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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第6章 逆襲の魔王軍(仮)

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198話 これは、〇〇の分!



 女神武器の特殊能力を発動させ身体強化した紫音は、その高速のスピードでタムワースの背後に回り込むと、その背中を斬りつける。


『フェミニウムα』で作られた紫音の女神武器は、彼女のオーラで更に強化され切れ味が上がり、タムワースの鎧をまるで暖めたバターナイフでバターを斬るように切り裂いて、背中にダメージを与えた。


「オノレ!!」


 背中を斬られたタムワースは、すぐさま槍を振るいながら後ろを向くが、紫音は既にその場におらず、すでに武器を振り上げながらタムワースの背後に移動する。


「これは、ミリアちゃんを狙って怖がらせた分!」


 すると、そう言って、また背中を斬りつけた。

 紫音は背中を斬ると、タムワースが振り向く前にまた素早く移動して、


「これは、ソフィーちゃんを攻撃した分!」


 今度は左腕に斬撃を加え、反撃を受ける前にまた移動する。


「これは、みんなを危険に合わせた分!!」


 左腕を負傷したタムワースの槍捌きは明らかに精彩さを欠き、紫音はやすやすと回避して今度は右腕を斬りつけた。


「シオンさん……。私達の事で怒って……」


 その紫音の攻撃の様子を見たミリアは、紫音が自分達のために怒って、みんなの思いを載せて攻撃していると思って感動している。


 紫音はその後もこう言いながら、タムワースを連続で斬りつけた。

「これは、私を槍で突こうとした分!」


「これは、私をバックハンドで殴ろうとした分!」

「これは、地面を転がる私をしつこくついた分!」

「そのせいで、服が汚れた分!」

「これは、ソフィーちゃんに引っ張られて腕が痛かった分!!」


「何か、自分の事ばかりになってきたわね……。最後のなんて自業自得で、四天王関係ないし……」

 紫音の台詞が、自分の事ばかりになってきたのを聞いたソフィーは、リズのようなジト目になってそう呟いた。


 更に紫音は勢いに乗って、関係ない事を言いながら斬撃を繰り出していく。


「これは、リズちゃんが未だに私をダメなお姉さんと認識している分!!」

「これは、ソフィーちゃんが、まったくデレてくれない分!!」

「遂に私達への不満をぶつけ始めたッス……」


 本家ジト目リズがそのジト目に磨きをかけてそう言った。


「グオオオ……」


 両手を負傷し、鎧も役に立たない状況でタムワースは紫音の高速の連続攻撃に反撃もままならず、なすがままに耐久値を削られていく。


 紫音は止めに女神武器・天道無私(打刀)にオーラを大量に溜める。


「蒼覇…!翔……烈……。これが最後まで、まともに技名を呼んで貰えなかったクロエちゃんの分!」


 最後にもう一度チャレンジしてみたがどうしても思い出せず、勢いでタムワースのせいにして刀を振り下ろした。

 紫音の波状攻撃で最早動けなくなる程ダメージを負ったタムワースは、彼女の放った大きな光波を回避することもできずに直撃する。


「グオォォォォォォォ!!」


 断末魔の声をあげながら消滅して、姿を魔石に変えた。


 紫音は親指を立てて”みんなの仇は取ったよ!”みたいな感じで、みんなの方を向くと

 リズとソフィーは呆れた顔で見ている。


(アレ!? 二人の反応が思っていたのと違う…!?)


 紫音はてっきり”私達の分までありがとう~”となると思っていたが、予想外の冷ややかな目で見られている事に戸惑ってしまう。


「うっ」


 次の瞬間、女神武器の特殊能力発動の反動で吐血して、その場に膝を突く。


「シオンさん!!」


 その様子を見た3人は慌てて、紫音に駆け寄る。


「大丈夫ッスか、シオンさん!?」

「シオンさん……」

「ハァ…、ハァ…、大丈夫だよ…みんな…」


 紫音は心配をかけまいと無理に笑顔を作るが、明らかに大丈夫そうではない笑顔であった。


「リズ、肩を貸して! シオン・アマカワを後方まで連れて行くわよ!」

「了解ッス!」


 紫音は、ソフィーとリズに肩を借りて後方まで下がる途中に、デュロックを倒して満身創痍でカシードに肩を借りながら後方に下がるスギハラ達と合流する。


「カシード、俺はいいからシオン君を運んで先に後方に行ってくれ。彼女は、かなり消耗しているようだから、早く回復させてやらないと」


 スギハラの指示で、カシードは紫音を抱きかかえると回復役の居る後方に急いで連れていく。その後ろを心配そうに、リズとミリアがついていく。


「団長……。私の肩を……」

「いや、女性の肩を借りるのは男としては……」


 クリスが自分の肩を貸す事をスギハラに提案すると、彼はやんわりと断ってくる。

 これは、彼が女性慣れしていない為の気恥ずかしさから来ており、フィオナやエレナに気安く話しかけられないのもこのためである。


「団長…、それは女性差別ですよ? 大丈夫です、ちゃんと支えてみせます。だから、遠慮せずに頼ってください」


 クリスはそう言うと、やや強引に肩を貸して彼の体を支えた。


「悪いな」


 スギハラは彼女に礼を言って、肩を借りることにした。


「ああ~! お姉さまが団長といい感じに!? 邪魔しないと!!」


 ソフィーが邪魔しに行こうとする。


「ソフィーちゃん! 後方まで行くのに肩を貸してよ! 私ね、オーラを使い果たしてヘトヘトなんだ……」


 すると、アフラが後ろから彼女の背中にもたれ掛かってきて、ソフィーに半強制的にお願いしてきた。


「離れなさいよ、アフラ! 私はお姉さまと団長の…」

「ソフィーちゃん~、お願いだよ~」


 アフラが力のない声で、彼女に懇願してくる。


「ああ、もうわかったわよ! 連れて行けばいいんでしょう!?」


 ソフィーはアフラを見放すことも出来ずに、彼女に肩を貸すと後方まで連れて行くことにした。


「ありがとうね、ソフィーちゃん」

「まったく、アナタは……」


 アフラは屈託のない笑顔でお礼を言うと、ソフィーは”しょうがないわね”というツンデレ表情でこう返す。


「最近ソフィーちゃんがシオンさんのところに居るから、こうやってソフィーちゃんに肩を貸して貰うの久しぶりだねー」


 アフラはそう言って、嬉しそうにソフィーにくっついてくる。


「もう、何よ。くっついてくるんじゃないわよ…」


 ソフィーは、このライバルであり親友のスキンシップに照れながら、強くは引き離そうとはしなかった。


「きっ…、キ…キマシタワー!!!」


 その光景を見ていたレイチェルは、オークの頭にハルバードを叩き込みながらそう叫んだ。


「器用なやつだな……」


 タイロンはそのレイチェルの戦いを見てそう思う。

 四天王と副官を失ったオークの殲滅は、時間の問題となっていた。




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