120話 激闘は続く……
「ゴーレム達、倍返しだあぁ!」
アキは、ゴーレム達にリーベのロックゴーレムと2対1で戦わせ残り2体を撃破させるが、彼女のゴーレム達もそれなりのダメージを受ける。
それから、そのままトロールの側面に回り込んで、攻撃するように命令を出す。
その頃、紫音はアフラを安全な所まで連れてきていた。
「さあ、アフラちゃん! 高級オーラ回復薬だよ、飲んで! 飲んで!」
そして、ロックゴーレムとの戦いでオーラを使い切ったアフラの口に、先程のお返しとばかりに強引に薬瓶をねじ込む。
「あうー……ゴボゴボ、ゴクゴクゴク」
アフラは最初むせ返りながら飲んでいたが、すぐさま口に放り込まれたオーラ回復薬を勢いよく飲んでいく。
(すごいな……、アフラちゃん)
紫音はアフラの飲みっぷりに驚嘆する。
紫音は二本目のオーラ回復薬を飲んでいるアフラの横で、体力を回復させていると前線から傷ついた者が回復役のいる場所まで、運ばれていくのが多くなっていることに気づく。
それは、回復をしているエレナも感じていた。
(負傷者が増えてきました……。前線は大丈夫でしょうか……)
彼女はそう不安に思いながら、今自分が出来る回復という役目を一生懸命に果たす。
「前線から傷ついて運ばれてくる人が増えたね……。それだけ、前線が押されているんだ……。アフラちゃん、私そろそろ前線に戻るよ」
「うん。私もオーラを回復させたら直ぐに前線に行くよ!」
「でも、アフラちゃん右腕が……」
アフラの右腕は、力なくだらりと垂れ下がっている。
「大丈夫だよ、右腕は動かないけど左腕と両足は動くから!」
「私はもう行くから、アフラちゃんは無理しないようにね。クリスさんやソフィーちゃんもきっとそう言うと思うから」
紫音はアフラに無理をしないように釘を刺すと前線に向かっていった。
ユーウェインは前線を立て直すために、トロールの数をさらに減らすためにリディアとレイチェルに指示を出す。
「リディア! レイチェル! 女神武器の特殊能力を使って更に数を減らしてくれ!」
ユーウェインの命令を受けたリディアは、リズにも自分に続いて特殊能力を使うように指示を出した。
「リズ、アナタも私に続いて特殊能力を使って、トロールに攻撃しなさい!」
「嫌ッス! アレを使うと体に負荷がかかって、翌日体中筋肉痛になるッス!」
「じゃあ、能力発動中は体を動かさなければいいじゃない」
リディアのその言葉を聞いたリズは”なるほど”と思ったが、それで本当に大丈夫なのかとすぐに考え直したが、フィオナのこともあるので姉の意見に乗ることにする。
リディアが女神武器・ガーンサルンヴァを構え「女神の祝福を我に与え給え!」と祈りを捧げてからオーラを弓に注ぎ込むと、弓のグリップの上辺りに埋め込まれている女神の宝玉が輝きはじめオーラの矢が現れる。
リディアはそのオーラの矢を番えたまま、弓を引くとオーラの矢は更にオーラを溜めて太くなり輝きを増す。
「フェイタルアロー!!」
リディアは弓を引いたまま、トロールが出来るだけ複数体重なるように位置取りすると輝くオーラの矢を放つ。
オーラの矢は光り輝く光線となって、一直線にトロール目掛けて飛んでいき、一体目を貫通して後ろにいるトロールに命中し、更に貫通して3体目を貫いて四体目に命中したところで消滅する。
リディアはそれを三回繰り返して12体にダメージを与える。
リズも特殊能力を使用するために、糖分補給するとミーに指示を出す。
「女神の祝福を我に与え給えッス!」
祈りを捧げてから、ミーに魔力を送り込むとミーのお腹の装甲が開き光輝く女神の宝玉が現れる。
「ホーー!」
