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第7話 戦い

 学校が終わり、部活動をサボり、家に帰った。

 そして、部屋から長い木刀を持ち、家を出た。

 近くの公園に来た。


「場所はここでいい」


 落ち着いて、腕時計を見てみると、17時となっていた。

 まだ、後1時間ある。

 何をする?何かトラップでも作るか?

 そう考えても、何もいいトラップが浮かばなかった。

 先手必勝で決めなければダメなのだから、落とし穴とかを掘っても、うまく活用できないだろう。


「練習をするか」


 ろくに喧嘩とかしたことがないんだから、練習だけでもしっかりしないと。


「ハァッ」


 木刀を縦に素振りして見た。

 今度は目の前に不審者がいると思って、


「っ、ハァッ」


 ダメだ、イメージ練習なのに、躊躇した、そして、恐怖で一瞬体が動かなかった。


 まだ怖い、立ち向かうと、明日を見ると決意したが、それでも怖かった、


(躊躇ったら死ぬぞ)


 分かってはいる、けど、心に刻み付けられた恐怖は消えない。

 なら、どうする。


(憎む、か)


 その振り下ろす瞬間だけは、不審者と戦う瞬間だけは、憎もう。


(憎い、俺を殺す、あいつが憎い、憎い、憎い)


 だが、俺の憎しみは、薄っぺらい。

 確かに憎い。あいつがいなければ、俺は今も平穏に暮らしていただろう。あいつのせいで、苦しんでいる、辛い。

 だけど、俺は死んだら、痛みも苦痛もなにもかもがなくなる。

 骨折とか、怪我とかをしたことがあるだろうか?まあ、大体の人ならあるだろう。俺もある。その時の痛みをまだ覚えているだろうか。俺は覚えていない。

 普通の怪我でも、怪我をしたという事実は覚えていても、怪我の痛みは、痛みが引いたらすぐに忘れてしまう。

 これもそうだ、痛みを忘れたわけじゃない、痛かった。夢みたいに消えた痛みだけど、まだ覚えている。

 だが、少しずつ薄くなる。これが刺された瞬間なら、本気で、全力で憎める。だけど、12時間近く経った今は少しだけ薄れている、少しだけな。

 だが、恐怖は薄れない。時間が経とうと、この恐怖はなかなか薄れてくれないだろう。この恐怖を、俺の憎しみじゃ、超えられそうにもない。絶対、体がすくむ。その瞬間、俺は死んでいるだろう。

 だが、


(何のために、自分の芯を決めたんだ、俺は、明日が欲しい、明日を見たい)


 この思いは、俺だけの思いじゃない。背中を押してくれる人がいる。


(ああ、恐怖に負けてなんていられない!戦うんだ!そして、明日を掴むんだ!)


 そして、


 時刻は夕暮れ。


「17時、59分」


 周りに人はいない。


「やるぞ」


 そう、一人たりともいなかった、


「俺は」


 さっきまで、公園で遊んでいた子供達が、居なくなっている。


「明日を」


 いつのまにか目の前に人がいた。


「掴むんだ!」


 勢いよく振り下ろした。

 間違いなく当たる!そう確信した。

 だが、


「っっ!」


 避けられた!不審者は驚いている。事前にこちらが振り下ろすことを知っていたわけではなさそうだ。なのに避けられた。


 どういう反射神経をしてるんだ!


 切り替えろ!後ろからくる!


 俺は半身になり、服が裂けながらも、紙一重にナイフを避けた。


「なに!?」


 今しかない!


「うおおおおおお!!」


 ブゥン!


 俺は木刀を横薙ぎに振るった。

 今度は、間違いなく当たった。


 カキン!


 不審者の前の、ナニカに。


「なっ!?」


 不審者は、バックステップで距離をとった、


「貴様、覚醒者か?」


「なに?」


 覚醒者?なにを言っているんだ。


「いや、俺はここに神託で呼び出された、なら間違いなく一般人だろう、覚醒者なら、能力で結界を超えて攻撃するだろうからな、木刀ではなにをしようと結界は超えられん」


 なにを、言っているんだ、


「何かを吹き込んだ奴がいる?ふむ、ダメだ、分からん、やはり俺には頭脳労働は向かん」


 何を言っているのか、理解できなかった、いや、したくなかった。まるで木刀では何をしようと、何発攻撃を当てようと、その結界を突破することは不可能みたいじゃないか。なら包丁でも同じことだろう。


「なら」


 ザクッ


「ガハッ」


 後ろから、いつのまにか刃物が来ていたのだろう。

 まるで反応できず、刺された。


「殺してから聞けばいい、うちの連中なら、その辺りのこともわかるだろう、ふむ、初撃を避けたのは偶然か?このものが達人級の人間で、何かしらの気配を読み取った、にしては、次の攻撃に無反応すぎる、ふむ、分からん」


 痛い、痛い、痛い、不審者が何かを話していた。だが、痛みで、聞いてる余裕はなかった。


 そして、


 ザクッ


 俺は死んだ。


「さて、油断はできんな、!?何がーーーー」


 世界は光に包まれた。






 チリリリリリリン!チリリリリリリン!


「ハッ!っ、はぁ、はぁ、はぁ、」


 チリリリリリリン!チリリリリリリガチャ


 目覚まし時計を止めた。


「何だよ、あれ、結界?なんだよ、無理ゲーじゃないか」


 心が折れそうになる。


「どうやってあんなのと戦えっていうんだ」


 いや、


「俺は、明日を掴むんだ、そう、決めたじゃないか」


 諦めるな、何かしらの道があるかもしれない。考えろ。


「不審者は、俺の最初の一撃を避けた」


 もしかしたら、結界は、自動的に発動するのではなく、任意で発動しているのかもしれない。

 いや、あれは驚いてか、勘か何かでとっさに避けたって感じだった。とっさの行動なら、どちらかは分からない。だが、可能性はある。


 他には、


「あいつは、神託を受けて呼び出されたって言ってたか?」


 神託?なんだそれ?呼び出されたってことは、もう1人はいる可能性が高くなった。だが、あいつはこちらに来た瞬間は状況を理解していなさそうだった。だからあいつは瞬間移動は持っていない?

 木刀で結界を攻撃した時、バックステップで下がっていた。少なくとも、使えたとして、とっさに使えるものではなさそうだ。

 そして、


「結界、か」


 これが絶望的だった。あいつは能力で結界を突破して攻撃と言っていた。木刀では超えられないと。つまり何かしらの能力がなければ突破はできない。


「能力」


 心当たりがあるとするなら、朝に戻る能力だろう。

 だがこれは攻撃系のものではない。だから結界は超えられない。

 そして、


「あいつの反射神経」


 あれも異常だ。分かっていなかったはずなのに攻撃を避けた。あのタイミングで避けるなんて、分かってても難しいのに。

 いや、呼び出されたと言っていた。なら、心構えはしていたのかもしれない。


「油断していない」


 なら結界が任意発動でも、最初から使っていた可能性が高くなった。


「どうする?」


 心が折れそうなくらい、高すぎる壁だ。


 コンコン


 どれくらい考え込んでいたのだろうか、扉をノックする音で、現実に引き戻された、


「飯できてるから」


 妹が、俺を呼びに来た。


「ああ、」


「早く降りて来て」


「分かった」


 考えが詰まった時は、一度他のことをすると突破口が見えてくることもある。まずはメシを食うか。






「おまたせ、ありがとな」


「うん」


「「いただきます」」

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