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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する

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88話 主人公、何とか到着






 プランBとは味方が不利な状況になっていた場合、ラッキー7号を敵陣地に特攻させ、自分達は直前に紫音の脚力を活かして、アキを抱えてジャンプして脱出する作戦である。


 震電改は垂直尾翼がコクピットの真後ろにない為、ジャンプして脱出してもぶつかることはない。


 紫音はアキの腰に手を回すと、片膝を突きいつでもジャンプして脱出できるようにする。


「じゃあ、いくよ紫音ちゃん!」

「うん!」


 アキは魔法スクロールに魔力を込めて、ジェットの出力を上げさらに加速させるとこう叫んだ。


「人類の未来への水先案内人は、この山川亜季が引き受けた!!」


 ラッキー7号は時速300kmに加速していく。


「今だよ、紫音ちゃん!」


 アキの合図と同時に紫音は、彼女の腰を抱えたまま力一杯ジャンプする。

 二人はうまく脱出することができ、ラッキー7号はヒュドラ目掛けて飛んでいく。


「なんだ、アレは!?」

「化け物か!?」

「ヒュドラに突っ込んでいくぞ!」


 兵士たちは突然現れた、轟音を響かせながら超高速で飛ぶ物体に驚く。


「ラッキー7号、これは死ではない……。これは人類が勝利するための……」

 アキは空中を落下しながらそう言って、ラッキー7号に最後の命令をする。


 ラッキー7号は命令どおり突っ込んで、ヒュドラに見事に命中し首を2本吹き飛ばして、更に胴体部分にもダメージを与えてくれた。


 それを見届けたアキはラッキー7号に敬礼する。

 そして、ケットさんも「ナー(哀)」と鳴いて、左前脚で敬礼した。


「紫音ちゃん、いつまで私と密着しているの!? 早く、離れてくれないとパラシュートが開けない!」


「え!? あ、えーと!」


 紫音は落下の焦りでパニックを起こして、アキの腰を持って密着したままなので、その紫音が邪魔でパラシュートが開けないまま落下している。


「パラシュート! パラシュート!」

「パラシュートって、どう使うの!?」


 紫音は完全にパニックに陥っていた……


「ヒモ! ヒモ!」


 アキも焦って説明がうまくできなくなっていた。


「ヒモ! ヒモってどれだっけ!?」

「あ~~~~」


 二人はそのままパラシュートを、展開することができずに落下した……



 ―が、運良く要塞前の水堀に落下して九死に一生を得る。

 ユーウェインが水堀を魔法で凍らせなかった判断が、紫音達の命を救う結果となった。


「ぶはーー」


 二人は水堀から這い上がると、丁度要塞近くで回復していたリズとミリアが近寄ってくる。


「シオンさん!」


 すっかりびしょ濡れになった紫音とアキは、二人に連れられ同じくウォータブレスでびしょ濡れになった負傷者を温めるために、急遽焚かれている焚き火で体を乾かすことにした。


