表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/383

95.5話 ある意味、死闘はまだ続く







 アキは紫音のフォローに入ることにした。


「エレナさん、紫音ちゃんはこっちの人間じゃなくて耐性がないから、きっと話を聞いていて恥ずかしくなったんだよ」


「なるほど……。確かに私としたことが、興奮のあまり配慮が足りなかったですね。すみません、シオンさん」


 エレナは自分の配慮のなさを紫音に謝罪する。


「いえ、こちらこそすみません。急に発狂しちゃって……」


 そして、少し冷静さを取り戻した紫音もエレナに謝罪した。


「ちょっと、五月蝿いんだけど!!」


 そこに先程の紫音の絶叫を聞いた隣の部屋のソフィーが、扉を開けて注意をしながら入ってくる。


「ごめんね、ソフィーちゃん」

「わかったなら、静かにしてよね。ところで、三人で何をしていたのよ?」


 紫音の謝罪を聞いたソフィーは、年上三人が揃って何をしているのかが気になって、質問してきた。


「私の新作BL漫画の感想を、エレナさんに聞いていたんだよ」

「ソフィーちゃんも気になるんですか? 一緒にどうですか?」


 アキの説明の後に、同士を増やそうとエレナが目を輝かせて、布教しようとしてくる。


「気にならないわよ! とにかく、静かにしてよね!」


 ソフィーはそう言うと、巻き込まれる前にさっさと自分の部屋に戻っていった。


(BLの感想ね… アレ? じゃあ、どうして、シオン=アマカワの部屋で?)


 部屋に戻ったソフィーは、今になってその疑問に気づくが、お人好しの紫音が巻き込まれているのだろうと結論づけてベッドに潜り込む。


 ソフィーの乱入後、エレナは読んだ感想を語り、その内に主人公クオンの性格について言及しだした。


「それにしても、その後アキトが行方不明になった時に、その悲しみから逃れるためにアキトの記憶を封じて忘れてしまうなんて、クオンは心が弱すぎます、酷いと思います!」


(はぅ!)


 紫音はエレナの言葉が、まるで自分に言っているように感じ胸に突き刺さる。


「確かにねぇ~。大事な幼馴染のことを自分の心の平穏の為に忘れてしまうなんて、確かにちょっと酷いよね~。紫音ちゃんはどう思う?」


 アキはニヤニヤしながら、意地悪にそう紫音に質問してきた。


「そっ、そうかな~。私はむしろクオンのその心の弱い部分からくる……、完璧ではない主人公像に人間味を感じて好感が持てるね。それに……、クオンも辛かったと思うよ。今まで一緒に過ごしてきた親友が急に居なくなって……、その悲しみに耐えきれずに、忘れてしまうことにしたんだよ……、クオンにとっても苦渋の決断だったと思うよ。なので、クオンを攻めるのは可愛そうだと私は思うなぁ~」


 紫音はクオンに理解を示すように見せて、自己弁護とも取れる意見を何とか考え出しながら披露する。


「シオンさんは、クオンの心の弱さを肯定するんですね……。私はやっぱりクオンのこの心の弱さは駄目だと思います! きっと、いざ実戦という時に無理です、私には出来ませんとか言い出すに違いありません!」


(あぅ!)


 紫音はまるで自分とフェミニースとの天界でのやり取りを、エレナが見ていたのではないかと思うぐらいの推察力に内心驚きながら、なんとかクオンと自分を弁護した。


「でっ、でも……、自分の心の弱さを知るからこそ、これから強くなろうとするだろうし……、心も成長していくと思うからこれからの成長に期待できるよね!」


 この紫音の意見にエレナは納得していないようで、このように反論してくる。


「そうでしょうか……。きっとこの性格だと、実戦までに2ヶ月掛かったり、戦闘中に何かあったらすぐにテンパったり、戦闘での精神疲労で戦闘継続できなくなったり……」


 その内容はクオンのこれから起こるであろうことを推測してダメ出しであった。


 しかし、そのあくまでクオンに対して行われた推測が、紫音が今まで陥った出来事を次々と言い当てていて、そのたびに心の中でダメージを負う。


 ここでアキが、精神的ダメージを与えられている親友の為に話題を変える。


「まあまあ、エレナさん。しお……クオンの性格は置いておいて、他に気になる所はあるかな? 例えば、登場人物に何か気付いた事があるとか?」


 アキは今回の真の目的である<クオンが紫音だと気づくか?>ということを、それとなく質問してみることにした。


 質問に対して、エレナは目を輝かせてこう答える。


「そうですね……、他は特にはありません。強いて言えば、続きが気になります!」

 どうやら、クオンが紫音だとはいうことは、少なくともエレナは気付いていないようである。


「続きも期待していてね。クオンがあらゆる属性のイケメン達と、フフ腐腐腐……」

「それは、すごく楽しみです! フフ腐腐腐……」


 二人は飢えた狼のような目でそう笑い合っていた。


「この後の展開は、新刊が出た時のお楽しみってことで。こんな夜に、わざわざありがとうねエレナさん」


「いえ、こちらこそ貴重な先生の生のネームを見させて貰えて感激でした。新作を楽しみにしています! それでは、おやすみなさい」


 そう言ってエレナは紫音の部屋から出ていく。

 エレナが出ていった後、アキは紫音にこう語りかける。


「ね? 気づかなかったでしょう。こっちの世界で、紫音ちゃんと一番長く一緒にいるエレナさんが気づかないんだから大丈夫だよ」


「それもそうだね、少し安心したよ」


 アキは敢えて言わなかった。

 今回エレナに見せた部分は、紫音が彼女と出会う前の話であることを……


(紫音ちゃん、そのうちお返しするから……)


 アキは心の中で、親友にそう思いながら彼女の部屋を去った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