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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する

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??話 4月1日ですね





 もうすぐ中学3年生になる春休みのある日、紫音が剣術の早朝稽古を終えて道場で休憩していると、アキが泣きながらやってくる。


「紫音ちゃ~ん!」

「どうしたの、アキちゃん!?」


 アキは紫音に抱きつくと、その慎ましやかな胸に顔を埋めて泣き続けた。

 そして、彼女は一頻り泣くと少し落ち着いたのか、何故泣いていたのか説明を始める。


「わたし……、わたし……、失恋したの~」

「えぇ!? そっ、そうなんだ……」


 紫音は親友の失恋の告白に、去年自分が失恋したときのことを思い出して、少し気持ちが落ち込んでしまったが、あの時自分を慰めてくれたこの幼馴染を今度は自分が慰めようと思った。


 しかし、剣術ばかりしてきた紫音にはどう慰めればいいのか解らず、どうしたものかと思っていると、彼女は一つの過去の事例を思い出して親友に質問する。


「アキちゃん……。その相手の人って、二次元じゃないよね?」


 以前、アキは好きなアニメのキャラが死んで、同じように泣いていたのを思い出したからだ。


「違うよ! 今回はちゃんと三次元の人だよ!」


 アキは強く否定するとその失恋相手の事を語りだす。


「その人と会ったのは三年前……。画面から聞こえてきた強くて格好いい、お兄様役のその素敵な声に私は一瞬にして恋に落ちたの。それから、私はその人の出ているアニメ・ゲームを追いかけるようになり、過去の作品も網羅した……。その日嫌な事があっても、その人の声を聞けば癒やされた……。それなのに、その人が今日の午前2時頃にSNSで結婚報告をしたんだよ~」


 アキはそこまで語るとまた泣き出してしまう。


「親友の男性声優さんとプライベートでも仲良くしていて、四六時中ゲームを一緒にしたり、出かけたりしているとか腐釣りしていたくせにー!!」


「えぇ……」


 紫音はそこまで聞いて、ようやく理解した。

 つまり、この親友は大好きな声優さんが結婚報告したことで、失恋だと言っているわけなのだと……


 とはいえ、幼馴染が泣くほど悲しんでいるのだから、何とか慰めの言葉をかけてみる。


「別のいい人が現れるよ……。また、素敵な声の声優さんに会えるよ……」


「もう、三次元の男の人はいいよ……。それより……、道着姿の紫音ちゃんって胸も小さくて目立たないから、中性的な格好いい女の子顔の美少年に見えるね……」


「えっ!? 何を言ってるの、アキちゃん……」


「紫音ちゃん、私を抱きしめながら”お前には僕がいるだろう”って、男の子っぽい声で言ってみて!」


「どうして、私がそんな事を!?」


「紫音ちゃんが去年巨乳好き先輩に振られた時に、慰めてあげたじゃない! 今度は私を慰めてよ!」


「うぅ……、それはそうだけど……」


 アキは去年自分が失恋した時に、昼はゲームで気分転換を勧めてくれて、夜はお泊りで遅くまで一緒に居て私のことを慰めてくれた。


 紫音は覚悟を決めて


「わかったよ、アキちゃん……」


 そう言うと、アキを抱きしめて


「お前には……、僕がいるだろう……」

「紫音ちゃん……」


 アキはそう言って、再び紫音の胸に顔を埋めると彼女の腰に手を回してくる。


(えっ……、この反応って何!?)


 紫音がアキの反応に戸惑っていると、このような事を言ってきた。


「わたし、もう紫音ちゃんでいいかも……。正直に言うと以前から、紫音ちゃんのこと……アリだと思っていたんだ……、紫音ちゃんは私のことどう思ってるの?」


 アキは紫音の胸に顔を埋めたまま質問してくる。

 紫音は幼馴染の突然のカミングアウトに、激しく混乱してしまう。


「アキちゃんの気持ちは嬉しいけど、私はノンケだから! 白馬に乗った王子様希望だから!」


 そして、親友の告白を断る。

 すると、アキは紫音の胸から顔を離すと意地悪な笑顔でこう言ってきた。


「紫音ちゃん嘘だよ、嘘。今日は4月1日エイプリルフール! 紫音ちゃんは、大事な親友だけど私は百合萌じゃないからね~」


 紫音はあっけにとられていたが、すぐに冷静を取り戻す。


「もう、酷いよアキちゃん。私、本気で心配したんだから! じゃあ、大好きな声優さんのことも?」


 そして、アキに最初から嘘だったのか質問する。


「それはホントだよ。紫音ちゃんに慰めてもらっている内に今日は4月1日だと思いだして、”よし、紫音ちゃんを騙してやろう”と思ったの。ごめんね、紫音ちゃん。それとありがとう……」


 アキが最後に謝ると、笑顔で紫音も首を横に振って怒ってないことを示す。


「でも、冷静に考えればアレもエイプリルフールネタって可能性もあるのか……」


 冷静になったアキは、そう推察して言葉にする。


「そうかもしれないね」


 紫音もその推察に相槌を打つ。

 アキの予想通りその夜、彼女からあの結婚報告はエイプリルフールネタだったとSNSで発表されたと報告が入り、紫音は親友が悲しまなくてよかったと安堵した。



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