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女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)  作者: 土岡太郎
第3章 冒険者の少女、新しい力を求める

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78話 腐女子少女と聖女様 その1






 次の日、朝食を食べた詩音は、昨日の続きをアキから聞くことにする。


「では、第二部”アキちゃんBL漫画家になる”を話すね」


 異世界に転送されたアキは、首都にあるフェミニース大教会の懺悔室に出現した。

 薄暗い懺悔室から出るとそこは大きな聖堂の一角で、彼女が聖堂を見渡すと内陣に安置された女神像の前に、女性の司祭が祈りを捧げているのが見える。


 アキがその女性に近づくと、その荘厳な服装から彼女が只者では無いことが解った。


「あの……、お祈り中にすみません」


 アキは遠慮がちにその女性に声をかけると、その女性司祭は祈りを辞めて彼女の方に振り向き、アキを見ると笑顔で話しかけてくる。


「その黒い髪に、黒い瞳。アナタが、山川亜季さんですね?」

「はっ、はい」


 振り返ったその女性司祭はすごく綺麗な人で、それに神聖なオーラを放っている。

 それに声もとても素敵でやさしい声だった。


(こんな綺麗な女司祭さんなんて、アニメやゲーム以外で始めてみたよ……)


 アキはその姿に驚き、さらに自分のことを知っていることにも驚いた。


「私はフェミニース教総主教兼このフェミニース大教会の責任者フィオナ・シューリスです。アナタのことは、フェミニース様からの神託で聞いています。これからは、私がアナタをお世話しますね」


「フィオナ様、これからお世話になります。よろしくお願いします」

「では、さっそく私の家に参りましょう」


 アキはフィオナの後に付いていって家まで案内される。


「この部屋を使ってください」

「はい、ありがとうございます」

「そうだ、色々と必要なものを買い揃えないといけませんね」


 総主教が神託で彼女を預かることになったとなれば、色々ややこしいことになるということで、名目上は知り合いの娘を預かっているということになった。


 こうして、アキはその日からフィオナと一緒に住むことになり、朝の弱いフィオナを起こすのが彼女の日課になる。


「起きてください、フィオナ様! 朝ですよ!」

「アキ、あと五分、いえ、あと十分眠らせてください……」


「増えているじゃないですか! 早く起きてください! 総主教様が遅刻だなんて、部下の人達に示しがつきませんよ?」


 アキのその言葉を聞いたフィオナは、キリッとした顔で彼女をこう諭す。


「そんな事はないですよ、いいですかアキ? 昔の人が言っていました。一番偉い人が早く職場に行けば、その下の人達はもっと早く行かなければならないのです。それは、皆が不必要に朝早く起きなければならなくなり、皆にとっても迷惑なのです。だから、偉い人は少し遅れるぐらいがいいのだそうです。だから私は、わ・ざ・とゆっくり寝ているのです」


 中学生のアキはなる程と思って、それ以上フィオナを急かさないでいた。

 その夜の夕食の席でフィオナは、アキに今日あった事の愚痴をこぼす。


「聞いてくださいアキ~。あの子が……ナタリーが、私がアキに今朝話した事を遅刻した理由として話したら、言い訳乙って一蹴して私にネチネチと小言を言ってくるのですよ。私に親友のような弁説(物理)の力があれば論破できたのに……」


 遅刻したことを補佐する人に注意されたらしい。


(私がこれからちゃんとこの駄目なお姉さんを、起こしてあげなければ!)


 次の日からアキはフィオナを強引にでも起こすようになったので、彼女は遅刻しないようになった。


 アキがフィオナと暮らし始めて一週間後、フィオナが遅刻寸前で急いで家を出たため権杖を忘れていったため教会まで届けに行く。


 教会に入ろうとすると、金髪のショートボブの可愛いらしい女騎士に呼び止められる。


「私はこの教会に仕えるフェミニース教団の聖騎士、エスリン・ネスビットです。教会に何か御用かしら?」


「この杖を、フィオナ様に届けに来ました」


 アキはエスリンに杖を見せながら答えた。


「また、家に忘れてきたのね……。でも、どうしてアナタがその杖を……、ああ、アナタが今フィオナ様の預かっているという親戚の女の子ね。着いてきて、フィオナ様の所まで案内するわ」


 エスリンは、アキを連れて教会内に入る。

 聖堂に入ると、一人の青年がフィオナに相談をしているようだった。


 アキはその青年を見て驚いた、何故ならばこの世界では珍しい自分と同じ黒い髪と眼をした人物で、ゲームで見るような武者鎧を着た侍であったからだ。


(この世界には侍までいるんだ……。まあ、RPGとして侍は珍しくないか)


 アキがそう思っていると、エスリンが話しかけてくる。


「あの男性、アナタと同じ東方国出身ね。あの鎧は王国騎士団の双剣、カズマ=スギハラ殿ね。今なにか相談中みたいだから、邪魔せずにここで待っていましょう」


 エスリンはそう言って、アキにこの場で待機するように指示した。


(この世界でも、日本みたいな国が存在するのか。近くにあるのなら、一度行ってみたいな)


