107.5話 サプライズ成功なるか?
「先生! シオンさんにはこの戦利品の運搬は荷が重いと思うので、私が部屋まで持っていきます。後で行くので、先に客間のお宝に向かってください」
エレナはそう言って、戦利品を手に階段を登って部屋に向かう。
「では、紫音氏。客間に先に向かおうか」
「うん」
(しかし、何故アキちゃんはさっきから武士みたいな言葉使いなんだろう……)
紫音はそう思いながら、アキをフィオナのいる客間に連れて行く。
「この部屋だよ、アキちゃん」
「この中にお宝が……」
アキが期待に胸を膨らませて部屋の扉を開ける。
「アキ~~! 会いに来ましたよ~!」
すると、そう言って部屋の中に居たフィオナが、アキに抱きついてきた。
「フィオナ様!?」
フィオナに抱きつかれたアキは驚いて目を白黒させている。
(感動の再会やで~)
紫音がそう思いながら、二人の感動の再会を見ているとフィオナに抱きつかれたアキが、彼女に真顔でこう尋ねてきた。
「ところで、紫音ちゃん。お宝BL本は?」
「え!? このサプライズのための嘘だけど……。というか、この状況で普通察するよね?!!」
紫音はアキのブレない質問に驚きながら答えた。
騙されたことに少し不満顔のアキに、紫音は戸惑いながら説明を続ける。
「でも、すべてが嘘じゃないよ? フィオナ様というアキちゃんにとって、ある意味”お宝”とも言える人が居たわけだし……」
紫音のその問いにアキが「うん。そうだね」と答えるのを、ウキウキの笑顔でフィオナは待っていた。
「………………」
だが、アキは少し間を置いた後―
「あ、うん……。そうだね……」
落胆した感じでこう答えた。
「アキ、なんですか今の間は!? しかも、答え方も少しがっかりしている感じではないですか!?」
フィオナは、思っていたのと違う感じのアキの答えにツッコミを入れる。
「だって、フィオナ様。二ヶ月前に会ったばかりじゃないですか……」
(えっ……。二ヶ月前にも会っていたの!? いや、最近ずっと会ってないみたいな感じだったじゃないですか?!)
紫音は心の中で、フィオナに突っ込む。
「でも、いつもはそろそろ会いに来てくれるのに今回は来ないので、ミレーヌからアキがここにいると聞いて、私から会いに来たのです」
「ナタリーさんがよく許しましたね?」
アキの質問にフィオナはしたり顔でこう答える。
「フフン~。もちろん、あの子に言っても”寝ぼけたこと言わないでください、このポンコツ大主教”って小言を言われるだけだから、書き置きを残して黙って来ましたよ~」
(それって、帰った後に一番怒られるやり方では?)
紫音が再び心の中で突っ込むと、そのフィオナは来訪の理由を語り始めた。
「それに、今回アキに会いに来たのは、女神様からアナタに会うようにとの神託があったからです」
フィオナのその言葉を聞いた紫音は、彼女にこう質問する。
「それだったら、ナタリーさんって人にそう言えば、許して貰えたのではないですか?」
その紫音の質問にフィオナは首を横に振ると、ナタリーの性格を偏見に満ちた言葉で語り始めた。
「シオンさん。アナタは知らないでしょうが、ナタリーは私がそう言っても“アキに会いたからって、そんなわかり易い嘘を言わないでください。このおっとり聖女”って、一蹴してしまう頭の固い子なのです」
フィオナはナタリーに小言を言われすぎて、幾らか被害妄想が入っているのは明らかであった。フィオナが9割悪いのだが……
「それは、酷いですね。しかも、フィオナ様に対して言い方も酷い!」
紫音はナタリーという人が、アキに以前聞いた良い人ではなく意地悪な人だと思えてきた。
その紫音の感想に、アキはナタリーの弁護をする。
「それは違うよ、紫音ちゃん。フィオナ様はミレーヌ様のように、できる大人の女性に見えるけど、少しポンコツな所がある― いや、ほぼポンコツな人だから」
「がーーん! ポンコツ……」
フィオナはアキの言葉にショックを受けた。
そんな彼女を尻目に、アキは話を続ける。
「だから、フィオナ様とナタリーさんの意見なら90%ナタリーさんの意見のほうが正しいと思う。それに、ナタリーさんは理屈さえ通っていればちゃんと理解してくれる人だから、今回も正直に言えば許してくれたと思うよ」
「そうなんだ」
「ポンコツ…… 」
アキの説明にナタリーへの印象を改める紫音と、ショックを引きずる聖女様。
「でも、フィオナ様。わざわざ会いに来てくれてありがとうございます。元気そうで良かったです……」
ショックを受けているフィオナに、そう感謝の言葉述べるアキ。
何だかんだ言ったが、彼女はフィオナに会えて嬉しかったのだ。
「アキが元気そうで、私も嬉しいわ」
するとフィオナも優しい笑顔で返した。
だが、この聖女様が次回やらすことに― いや、既にやらかしていることに気付いているものは、まだ一人もいない。
さ~て、次回の予告は
「リズッス。トロールの脅威が迫っているというのに、お姉さんズは呑気にしていて困ったものッス。
次回
神託が無かった真相
フィオナ、ミレーヌにアイアンクローされる
みんなで頑張ってトロールを倒そう会議
の3本ッス。
それでは、じゃんけんぽんッス」