ミーが鳴くと、リズに魔力が送られてきて魔力とMPブースト、身体強化が行われるとミーの目も丸い目から、つり上がった逆三角形の様な形で赤い色に変化した。
「ミー! 近くにいるトロールの頭を片っ端から攻撃ッス!」
「ホーー!」
GCファミリアから放たれた魔法の矢は、特殊能力が発動して魔力ブーストされているため通常時よりも2倍程の大きさになっている。
リズはその場から一歩も動かずに、ミーに攻撃命令を出す。
時々飛んでくる敵の放った矢は、GSファミリアで防いでいる。
「ホーー」
攻撃を続けていると、ミーから特殊能力が切れる事が伝えられた。
「ミー、ギリギリまで撃ち続けるッス! ここなら、力尽きて動けなくなっても問題にはならないッス!」
「ホーー!」
ミーはリズの指示通り、MPが尽きるまでトロールにGCファミリアで射撃を続ける。
MPを使い切ったミーはその場フラフラと地面に着陸し、リズも力尽きてその場に尻餅をついてしまう。
「これは、流石に……、やりすぎたッス……」
リズが座り込んでいると、リディアが彼女とミ―を抱えて安全な後方まで連れて行ってくれた。
「お姉ちゃんも、疲れているんじゃないッスか?」
自分を運んでくれている姉にそう問いかけたリズに、リディアはこう答える。
「アナタと違って、私は鍛え方が違うから。それに、あんないつ矢が飛んでくるか解らない所に、動けないアナタを置いておく訳にはいかないでしょう?」
リズはそんな姉の自分を想う優しさに、心の中で感謝した。
「女神の祝福を我に与え給え!」
レイチェルはゲイパラシュを構えてから祈りを捧げると、オーラをゲイパラシュに注ぎ込むと刃と柄の繋ぎ目部分にある宝玉が輝き始める。
レイチェルはリズの攻撃で動きが鈍くなっているトロールに突進すると、オーラステップで跳躍力を上げてシャンプしながら体を捻って、隙が大きくなるが強力な一撃をトロールの頭に叩き込む。
「アクセルローリングスマッシュ!」
本来ならこの技は隙が大きすぎて防がれるもしくは回避されるか、隙を疲れてカウンターを受けてしまうが、レイチェルの戦闘技術の高さとリズの攻撃を受けて動きが鈍くなってしまっているトロールには対応できなかった。
体の捻りと槍斧の重さ、更にオーラ噴出による振りの加速によりトロールの頭から胸にかけて真っ二つにする。
レイチェルはその後も、リズやリディアがダメージを与えたトロールに大技を叩き込んで、15体ほど倒した所で特殊能力が切れて前線を後にした。
「レイチェルの奴、お姫様の護衛で腕が鈍っていたみたいだが、オーク戦、リザード戦をこなして本来の戦闘力を取り戻したみたいだな」
レイチェルの戦いを見ていたタイロンがそう彼女の戦闘力を評する。
(早く戦いを終わらせて、またミレーヌ様の部屋でのシオン君×アリシア様のイチャコラを見るのよ!!!)
当のレイチェルはというと、高級オーラ回復薬を飲みながら煩悩全開であった。
レイチェルが後方へ下って、暫くしてからアキのゴーレム達がトロールを側面から攻撃し始める。
リズ達の特殊能力による攻撃とアキのゴーレム達の前線参加により、人類側は前線を立て直すことが出来た。
しかし、そこに遂に四天王二人が前線に近づいて来る。
四天王二人は部下が人類に60体まで減らされたのにも関わらず、急ぎもせずには威風堂々と歩いて近づいてきており、強者の風格を漂わせていた。
まるで、自分達がいればその程度の戦況など、すぐにひっくり返せるといった感じであった。
確かに、四天王二人は一般のトロールよりも更に大きく屈強で、凄まじい威圧感を放っており、そのちょっとした建物のような巨体は攻撃しても通用しないのではないかと思わせる。
現に人類側の幾人かは、その圧力に負けてたじろいでしまう。
トロールとの戦いは最終局面に突入した。




