第6話 考察2
「よし、気を取り直・・・せねー!」
思い出すだけで、顔が真っ赤っかだ。
「一回落ち着こう、落ち着け、よし落ち着いた、・・・っく」
また、思い出してしまった。
「忘れろ忘れろ忘れろ!はい忘れた!・・・よし、考察の続きだ」
自分の力で時を戻すことは・・・
(時の神クロノス、時の流れに逆らうもの、芦田望・・・フッ)
「ダメだー!!!!頭から離れないー!」
やめだやめだ、飯を食って気分転換だ。
リビングに行くと、亜美が食べるのを待っていた。
「あっ、悪い待たせたな」
「・・・うん」
「先食べてても良かったのに」
「・・・もう、大丈夫そう」
「ん?どうした?」
「なんでも、じゃあ、食べよう」
「ああ、」
「「いただきます」」
・・・・・・・・・・・
「フッ」
「あっ、亜美お前、さっきのこと笑ってるだろ!」
「なんのことかわからない」
「わかってるだろ!」
「わからない、だから教えて」
「ぐっ」
「さっきのことってなんのこと?なんのことぉ?」
「ぐぬぬぬぬ」
「冗談、もう、大丈夫?」
「え、ああ、もう大丈夫だ。・・・ありがとな」
「うん、ご馳走さま、先行ってるから」
「おう、いってらっしゃい」
亜美が家を出ていった。
「ご馳走さま、さて、俺はどうするか」
このまま家で、対策を考えるか、学校に行くか、
ふと、食器を洗っていると、包丁が目に入ってきた。
包丁は、武器になる。だが、これを使うってことは、相手を殺すことになりかねない。
人を殺す覚悟が、俺にはあるのか?
「いや、無理だな」
冷静な俺が、そう判断する。たとえここで覚悟を決めたとしても、決められたとしても、実際に刺そうとすれば戸惑うだろう、そんな隙を、不審者が見逃すか?見逃さないだろう。それに、人を殺す度胸なんて、俺にはない。本当に追い詰められて、何も手がなくなるまでは、やめておこう。
なら武器は何がいい?
「やっぱり、あれか」
俺は、皿を洗い終わり、部屋に戻った。
「武器って言ったら、やっぱこれだよな」
それは、木刀である。修学旅行で買った、2振りの木刀だ。長い方と、短い方がある。
「これなら躊躇いもなく振れるだろう、いや、ためらはない」
仮にも4回も殺されてるんだ。恨みつらみは積もっている。
「だが、覚悟はしよう」
まず、木刀で勝てるかなんてわからない、というより、負けるだろう。でも、木刀でも、頭に当たれば、人は死ぬ。俺は、人を殺すかもしれない、いや、殺しに行くんだ。
それなら木刀も包丁も変わらないって思うかもしれないが、やっぱり、刃物は怖い。
「それに、リーチも木刀の方が長い」
だからそれでいい、それでいいんだ。
「学校に行くのは、やめておこう」
学校に木刀なんて持っていけないからな。持っていったら没収されるだろうから。
いや、学校に行って、一回帰るか?部活に行かなければ、帰る時間はある。
「いや、やっぱり、行くか」
隆なら、相談に乗ってくれるだろう。
「行ってきます」
「はよーいて!」
「あれ?」
蓮と、よく会う場所で、蓮とあった。そこで蓮が待っていたわけじゃなく、たまたま鉢合わせたって感じだった。
別に毎日蓮と一緒に登校していたわけじゃない。
蓮には朝練があるから。
でもそれ以外だと、結構一緒に登校していたが、それは家も近いし、大体家を出る時間が同じだからだと思っていた。俺は基本的に毎日7時45分に家を出る。学校まで歩いて30分くらいだ。朝礼が8時半だから、15分くらい余裕を見ている。
ループする前は、この時間で出た。けど今回は、学校に行くか迷っていたため、7時55分に家を出た。
10分ずれている。なのに、蓮とここであったってことは。
「なんだ?俺を待ってたのか?」
「はにゃ!?な、な、何を行ってるのかなー?そんなことあるはずないよー!自意識過剰じゃないのー?ヒューヒュヒュー、そこまで言うなら証拠出しなさいよ!」
物凄い動揺だ。バレバレだ。お前のその態度が証拠なってると言いたい。
「証拠ならある!」
「なっなんだってー!」
だからその態度が証拠だと言いたい。
(でもそう言っても騙すためにこう言った態度をとっただけだなんて言い返されそうだ、それに、ループしてるから分かる、なんて言うのもな)
よし、
「その証拠とは、」
「その証拠とは?」
どうするか、何も考えてなかった。その時、たまたま目に移ったカーブミラーを指して、
「あれだ!」
「ガガーン!」
カーブミラーが何なんだよ。わけがわからないよ俺。ここから何とか巻き返すことは・・・無理だな、ま、いいや、降参しよう。
「すま」
「ふっふっふっふー、よくぞ見破った!そう、私はカーブミラーで、望がのを待って、偶然を装って挨拶をしていたのだ!」
「ってええ!!!!あってんの!?」
「ええ!?何で驚いてるの!?」
「い、いや、何でもない」
俺がくるのを待って、偶然を装ってって、俺と登校したいってこと?もしかして蓮って、俺のこと好きなんじゃね?そう思うと、途端に蓮がすごく可愛く見えてきた。
「なっなんで?」
「それはもちろん!」
望が好きだから、そう言われるんじゃないかってドキドキした。いや、でも、今はループとかで大変だから、そんなこと言われてもなー。でも、どうしよっかなー。
「はよーいてだよ!」
「・・・は?」
何で今挨拶をしているんだ?