 アキがそう思いながら、遠くから様子を伺う。

 何を話しているか遠すぎて解らなかったが、暫くするとスギハラは憑き物が落ちたみたいな顔をして、フィオナに礼をして教会から出ていった。


 次の日、スギハラは騎士団を辞め自分のクランを立ち上げるために奔走することになる。

 アキがその後にフィオナに忘れていった権杖を渡す為にエスリンと近寄ると、エスリンがフィオナにアキの用向きを報告した。


「この子が、フィオナ様が家に忘れてきた権杖を届けに来てくれました」

「そうですか。アキ、わざわざありがとうございます」


 アキが権杖を渡そうとすると、彼女の手には権杖が握られている。


「杖は、お持ちだったんですね」


 それを見たアキは、少しがっかりしたように言ったアキのその言葉に、フィオナはこう答えた。


「ああ、これは私が権杖を家に忘れた時用にナタリーが作らせた精巧に似せた偽物です」

「よくお忘れになりますからね……」


 エスリンが、少し困った顔でそう口にする。


(この人何度もやらかしているのか…)


 アキがそう思いながら、権杖を手渡すとフィオナは、したり顔でこう言い出す。


「フフフ~。これで、もうナタリーの意地悪な小言を聞かなくて済みます~」


 この五日後、今度は宝冠を忘れて小言を言われるのは割愛することにする。


 アキがフィオナと暮らし始めて三週間後、彼女が買い物から帰るとフィオナが尋ねてきた親友と客間で話をしていた。


 アキが興味を持って話を聞くために、隣の部屋の壁にコップをあてて盗み聞きしてみる。


「今回、新しく王になったルーク陛下の方針で大規模な人事異動があってね、ユーウェイン・カムラードを始め王国騎士団の約7割と王宮魔道士の約5割が、北のフラム要塞に転属になったの。それに伴って、私も王宮魔道士長から、アルトンの街を含めた地域の領主兼街の総督になるように命じられて、姪のミリアちゃんと赴任する事になったわ。だから、王都を離れる前に貴方に挨拶に来たの」


「それって、魔王決戦での敗戦の責任でミレーヌ達が左遷されるってこと?」


「そうじゃないわ。ここだけの話にして欲しいのだけど、今回の戦いで人類側は魔王軍を甘く見すぎたせいで、大敗して戦力が激減してしまっているの。もう、国全体を守る力はないわ。そこで、王都の防衛力を最低限にして、魔王領と接する北のフラム要塞に王国騎士団の戦力を集めて、そこで迎撃しようってことなの。私はその要塞が破られた時の第二防衛線になるであろう、アルトンで戦う為に配置されるわけ」


「人類側がそれ程の被害を……。確かにあの戦いの時に教会で復活されていた人達がたくさんいたけど、それ程とは……。私達の信仰心が足りないばかりに、フェミニース様が私達にさらなる試練をお与えになったのかしら……」


 フィオナは自分の信仰心が足りない事で、この様な結果になったのではないかと思い悲しい顔をする。


「別にアナタが気にすることはないわ、フィオナ。女神への信仰だけで勝てるなら、人類は200年以上魔物と戦い続けているはずがないもの」


「それは違うわ、ミレーヌ。フェミニース様は私達人類に、試練をお与えになっているの。その試練を私達の努力が足りないから、まだ越えられないだけよ」


(魔物と戦うことが、あの女神様の与えた試練かぁ……)


 アキは魔王システムの詳細を女神達から聞いていないため、フィオナのこの考えが正しいのか解らなかった。


「という理由で、これからの王都の防衛は副団長から王国騎士団長に昇格したハロルド・ウォルターズ殿と王国騎士30人、王宮魔道士30人と、この教会に仕える聖騎士30名とアナタだけだから頼んだわよ」


「フェミニース様が、きっと護ってくれるわ」

「そうだといいけど……。ところで、最近遅刻が減ったそうじゃない」


「ええ、一緒に住んでいるアキが起こしてくれるの」


「そう、それは良かったじゃない。隣で盗み聞きしているのが、そのアキちゃんかしら?」


 アキは驚いて思わずコップを落してしまう、その音を聞いたフィオナは

「アキ、盗み聞きはいけませんよ!」

 隣の部屋にいるのであろうアキに注意する。


「すみません!」

 アキは慌てて足元に落したコップを拾うと、そう言ってその場を退散する。


(ミレーヌって人、只者じゃない!)

 アキは恐くなって、家から飛び出して教会まで逃げる。


 家を飛び出したアキが暫くしてから家に戻ってくると、ミレーヌはすでに帰った後だった。


 アキはフィオナに盗み聞きしていたことを謝ると彼女にこう言われる。


「今度からしてはいけませんよ。あと聞いたことは誰にも話してはいけない事です。いいですね? もし、破ったら私の親友の注意(物理)が待っていますからね」


 フィオナは手をワシワシしながらアキに注意した。


 アキは彼女のその手の動きに何故か嫌な予感がして、絶対に今日のことは誰にも言わないと決意するのだった。


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