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第9話 自殺

 俺は朝礼の後、学校の屋上に来ていた。

 試さなければならないことがある。俺の力のことだ。

 前回の戦いで、あの不審者が俺をループさせている可能性はほぼなくなったと言っていいだろう。

 そして、俺の力の性能を確かめなければならない。

 死んだら朝に戻るのか、それとも何時間か戻るのか。

 俺は昨日に用事ができた。隆から聞いた女性に用がある。

 きっとその人は、あの不審者が言っていた、覚醒者というやつなのではないだろうか。

 もしそうで、その女性の協力が得られたならば、もしかしたらこのループを抜けられるのではないかと、そう期待している。

 もちろん、協力してくれないかもしれない、もしくはその女性も不審者の仲間で、俺の命を狙って来るかもしれない。

 だが、今の手詰まりの状況を打開できるかもしれない。

 だから、確かめなければならない。


 俺は、ここから飛び降りて死ぬ。


 確か、人間が確実に死ぬ高さは40メートルくらいだった気がする。でもここはそれほど高くはないから、死なないかもしれない。そうなったら、痛みが永遠に続き、心を病む。そう思っていた。

 だが、忘れていた。俺は今日の18時には死ぬんだ。

 あの不審者が、たとえ俺が病院に居ようと、大怪我をして意識不明だろうと、必ず殺すだろう。だから大丈夫。長くても苦しみが9時間半続くだけなんだから。

 ・・・9時間半!?いやいやいや、絶対病む。9時間半は長すぎるって!

 どうしよう、怖くなって来た。もともと怖くなかったわけじゃないんだが、いいや、男は度胸!為せば成る!為さねばならぬ、何事も!行くぜ!アイキャンフラーイ!

 俺は屋上から飛び出した。勢いで行かなければいつまで経ってさ飛び降りれなかっただろうから。

 頼む、戻ってくれ、昨日まで戻っ怖い怖い怖い怖い怖い!!うあああああ!!!!


 世界は光に包まれた。







「それはもちろん!おはようございますの略語で、え?ちょっと望?急に座り込んでどうしたの?ぇ、すごい震えてるよ!大丈夫!?望!?ねぇ!」


「はぁ、はぁ、あ、ああ、大丈夫だ、ここは?」


「え?ここはって、通学路だよ、ねぇ、全然大丈夫に見えないよ、病院に行ったほうがいいんじゃない?私、連れてくよ!」


「はぁ、はぁ、だ、大丈夫だ、ちょっと高所恐怖症になりそうなだけだ」


 怖かった、あの死ぬまでの数秒間、徐々に早くなって来るスピード、体にあたる風、一気に迫って来る地面、もう、もう絶対飛び降り自殺なんかできない。


「ええ!?ここ地面だよ!高くないよ!?えっ、まさか最近身長が急に伸びて来て、今までより視点が高くなったことを今自覚して、急に怖くなったの?数センチって結構違うっていうもんね。大丈夫だよ、しゃがんでいれば視点は高くないから、このまま行こう?落ち着いて」


「んなわけあるかい!」


「わあ!望、立ち上がっちゃダメだよ!また怖くなっちゃうよ!」


「いや違うよ!?立っている高さが怖いってわけじゃないよ!?ただちょっと高いところにいた時のことを思い出してただけだから、俺も紛らわしかったから悪いとは思うけど、そんな発想になるか!?」


「・・・良かった、いつもの望だね!もう!心配したんだから!」


「あ、ああ、悪かった、ありがとな」


「はーい!じゃあ、さっきの話の続きね」


 どうやら無事に死ねたようだ。無事?なのか?


「おざい!っていうのはおはようございますの略語でね、おはようございますっていう丁寧な言葉が、略すだけで、おざい!っていう、うざいに似ている響きになって、一気に失礼な挨拶になるんだよ!」


「・・・え?」


「丁寧な言葉を略しているはずなのに、失礼な言葉になっている、そういう不思議な挨拶なんだ!」


「・・・もしかして、」


「?どうしたの、望?」


「なあ、蓮、今日は何日だ?」


「えっ?14日だよ?」


「そう、か」


 戻ってこれた、戻ってこれた!戻ってこれたんだ!


 朝にセーブされているわけじゃなかった!多分時間だ。死んだ時から、何時間か戻るんだ!

 ・・・あれ?でもなんで、


「望ーおーい望!」


「わぁ!?」


「ひゃあ!」


「あ、え、あ、悪い、聞いてなかった」


「むぅー、もういいもん、」


「悪かったって、ちゃんと聞くから」


「むぅー、」


 これは、ご機嫌とりに苦労しそうだ。






 学校の教室の席に着くと、隆がよって来た。


「はぁ、つかれた」


「望何か聞いて欲しいことがあるのかそうかなら聞こう」


「え?」


「なんだ俺には言えないのかそうか俺はお前の友達だと思ってたんだかなそう思っていたのは俺だけだったのかさよなら望もう会うことはないだろう」


「いや、待て待て待て待て!」


「止めてくれるな!もう俺とお前は赤の他人知らない者どうしなんだ」


「展開早すぎ、喋りも早すぎ、俺が答える暇なかっただろ!」


「えっと、あの、どなたとお話しているのですか?」


「隆だよ!」


「え、何故私めの名前をご存知なのでしょうか、私たち、赤の他人のはずですよね?」


「いつの真にか赤の他人になってる!?」


「はじめまして、私、春日隆と申します、失礼ですが、どちら様でしょうか」


「めちゃくちゃ他人行儀だ!」


「えっと、まともに挨拶もできない野蛮な方とはお話をしてはいけないのが私の家の家訓ですので、これにて失礼させていただきます」


「あっ待って!」


「では、御機嫌よう」


「待ってくれ隆!待ってくれ、俺を置いていかないでくれ!隆、たかしーーーーーー!!!!!」


 その日、俺は1人の友達を失ったのであった。






「さて、冗談はこのくらいにしておこう」


「そうだな、俺もう疲れたよ、」


「なんだ、天に召されるのか、お達者で」


「違うよ!言葉通り疲れたってことだよ!」


 本当に疲れた。やっぱり学校が疲れるのは勉強よりこの兄妹との会話が主な気がするな。

 ただ、なんだろう、いい疲れだ。

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