 体を乾かしながらアキは薬品支給係から、高級魔法回復薬を貰い魔力を回復している。

 ヒュドラがまだまだ元気に暴れていて、おそらく自分の出番が来ると思ったからだ。


「話には聞いていたけど、この世界のヒュドラは毒を吐かないんだね……」

「そうみたいだね。さっきから水ばかり吐いているね」


 高級魔法回復薬を飲みながら、ヒュドラを観察していたアキが紫音に二人が話をしていると、リズが質問してくる。


「シオンさん、そのお姉さんが会いに行っていた人ッスか?」

「うん、そうだよ。私の親友、アキ・ヤマカワちゃんだよ」


「アキ・ヤマカワって言います、よろしくね。二人の事は紫音ちゃんから聞いているよ。ジト目の銀髪ちゃんがリズちゃんで、大人しそうな魔女っ子がミリアちゃんだね」


 そう言いながら、アキは自己紹介しながら二人と握手した。

 すると、リズはジト目でアキを見てこのように言ってくる。


「遅れてまで会いに行って連れてきた人なのに、あまり強そうには見えない人ッスね。シオンさんも見た目は強そうには見えない方ッスけど、その人はどうなんッスか?」


「紫音ちゃん、せっかくヒュドラが毒を吐かないのに、かわりにこのジト目ちゃんが毒を吐いてきたよ?」


 リズの言葉を聞いたアキが、そのように紫音に毒を吐いてきた。

 今の不利な戦況は紫音のせいではないが、彼女が始めからいてくれればという思いで、リズはついにそのような事を言ってしまう。


「チッチッチッ。ジト目ちゃん、人は見た目で判断してはいけないよ?」


 アキは人差し指を立てて、左右に振りながらリズにそう答えた。


 そして、エメトロッドを掲げて魔力を込めるとゴーレム召喚を始める。

 アキの前に巨大な魔法陣が現れ、アキの魔力が注がれていく。



「じゃあ、前線に行ってくるね!」


 紫音は体をある程度乾かすとこう言って、紫音は前線に向かって走り出し、その後を追ってリズとミリアも走っていった。


「時間稼ぎよろしくね~」


 走り去っていく紫音達に、アキは後ろからそう声をかける。

 前線に走っている紫音の目に、倒れているスギハラを回復するエレナと、その傍らに心配そうにしているクリスを発見し近づいて行く。


「エレナさん、クリスさん。スギハラさんは大丈夫ですか?」


 紫音のその問いかけに、エレナは彼女の到着に安堵してこう答えた。


「シオンさん、来てくれたのですね! スギハラさんはもう大丈夫です」

「やっと来たのね、シオン。それで、オータム801氏とは会えたの?」


「はい、あそこでロッドを掲げているのがそうです」


 そして、アキがゴーレム召喚をしている方を指差して紹介する。


「そう、戦力として連れて来られたのね」

「あっ、あの人がオータム801先生!!」


 大ファンの先生が近くにいると知って、興奮するエレナ。


「では、私はこれから前線に行きます!」

「カムラード様が、一人で四天王と戦っているから応援に行ってあげて!」


「わかりました!」

「シオンさん、気をつけてくださいね」


「うん、無理はしないよ」


 紫音はエレナの心配にそう答えると、再び走り出す。


「リズちゃんとミリアちゃんも!」

「了解ッス!」

「はい」


 二人もそう答えると、紫音の後を追う。

 は走りながら両手で大小の刀を抜くと、紫音は両方をオーラブレードで強化する。


 そして、頭の上で腕を交差して構えると、そのままバツの字になるように振り降ろして、ナイルの死角からXの字のオーラウェイブを放つ。


 だが、ナイルは反応してバックステップで回避する。

 そのお陰でユーウェインは、ナイルと距離をとって仕切り直すことが出来た。


「ユーウェインさん! 助太刀します!」


 紫音はナイルと対峙するユーウェインに近づくと二刀流で構える。


「シオン君、やっと来てくれたか。気をつけろ、ヤツの攻撃は強力だ」


 ユーウェインはそう言って、左手のラウンドシールドを見せると、ナイルの攻撃を受け続けた盾はボロボロになっていた。


「あと、ヒュドラのウォータブレスが、いつ来るか解らないから常に気を配るんだ」

「わかりました!」


「フタリニフエテモ、オレニハカテンゾ!」


 ナイルは紫音の参戦にも動じない。

 ユーウェインは紫音にナイルの注意を引くことを要請する。


「シオン君、私が魔法剣を溜めている間ヤツの注意を引いてくれ。注意を引くだけで構わない、無理に奴の間合いに入らなくていい」


 紫音はユーウェインの要請を受けると、ナイルの間合いギリギリまで近づいて睨み合いを続けた。


 紫音が動かなかったのは、四天王ナイルの威圧感に押されて、それ以上踏み込めないだけだ。

 先に痺れを切らしたのはナイルであった。


「コッチカライクゾ!」


 ナイルは紫音に向かって武器を振り上げながら突進すると、彼女目掛けて力強く振り下ろす。その武器は鉈のような刀身を持った剣で、まともに受ければ人間なら一溜りもないであろう。


 紫音は刀でいつも通りに、刀の刃を当て受け流そうとしたが、ナイルのパワーと武器の重さの乗った強力な一撃は、受け止める女神武器は無事でも紫音の腕力では、持ちこたえられないと判断して咄嗟に回避する。


 その判断は正しく、回避した時に空を切ったナイルの斬撃の風圧は、ちょっとした突風と感じるほどであり、紫音は背筋に冷たいものが走るのを感じた。


(こっ、怖い……。こんな攻撃まともに受けたら、ミンチより酷いことになっちゃうよ!)


 だが、そのおかげで紫音はこの状況をピンチだと感じた為に、女神の秘眼が発動する事に成功する。


 女神の秘眼が発動した紫音は、心が強化され冷静さを取り戻すと、脇差を鞘に戻して一刀流に戻し、いつもより強力にオーラブレードで刀を強化して脇構えで構えた。


(ホウ、コノニンゲン、キュウニフンイキガカワッタナ)


 それを見たナイルは、紫音の変化に気づき盾を前にして構え直す。

 お互い相手の隙きを窺っていると、ヒュドラが紫音に向けてウォータブレスを吐いてきて、

 紫音はそれを冷静に回避するが、着地するところをナイルに襲われる。


 だが、紫音は刀に強力に溜めておいたオーラを使って、襲ってきたナイルに跳躍中の姿勢からオーラウェイブを放つ。


 ナイルは盾でオーラウェイブを防ぐが、予想以上の攻撃力に一瞬足を止めて堪えた為、その間に紫音は、着地して素早くオーラステップでナイルとさらに距離を取り、素早くオーラブレードでオーラを刀に宿らせる。


「さ~て、そろそろ私の出番かな。七回裏、人類側の攻撃。点差は5対3で人類側ピンチってところかな。ここで代打の切り札、山川亜季登場やで!」


 その戦闘を、後方からゴーレム召喚をしながら見ていたアキが、エセ関西弁でそう呟きながら、エメトロッドをバットに見立てて、予告ホームランのポーズを取っていた。



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