セセラギ マコトは呟いた
セセラギ マコトは都内の10階建てマンションの6階に住んでいる。周辺には3階建以下のアパートばかりのため、ベランダからの眺めは悪くなく、陽当たりも良い部屋だ。
目を覚ました彼は、部屋が真っ暗だったため電気をつけた。暖かさを感じるオレンジの光に部屋が包まれた。何年振りの部屋の景色に安堵感と懐かしさを感じながら、部屋の様子を観察した。目立って荒らされた跡などはなく、部屋の中は異世界へと転生した日と何も変化がないようにみえた。
次に彼は枕元に置いてあったスマホを点け、日付を確認した。
「ははっ…。」思わず彼は苦笑いをこぼす。
画面の映し出す日付は2019年3月23日0:00だった。
心のどこかで自分が還るときには既に100年近く経っているという昔話にありそうな想像をしていた。これではまるで何事もなく一瞬意識を失っていただけのようだった。
誰かに話しても信じてもらえないことは明白だった。
「あのことは夢だったんだろうか。」そう彼は独り言を呟いた。しかし彼は約束を思い出した。
【使命を果たし、元の現実に戻るときに能力を全て引き継げるようにする】
つばが喉を通る音が聞こえた。
彼は異世界でありとあらゆる魔術と剣術を蓄えた。その世界の基本であった[ファイア]や禁忌とされていた死者を蘇らせる魔法まで。
彼は右手を部屋の真ん中に向けて突き出し、手のひらを開き呟いた。
「ファイア。」と
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