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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する

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115話 トロール軍侵軍に備えよ

少し修正しました






 翌日、紫音達が朝食を食べていると、ついにトロールの旗が24本になったとミレーヌの元に連絡が入ってきた。


「すぐに準備しないと!」


 紫音はその報告を受けると、朝食を切り上げて出発の準備をしようと席を立ちあがる。

 すると、ミレーヌがそんな彼女に落ち着いた様子で、声を掛けてきた。


「シオン君、そう焦る必要はない。トロールは進軍速度が遅いから、要塞到着までには半日以上はかかるだろう。だから、まずは席について朝食の続きを食べるといい」


「そうなんですか……。では、再びいただきます」


 紫音は席に座り直すと、再び朝食を食べ始める。

 朝食を済ませると、紫音達は出発の準備を整えミレーヌとフィオナに出発前の挨拶をすることにした。


「では、行っています!」


「皆の武運を祈る。ミリアちゃんは無理しなくていいからね。危なくなったら直ぐに逃げてもいいからね」


 ミレーヌは紫音達の― 特に可愛い姪の無事を願う。


「みなさん、無理はしないようにしてください。みなさんに女神フェミニース様の加護がありますように」


 フィオナは戦いに向かう紫音達の無事を女神に祈る。

 紫音達は要塞行きの定期馬車に乗って要塞へ向かう。

 要塞に到着した紫音達は要塞内を見渡すと、到着している冒険者の数はまだ少なかった。


「他の冒険者さん、まだあまりいないね」

「まあ、トロールの行軍は遅いから、みんなまだ街でゆっくりしているのよ」


 紫音の感想にソフィーはそう答える。


「今回はちゃんと遅刻せずに来てくれたわね」


 そう声を掛けてきたのはリディアであった。

 どうやら、前回の戦いで遅刻したので今回も危惧されていたようだ。


「シオンさんは、やればできる子なんッス」


 リズは姉に自慢気にそう発言するが、紫音はその内容に複雑な気持ちになる。


「リディアさん、アキちゃんはどこですか?」


「アキちゃん? ああ、エスリンの知り合いの娘のことね。その娘ならエスリンと一緒に外で、ゴーレムで最終の作業をしているわよ」


「ありがとうございます、外に行ってみます」


 紫音達はリディアと分かれると城壁の外に向かう。

 城壁の外に出るとバイカーのような格好をしたアキが、猫耳の付いたゴーレム四体を使役していた。


 ゴーレム達は、先の戦いからそのままになっている水堀に浮ぶ、先の尖った丸太を引き揚げている。


「アキちゃん、何をしているの?」


 紫音に声を掛けられたアキは振り返ると、少しキザな感じでこう答えた。


「チッチッチッ、紫音ちゃん、今の私は波乱万子だぜぇ。身バレしたくないからね」

「そうなんだ。では、バンコちゃん、何をしていたの?」


 その紫音の質問にアキの横にいたエスリンが答える。


「それについては私が説明します。ところで、今回は随分早く来てくれたのね」

「はい……」


 どうやら、エスリンも危惧していたらしい。紫音はそう答えることしか出来なかった……。

 そんなエスリンが、質問の説明を始めた。


「丸太をこのまま使うとトロールが投げ返してくるかもしれないので、投擲に使う丸太をこのように水に浸けていたのです。こうすることによって、水属性が弱点であるトロールは触りたがらないかもという推論からなの。堀の水がそのままなのも、こうしておけばトロールが近付かないかもしれないからよ」


「全て推論からなんですね……」

「まあ、今まで水属性で対抗しても、水そのもので対抗しようなんてしなかったから」


 紫音の質問にエスリンはそう答える。

 ”やれることは、やっておこうっておうこう”ということのようだ。


「それにしても、今回はゴーレムが4体もいるんだね」


「敵は数が多いからね。こちらもこの大きさで、同時操作できる最大数の4体体勢で行こうと思ってね」


 質問を終えた紫音は、作業するアキの邪魔をこれ以上してはいけないと思って、「じゃあ、またあとでね」と言うとその場を後にする。


 紫音達がアキの側を離れ、要塞内に戻ってくると”月影”のメンバーも要塞に到着していた。


「ちゃんと、遅刻せずに来ていたみたいね。居ないからまた遅れてくるのかと、ヒヤヒヤしたわ」


 クリスは紫音に会うなり、そう話しかけてくる。

 紫音は要塞の外で、アキに会っていたこと、彼女が行っていた作業の話をクリスにした。


「なるほど、備え有れば何とやらだな」


 側で話を聞いていたスギハラがそう頷くと


「今回も来てくれたことに感謝する」


 ユーウェインがそう言って近寄ってくる。


「それより、今回集まりが悪くないか? まだ時間があるからかもしれないが……」


「どうやら、例の25本の噂で街を離れてしまっている者たちが、それなりにいるようだ。それに、前回のリザード戦で精神的ダメージから復帰を果たせていない者も、まだいるみたいだ」


