!!」


“クリムゾン”団長アーネスト・スティールが、両者の間に入りオリハルコンの剣で、フェンリルの攻撃を防ぐ。


 スティールが、フェンリルの猛攻を数度受けていると、右横から胴体を伸ばしたヨルムの頭による体当たりを受ける。


「ぐっ!?」


 咄嗟に右手の篭手を盾にして、衝撃を弱めるがそれでもスティールは派手に吹き飛ばされ、大ダメージを受けてしまう。ヨルムはスティールへの追撃をせずに、すぐさま伸ばした胴体を元に戻してアンネの護衛に戻った。


 フェンリルは邪魔者が居なくなったので、再びまだ動けないスギハラに飛びかかる。


「団長! 危ない!!」


 そこにクリスが飛び込んできて、身を挺してスギハラをフェンリルの攻撃から助けるが、彼女自身はフェンリルの爪によって、ダメージを負ってしまった。


 その頃、ユーウェインも特殊能力発動が切れて、その反動で対峙していたクロエの前で吐血して、スギハラと同じ様に膝をついてしまう。


(くっ…、私としたことが…、ここまでか…)


(どうしよう……、倒したほうがいいよね…。でも、この人…私に手加減してくれていたし…)


 その彼の様子を見たクロエは、このように葛藤して悩む。

 すると、オーク本拠点から四天王二体が倒されたためにオークの王カリュドーンが、出撃してきた。


 その屈強な体は四天王より更に一回り大きく、その大きな体には重装鎧を身につけ、右手には剣、左手には盾を持って威風堂々と歩いてくる。


「あとは、カリュドーンに任せるとするか。せいぜい頑張るのだな!」


 それを見たクロエはユーウェインに、言い放つ。もちろん、厨ニポーズを取りながら…


「スレイプニル!」


 そして、スレイプニルを自分の元に呼びつける。


「ライド・オン!」


 このように厨ニセリフを言って、スレイプニルの背にまたがると、左側にいるアンネの元に向かう。


 クロエが戦いを放棄したのは、ユーウェインに止めを刺すのが嫌だったというのもあるが、彼女自身が戦い続けでMPが少なくなっていて、カリュドーンが現れたのを機にここが引き時だと感じたからであった。


 そして、同じくMPが少なくなっているであろうアンネを本拠点まで、連れて帰ることにしたのである。


「副団長、大丈夫か?」


 スギハラは自分を庇って、傷ついたクリスに声をかける。


「何とか…」


 彼女からは、そう返事が返ってきたがどう見ても大丈夫そうではない。


「待っていろ。今、回復薬を飲ませてやるからな!」


 彼は自分が飲もうとしていた回復薬を、クリスに飲ませようとするが、そこにフェンリルがスギハラと負傷して動けなくなったクリスに容赦なく襲いかかってくる。


 レイチェルは、ヨルムが体当たりをする時に捨てられたが、噛まれている間にそれなりのダメージを受けて、援護に回れずにいた。


「がるるる!」


 フェンリルが飛びかかって、鋭い爪を振り下ろす。


「くっ!」


 スギハラが”彼女だけでも!”と、クリスに覆いかぶさって守ろうとする。


「うおぉぉぉ!!」


 すると、カシードが二人の前に盾となって立ちはだかり、大盾でその攻撃を防ぐ。


「スギハラさん、いちゃつくのは… 後でしてくださいよ…」


 彼はフェンリルの攻撃を防ぎながら、クリスに覆いかぶさっているスギハラをからかう。

 が、その大盾は振り下ろされたフェンリルの鋭い爪で引き裂かれ、盾を構える彼の顔数センチ上でその爪は止まり命拾いする。


「あぶっ、あぶねー!!」


 カシードは、思わずそう言葉を漏らしてしまう。




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