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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第5章 冒険者の少女、異世界の為に頑張る。

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163話 山の名前





 トロール本拠点攻略成功の翌日の早朝、紫音は日課の朝練をするためにテントの外に出てくると、周囲には既に体を動かしている冒険者が数人いる。


(こんな作戦に参加する冒険者は、やっぱり毎日の修練を欠かさずにする人が多いな……


 紫音がそう思って体を動かしていると、ソフィーがテントから出てきた。


「おはよう、ソフィーちゃん」

「おはよう。どうして、私も一緒に起こしてくれなかったのよ?」


 紫音がソフィーに朝の挨拶をすると、彼女は挨拶を返した後に少し不機嫌そうに言葉を続ける。


「昨日あんなに激しい戦闘をしたから、今日は朝練するのかわからなかったから……。私も今朝は軽く流す感じにしようと思ってるし」


「私もそのつもりよ。ストレッチして軽く素振りでもしようと思っているわ」

「じゃあ、一緒にストレッチしようよ」

「いいわよ」


 二人でストレッチしていると、今度はリズがテントから出てきた。


「おはよう、リズちゃん」

「おはようッス」


 いつも眠そうなジト目を更に眠そうにしながら、リズは挨拶を返してくる。


「珍しいわね、アナタが朝練なんて。どういう風の吹き回しかしら?」


 ソフィーの言葉を聞いたリズは、少しムッとするとこう言い返す。


「ツンデレお姉さんは、相変わらず嫌な言い方ッスね。私は今日から鍛錬をして活躍して、女神様からミーを女神武器として貰うッス」


 ソフィーはリズの決意を聞くと、自分の失言を謝罪して励ましの言葉を付け加える。


「そう……、それは嫌な言い方して悪かったわね。頑張ってミーを貰えると良いわね」


 紫音とソフィーがペアストレッチをしていると、テントから声が聞こえる。


 それは昨日あの後夜中の2時位まで、二人のキャキャウフフを期待して起きていたが何も起きずにがっかりして就寝し、翌朝の早朝の朝練は眠いしどうしようかと悩んだ挙げ句、日課だし起きてするかと睡眠時間4時間で寝不足のレイチェルであった。


「黒髪美少女とツンデレ美少女が体を密着させて、キャキャウフフと仲良くストレッチをしている!! 朝からこんな”尊い”ものが見られるとは、睡眠時間を4時間にしても朝練をしようと思ってよかった。女神様は、私をお見捨てになっていなかった。感謝のお祈りをしておこう」


「いや、そんな感謝のお祈りをされても、女神様も迷惑だと思いますよ……」


 紫音はテントに近づき入り口を開けて、中から外を覗いていたレイチェルにそう突っ込んだ。


「あと、寝不足は体に悪いので、もう少し寝ていたほうがいいですよ」


 ソフィーも近づいてきて、寝不足のレイチェルに二度寝を勧める。


「私のことは気にせずに、二人はイチャラブストレッチを続けたまえ!」

「もう、ストレッチは終わったんで、心置き無く二度寝してください」


 返ってきたレイチェルのその言葉に対して、紫音はそう言うとテントの入口をやや乱暴に閉めた。


 リズはストレッチの後、さっそくGCファミリアでリーゼロッテから教わった技を試してみる。


(周囲から、魔力を取り込むように……)


 周囲から魔力を取り込む事を意識しながら、GCファミリアに魔力を込めるといつもよりほんの少しだけ魔法の矢は太くなっている気がする。


(やっぱり、まだまだ微妙ッス……)


 リズはこれからも鍛錬を続けなければと思うのであった。

 軽い早朝練習を終えると、テントから腐女子三人組が昨日深夜まで語り合ったのか眠そうな感じで出てくる。


「おはようございます、シオンさん。すぐに朝ご飯の準備をしますね」

「エレナさん、わたしも手伝います」


 エレナが眠そうな感じで、朝食の準備を始めると、カリナはそう言いながら、エレナの手伝いを始める。


「私も手伝います」


 紫音が朝食を作っている二人に話しかけると、彼女から返事が返ってきた。


「シオンさんは、早朝練習で疲れているでしょうから、ゆっくりしていてください」

「でも……」


 食い下がる紫音に、エレナはこのような提案をしてくる。


「では、シオンさんはテントの片付けを始めてください」

「そうだね、作業は分担したほうがいいね」


 彼女の提案を受けた紫音は、そう言ってテントの片付けを始めた。

 エレナとカリナ以外のメンバーがテントを片付けていると、レイチェルが朝食を作っているカリナに近づいていく。


 空気を読んだエレナが場を外すと、二人は何かを話し合った後、笑顔で握手を交わした。


「カリナさんとレイチェルさんの、確執がとけたみたいだね」

「仲直りできたみたいで、よかったよ」


 その様子を見ていた紫音とアキは、二人が仲直りした事を喜んだ。


 朝食の後しばらくゆっくりしてから、キャンプ道具を馬車に積み込んでいると、クリスがやってきて二人に声をかける。


「シオン、アキ、ちょっといいかしら?」

「はい」


 ソフィーが「自分も一緒に!」と言い出すかと思ったが、黙々と作業をこなしているので何の問題もなく三人は離れた場所に移動して話を始める。


「アナタ達、トロール幹部に付けられた名前を聞いて、何か気づかないかしら?」


 クリスの問いかけにアキが答える。


「元の世界の有名な山の名前ですよね?」

「エベレスト、キリマンジャロ…、あっ、本当だ!」


 そのアキの答えを聞いた紫音は、ようやく気付く。


「トロールだけじゃないわ。名前付きの獣人には、それぞれ元の世界にちなんだ名前が付けられているわ。リザードならワニ、オークなら豚の品種のね」


「それって、獣人に名前をつけた者が私達と同じ、元の世界からの転生者ってことですか!?」


 そのクリスの説明を聞いた紫音は、驚いた表情でクリスに聞き返す。


「女神が名付けた可能性もあるけど、私達の世界にちなんだ名前を付ける必要は無い気がするし、その可能性が高いと私は思うわ」


「それはやっぱり……、クナーベン・リーベでしょうか?」

「彼女の可能性が一番高いと思うわ」


 紫音の続けての問いかけに、クリスはそう答えた。


(人間しかも私達と同じ転生者……。クナーベン・リーベは人間が嫌いというだけで、人類の敵である魔王軍にいる……。何があったら、そんな決断をすることになるんだろう……)


 紫音がそんな事を考えていると、アキが彼女に話しかけてくる。


「紫音ちゃんに、トロールのような山の名前を付けるとしたら、日和山(ひよりやま)だね」


日和山(ひよりやま)か~、かわいいかも……」


『ひより』という可愛らしい名前に、紫音は嬉しそうにするが直ぐにとあることに気付く。


日和山(ひよりやま)って、日本一低山じゃない! ヒンヌーってことか!! アキちゃんのバカーー!!」


 紫音は怒りの余りアキの腕をグーパンで殴ると、みんなのいる馬車まで走っていた。


「まさか、日和山(ひよりやま)を知っているとは……。侮れないな、紫音ちゃん……」


 殴られた腕を擦りながら、アキはそう呟く。





(※日和山(ひよりやま)は、宮城県仙台市宮城野区蒲生にある標高3mの山、「日本一低い山」である。)


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