 スギハラの問いかけに、ユーウェインが浮かない顔で答えた。


「前回の戦いは俺を含め、かなり負傷者が出たからな……」


「まあ、今回はバンコ君のゴーレム部隊もいるし、前回の戦いで得た俺達の女神武器の特殊能力もある。油断さえしなければ、負けはしないさ」


 ユーウェインとスギハラの会話が終わると、続けて皆で戦いの作戦の打ち合わせを始める。


「少し早いが、昼食を取っておいてくれ。斥候の情報だとあと2時間ぐらいでトロールがつくようだ」


 作戦会議を終えた紫音達は、ユーウェインに促され昼食をとると、休憩を兼ねながら装備の最終点検を行なう。


 装備の点検を終えたところで、ふと辺りを見渡すと冒険者の数は増えていたが、前回のリザード戦程ではなかった。


(前回より少ないな……)


 紫音が少し不安に思っていると、戦い前のユーウェインの参加者鼓舞の演説が始まる。

 今回は趣向を変えて、場所が要塞の外になった。


 その意図は、アキの心強いゴーレム部隊の勇姿を見せて、参加者の士気を上げることにあったが、頭に猫耳のついたゴーレム達を見て士気が上がるかどうかは解らない……


 ユーウェインの戦いの前の激励が始まる。


「今日この場にいる、勇敢なる兵士と多勢の有志の冒険者諸君! 共に命をかけて戦うことに感謝する。この戦いにはこの国の……いや、人類の未来が懸かっている! トロールは今まで体験したことのない240体で来る。その為、戦いはいつもより厳しいものになるだろう。だが、安心するするといい。今回我々にはゴーレム部隊と、その使役者という心強い助っ人がいる!」


 ユーウェインが、自分の後ろに並んでいるゴーレム達を指差す。

 すると、ゴーレム達が後ろに振り向く。

 背中の丸太入れには”オータム801漫画 新刊発売中”と書かれていた。

 それを見た参加者達は、ザワザワと騒ぎはじめ声が上がる。


「何だ、あれ? 漫画の広告か?」

「キャー、オータム801の新刊よ! 戦いが終わったらチェックしないと!」

「私この戦いが終わったら、絶対買いに行くわ!」


 特に女性参加者からの声が多かった。


「アキちゃん、なんてことを!」


 紫音がその光景を見て驚いていると


「さすが、オータム先生! この大舞台であんな大胆に、自分の新刊の広告を出してくるなんて! 私達にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! 憧れます!」


 エレナがそう言って、アキを大いに称えた。


「でも、真似はしたくないッスけどね」


 リズが冷めたジト目でそう突っ込む。


(確かにあの心の強さは、見習うべきかも……)


 紫音がそう思っていると、ユーウェインが演説を再開させた。


「諸君静粛に! ゴーレムがいるとは言え、油断は禁物である。諸君一人一人が奮闘して、初めて勝利を得られるのである!」


 ユーウェインは、場に再び緊張感を取り戻して演説を続ける。


「君達と生きて勝利の喜びを分かち合うことを期待している、以上!」


 ユーウェインの激励が終わると、そこに居る者たちは、これから行われるトロールとの大人数戦に挑むために自らを奮い立たせる雄叫びを上げる!


 あと、戦いが終わった後の新刊のために……

 演説を終えたユーウェインは、近くにいた四騎将にこう尋ねた。


「ところで、あのオータム801氏の漫画ってどんなものなんだ? バトル漫画ならチェックしてみるか……」


 ユーウェインのこの質問に、リディアとエスリンは気まずそうに目を逸らしている。

 どうやら、内容を知っているようだ。


「さあ、自分は漫画には疎いもんで……。エドガー、お前知っているか?」


「いえ、私も漫画は興味ないので、存じませんね。エスリン君は、まだ若いから漫画に詳しいのでは?」


 タイロンはそう答えて、エドガーに質問を振るが彼も疎いようで、エスリンに話をふる。


「隊長には、向かない漫画だと思います……。少なくとも、バトル漫画ではないです」


 エスリンが勇気を振り絞ってそう答えた。


「そうか……。では、四騎将! 今回も頼むぞ!」

「はっ!!」


 四騎将は声を揃えて返事をする。


「シオン・アマ― 」


 ソフィーは紫音を呼びかけようとして、そこまで言いかけてこう言い直した。


「シオン先輩、トロールが来るまでどうするのよ?」

「ついにソフィーちゃんが、私にデレてくれた!?」


 紫音は、その言い直した自分の呼び方に驚きながらも喜んだが、すぐさまとんでもないことに気付く。


「アレ? でもこれって、もしかして素直じゃない娘が激戦の前に急に素直になるのは、私かソフィーちゃんのどちらかに、危険なフラグが立ってしまったのでは?!」


 紫音はこの後のトロール戦に一抹の不安を感じた……



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