表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第6章 逆襲の魔王軍(仮)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/383

169話 一つの決意




 出発する前にユーウェインは、自分不在時の代理をタイロンに伝えていた。


「それと、エドガーの危惧する通り、私が間に合わない可能性もある。その時はタイロン、オマエが私の代わりに指揮を取れ。オマエは四騎将の中で年長者だし、軍歴戦歴も一番長い。それに兵士達からの信頼も厚い。一番の適任者だろう」


 だが、その彼からは予想外のこのような返事が戻ってくる。


「俺に大軍の指揮は無理ですよ。俺はそんな器は持ち合わせていませんよ。それに俺より、適任の人物がいるじゃないですか。隊長と王国騎士団の双剣と呼ばれた人物が……」


「スギハラか…… 」


 タイロンの指す人物に、ユーウェインはすぐさま気付く。


「だが、いいのか? アイツはもう騎士団員じゃないんだぞ?」


 ユーウェインも自分の代わりとして、スギハラが最も適任だと考えているが、外部の人間の指揮に騎士団の部下達が納得しないと考えて、タイロンを指名したのであった。


「そんなの関係ありませんよ。少なくとも俺達三年前からいる者は、命を掛けて殿をしてくれたお二人に今でも恩を感じているし、信頼しているんです。例え今騎士団に居なくても、そのスギハラ殿の命令なら従いますよ」


 だが、そんな彼の配慮は杞憂であったようだ。


「そうか……。今日アルトンの街に行った時に、アイツに話しておこう」


 ユーウェインは急いで旅の支度をすると、四騎将に後を任せてミゲルの操縦する馬車に乗り要塞を後にした。


 ユーウェインがアルトンの街に到着した頃には、陽がすっかり暮れていた。

 彼は盟友スギハラのいるクランに向かうと、彼に自分が王都に召喚された事とオーク戦に間に合わない時の話をする。


「前にも言ったはずだぜ。俺は大軍を指揮するのは向いてないと……」

「だが、俺が居ない以上オマエが指揮をとるしか無い」


「そんな事言ってもな。タイロンにやらせりゃいいだろう?」


 スギハラは、自己評価が低いため指揮をとることに渋るが、そんな彼をユーウェインやクリス、カシードが説得をおこなう。


「アイツは、オマエのほうが適任だと言っている。俺もそう思っている。だから、覚悟を決めてオマエが指揮をとれスギハラ、人類の未来のために!」


「私達も全力でサポートします!」

「そうですよ、俺達が支えますから」

「人類の未来のためか……」


 スギハラはそう呟くと、少し考え込む。

 三人の説得と「人類の未来のため」という言葉に、使命感の強いスギハラは覚悟を決める。


「わかった。オマエが間に合わなかった時は、俺が指揮をとる」

「頼んだぞ」

「まあ、何とかやってみるさ」


「スギハラ、頼まれついでに、もう一つ頼まれてくれないか?」

「なんだ?」


「オーガの旗が今11本なんだが、それをオークが来る前にできるだけ減らしておいてくれないか?」


「カムラードさん。それならオークの方を間引いたほうが、色々面倒がなくていいんじゃないですか?」


 カシードの当然の疑問に彼はこう答える。


「いや、オークは要塞に攻めてこさせて殲滅する。その後に、こちらの戦力次第ではトロールの時のようにこちらから打って出る!」


 それを聞いたクリスが彼の考えをこう推察する。


「その時に以前のように、オーガが増えていればまた面倒になるから、その前に減らしておくと、そういうことですね?」


「そのとおりだ。それにオークの方は、またリーベが来て、邪魔をするかも知れないからな」


 ユーウェインの読み通り、リーベはオークの数を減らされると今回の作戦が狂ってしまうために、王都での密談の後にこのアルトンの街で民間人に成り済まし、そのような動きがないか潜伏して情報を得る手筈になっていた。


「わかった、オーガの方も何とかしておく。そっちもできるだけ、早く帰ってこいよ」

「ああ、わかっている。何も問題が起きなければ、帰ってこれるはずさ」


 ユーウェインはそう言うと、スギハラ達と握手してその場を後にする。


「じゃあ、明日の朝からでも、オーガ間引き任務の打ち合わせでもするか」


 そう段取りを決めると、スギハラ達も解散した。


 BL雑誌『月刊BOYS LOVER』の編集長ノーマ・シュリアーは大いに焦り悩んでおり、その悩んでいる編集長を見た部下の編集者シェリル・ジレットが、何を悩んでいるのか尋ねた。


