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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第5章 冒険者の少女、異世界の為に頑張る。

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161話 ご先祖様、現る





 気付くとリズは暗闇に立っていた。


「…………」


 リズはジト目で少し考える。

 確か自分はミリアと同じテントで寝ていたはずだと。そして、導き出した答えは―


「これは夢ッスね」


 そう結論づけて、ここで寝ていればそのうち現実で目を覚ますだろうと、その場にしゃがんで体を横にしようとすると、頭の上を白い玉子のような物体が「ホーー」と鳴いて飛び過ぎていった。


「ミー!?」


 リズは慌てて飛び上がると、その玉子型梟を追いかける為に、飛んでいった方向に向かって走り出す。


「ミー!!」


 リズは追いかけながら何度も名前を呼んだが、玉子梟は一度も振り向かずに飛んでいく。

 暫く追いかけると、目の前にトンネルの出口のような光が見えてくる。


「ここは?」


 その光に入ると辺りは暗闇から真っ白な世界になり、10メートルぐらい先に女性が後ろ向きに立っていて、玉子梟はその肩にとまった。


 リズは肩にとまった梟の頭を撫でている女性に近づくと、女性は腰まである長い銀髪で身長は紫音より少し高いぐらいで、リズの接近に気付くと彼女の方に振り向くと胸も紫音より少し大きいくらいだ。


 振り向いたその女性を見たリズはその正体に驚く。


「リーゼ… ロッテ様?!」


 その姿はリズと同じジト目で銀髪だが、冷静な女性という印象を受ける。

 何より幼い頃から何度と無く見た肖像画通りの姿であった。


「やっときたわね、リズ……」


 先祖の彼女が突然目の前に現れて驚くリズに、リーゼロッテはそう話しかける。


「これは完璧夢ッスね……。さて、もう一眠りするッス」


 それに対して、冷静さを取り戻したリズはそう結論づけて眠ろうとする。


「寝るんじゃない」


 すると、リーゼロッテはそう言って、女性用コンバットブーツで寝転んでいるリズの体を踏みつけた。


「痛いッス! でも、痛いということは夢じゃないって事ッスか?!」

「そうね……、夢であって夢ではない……。そんなところね」


 リーゼロッテは、そう曖昧なことを言ってはぐらかす。


 リズは慌てて起き上がると、彼女に対して文句を浴びせる。


「それより、いきなりそんな靴で踏むなんて酷いッス。ご先祖様は、容赦ないッス……。


 リズの抗議に、リーゼロッテは表情を変えずにこう言った。


「せっかく、会いに来てあげたのに、目の前で眠られたら普通踏むでしょう?」

「普通は、踏まないッス!」


 その返答を聞いたリーゼロッテは、リズにこう言い放つ。


「甘やかされて、育ったのね……。そんなだから、魔王軍の幹部如きにミトゥルヴァを撃破されるのよ」


「!?」


 リズは自分の未熟さでミーを失ったと図星をつかれたが、自分のせいでミーが撃破された事を認めたくない彼女はリーゼロッテに反論する。


「私が未熟だから、ミーがやられたって言うッスか!?」


「そうよ。アナタがミトゥルヴァを、アイギスシャルウルを使いこなせていれば、こうはならなかったわ。私なら、逆に返り討ちにしてやったわ」


 リーゼロッテの返答にリズはこう言い返す。


「そっ、そんなの何とでも言えるッス!」


「私はアイギスシャルウルを使いこなして、魔王軍と魔王を倒したわ。後世に伝わっているはずだけど?」


 そのリズの反論にリーゼロッテは、生前における自分の実績を話して彼女の反論を封殺した。


「…………っ」


 そして、その思惑通りにリズはその実績の前に反論できない。

 そんな彼女に、リーゼロッテは更に辛辣な言葉を浴びせる。


「すべては、アナタの未熟さ故ってことね。まあ、先祖の女神武器を使って、楽に強くなろうとするからこうなるのよ」


「…………、うぇぇぇええん」


 リーゼロッテの容赦ない言葉に、リズは泣き出してしまう。

 幼い彼女には、自分の未熟さでミーを失った事を認めるのは、とても辛かった。


「うぇぇぇええん。どうして、ご先祖様はそんな酷いこと言うッスか~」


 リズは泣きながら、リーゼロッテに抗議する。


「慰めてアナタが強くなるなら、いくらでも慰めてあげるわ。でも、現実はそんなに甘くない。アナタが自分自身の弱さを認め、正面から向き合えば、自分に足りないモノ、それをどうすれば補えるか、そして、自分の強みをどう活かすかなどが見えてくるはずよ。そうすれば、自ずと強くなるために何をすればいいか解ってくるはず」


「ミー……、私が未熟なせいで……、ごめんッス……」


 リズはリーゼロッテの言葉を噛み締めながら、彼女は自分の未熟を認めリーゼロッテの肩に乗るミーに謝罪する。


 すると、ミーは「ホーー」と、嬉しそうに鳴いて光になって消えていく。


「ミー……。私、絶対強くなって、ミーを女神武器として向かえてみせるッス! それまで、暫くお別れッス」


 リズは光となって消えたミーを見送った後、涙を拭きながら決意表明を行う。それを見ていたリーゼロッテは、彼女に対して少し間を開けた後にこのような事を言ってきた。


「…………。盛り上がっている所悪いけど、さっきはあんな事を言ったけど、強くなる方法なんて人それぞれだから、自分で見つけなさいね」


「さっきのもっともらしい言葉は、何だったんスか!?」


 リーゼロッテの今までのことを台無しにするこの言葉、にリズが聞き返すと彼女は淡々と答える。


「あれはアナタの未熟さでミトゥルヴァを失った事に対して文句を言って、凹ましてやろうと思って正論を並べたらアナタが泣き出したので、流石に子供相手に大人気なかったと思って、それっぽいこと言って励ましただけよ」


「えーーー!! 今までのやり取りが全て、台無しッス!!」


(自分のご先祖だけど、この人のことは好きになれないッス)


 リズは心の中でそう思った。



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