 すると、彼女からこのような話を聞かされる。


「ライバルの『月刊OTOME COMIC』で、あのオータム801先生が新連載を始めると情報を得たのよ」


「へえー、そうなんですか。オータム先生の作品って、読んでいてキュンキュンしますよね。まあでも、私は絡みシーンがライト過ぎて、少し物足りなさを感じますが」


 彼女の言う通り『月刊OTOME COMIC』は、10代向けのライトな内容で、書店で購入しやすいように名前にもBLの文字が入っていない。


 それに対して『月刊BOYS LOVER』は、対象年齢は20代以上で内容も大人向けであるために、一見棲み分けできているように思える。


 シェリル・ジレットが、あまり危機感を感じていないのも、まさにそこで両者は読者を取り合ってはいない為、売上にさほど問題はない。


 だが、編集長ノーマ・シュリアーは彼女ほど楽観的ではなく、自分の考えを例え話にして彼女に話す。


「目の前に美味しそうなシェイクとワインがあれば、両方飲みたいのが人間というものよ。そして、10代はワインを飲まないが、20代以上は昼にシェイク夜はワインと両方飲める…… といことよ」


「はあ……?」


 だが、シェリルがその例え話にあまりピンときていないようなので、ノーマは説明を続ける。


「つまり、『月刊OTOME COMIC』は、10代プラス20代以上の購買者を獲得できるってことよ! それはつまり、10代の購買者を取り込めない私達は、売上トップになれないということよ!」


「な、なんだってー!」


 シェリルはそう驚いてみせたが、すぐに冷静にこう言った。


「でも別にいいんじゃないですか? トップじゃなくても……」


「ダメよ!! 『月刊OTOME COMIC』の編集長ハンナ・フォーセットは、私の学生時代のライバルなのよ! まあ、もう1人にナタリー・エヴァンスもいたけど、彼女はこの業界の人間じゃないから関係ないとして……。兎に角、私は彼女には負けたくないの!!」


 そして、その夜に彼女に不思議な出来事が起こる。

 熱意の感じない部下にヤキモキしながら、自宅に帰ってきた彼女は焦りと不安で眠れずにワインを飲んで、ようやく睡魔に襲われ眠ることが出来た。


 彼女が夢うつつの状態でいると、枕元に女性が現れ声を掛けてくる。


「起きなさい、ノーマ・シュリアー」


 その声に促されるように起きた彼女は、そのスーツ姿の女性に尋ねた。


「アナタは、誰ですか?」

「私は頑張って働く女性の味方、女神フェミニースです。アナタの悩みを解決しに来ました」


 彼女は不思議とその言葉を信じてしまい、女神に問いかける。

 いや、この時の彼女の心境は”溺れる者は藁をも掴む”であったかもしれない。


「女神様! その方法とは!?」


 彼女の問に女神は、優しい声でこう答える。


「いるではないですか。オータム801に対抗できる者が……『黒野☆魔子』が……」

「しかし、女神様! 黒野☆魔子先生は、こちらからは連絡しても捕まらないのです!」


『黒野☆魔子』ことクナーベン・リーベは、魔王軍であることがバレないために、人間との接触をできるだけ避けるため、いつも完成した原稿を持ち込んでいた。


 しかも、魔王城にいるかその辺を飛び回っているために、連絡もあまりつかないので、ノーマも彼女をオータム801の対抗馬にしようと考えはしたが、断念せざるを得なかったのである。


 だが、女神は彼女にこう告げた。


「大丈夫です、明日昼頃に連絡してみなさい。必ず彼女との連絡が繋がるはずです」

「本当ですか、女神様!!!」


 彼女はそこでベッドから飛び起きる。

 あたりを見渡すと、カーテンからは朝の光が漏れていた。


「今のは、夢……? それとも……」


 彼女は夢だったのかと考え込むが、彼女には今の夢のお告げにすがるしか方法がないのも事実であった。


「ダメでもともとね……」


 ノーマは夢のお告げにしたがって、今日の昼頃に『黒野☆魔子』に連絡を取ることを決意する。


 そして、この彼女の決意が事態を大きく変えることを、今は誰も知らない……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