「はよーいて!」
「・・・おはよう、で?」
「ん?」
「何で待ってたんだ?」
「だから、はよーいて!」
ん?・・・つまり、蓮は、14日の夜、必死になって10秒で考えた挨拶を早く披露したかっただけで、別に俺が好きだからとか、そういうのじゃなかったと。
つまり、俺の勘違い、自意識過剰だっただけ。
(やばい、恥ずかしすぎる、今日の俺恥ずかしいことばっかやってるな、いやまて、俺がこんな勘違いをしたことは蓮にはバレてないはずだ。大丈夫だ、誤魔化そう)
「おう!はよーいて!」
「あっ!むぅぅぅぅぅぅ!」
「え?」
蓮がすごいむくれてる。頬を膨らまして、私怒ってますとアピールしている。
「ど、どうしたんだよ?」
「前も言ったでしょ!意味もわからず、私の挨拶使わないでって!」
「えっ?ああ」
「ああ、じゃない!挨拶っていうのは大切なんだよ!その挨拶を意味も知らない言葉で言うのは、相手に対しての侮辱だよ!」
蓮は、挨拶に対して思い入れでもあるのかってくらいに、挨拶にこだわっている。
確か、全ての始まりは挨拶からで、何もかもが挨拶から始まる。だから挨拶を自分で考えて、自分に一番あった挨拶を探しているとか言ってたっけな。
「いつから、俺が"はよーいて"について知らないと思ってたんだ?」
「!?なんてこと!?まさか望、はよーいての意味を知っていると言うの!?」
「ああ、勿論だ!俺は、蓮より先に、はよーいてについてマスターしている!」
「そんな!?私が流行の最先端を走っていると思っていたら、いつのまにか望に抜かされていた?」
「そうだとも!では今から言おうではないか、はよーいての意味は!」
・・・あれ?・・・いろいろありすぎて忘れた。
「意味は?」
・・・まて、落ち着け!ここで間違えると、蓮が一気に不機嫌になるぞ。
はよーいて、おはよう、がはよーだろう。いて?挨拶しながら痛いのか?いや、思い出した!
「"おはよう、いいてんき"だ!」
「むぅぅぅ!」
あれ、間違えたっぽい、いや、そうか、
「"おはよう、いいてんきね"の略合だ!」
一気に色々思い出した。
「おお!あってる!すごいよ!望は私の流行の先をいっていたんだね!私もいつの間にか慢心していたみたい。ありがとう望!気づかせてくれて!」
「お、おお、うん、そうだな」
「それと、ごめんなさい、望は意味も知らないで使ったんだろうって、これって侮辱だよね、本当に、ごめんなさい」
言えない、意味とか特に考えてなくて、誤魔化しのためにとっさに出た言葉なんて言えない。そんなこと言ったら挨拶を神聖化する蓮に叱られる。
というより、昨日の夜考えて誰にも言ってない挨拶を知られているって思う方がおかしいと思う。
だか、しおらしい蓮は本当に久しぶりに見た気がする。
気にするなって言っても気にするだろう。どうしよう、そんな顔をさせたかったわけじゃないんだが、もしこの場面を隆に見られていたら、殺されそうだ。
どうしよう?
「気にするな、これからも精進しろよ」
何様のつもりだ?
「っ、はい!」
まあ、元気になったんならいいか。
「今日はいつもより遅かったな」
「ああ、ちょっと色々あってな」
「そうか、望、聞いて欲しいことがあるんだが、大丈夫か?大丈夫」
「じゃない!」
「大丈夫じゃないのか、そうか、よし、あのな」
「いやいや、大丈夫じゃないって言っただろ!?」
「そうか、よし、あのな」
「いや聞けよ!」
「そうか、よし、あのな」
「いつから隆はRPGのNPCになったんだよ!」
「そうか、よし、あのな」
「ダメだ、会話が成立していない、勇者って、NPCと話すとき、こんな気持ちを味わってたのかな」
「そうか、よし、あのな」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「何も話さないんかい!」
「そうか、よし、あのな」
「もうダメだー!」
俺は机に突っ伏した。
「っと、冗談はこのくらいにしておくか、望、聞いて欲しいんだが、昨日のことなんだけどな、いつも通り放課後、学校の屋上から妹の走ってる姿を望遠鏡で覗いていたんだがな?」
「ああ、天文学部の話か」
俺の中では2日くらい経ってるから、ちょっと忘れかけてた。2日で忘れるのはどうなんだ?
「分かるのか!そうだ!妹は星なんだ!それをあいつは」
「おお、どうしたんだよ」
「天文学部の顧問がな、妹ばかり覗いてないで、星を覗けとうるさいんだ」
「すごい真っ当だ!」
「妹はどんなものよりも輝いているスターだっていうのをわかっていないんだ!星の観察日記を書けっていうから、妹を観察して書いているのに、俺の書いた観察日記を、破いて捨てやがったんだ!」
「当然だ!ってか何やってんだよ!そんなもの渡されて一番困ったのは顧問だよ!」
「そんなものだと!?・・・ああ、そうだな、そうだよな、さぞ困っただろう、俺が書く観察日記など、妹を魅力を100万分の一、いや、一つ足りとも書ききれなかったからな」
「違うよー、そうじゃないよー」
「ああ、やはり方眼用紙50枚程度じゃ少なすぎたか、」
「50枚!?」
「ああ、時間が足りなかったんだ、やはり望も、少ないと感じるか」
「違う違う!多いわ!」
「多いだと!そうか、望なら妹の魅力を50枚以内に書き切れるんだな、大事なのは量じゃない、質だよな、ありがとう、目が覚めたよ」
「違うんだー、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだー」
隆が優等生っていうのは、俺の勘違いだったのか?
ものすごい問題児だよな?
「全く、あの顧問は、その点、望はよくわかっている。俺が望遠鏡で妹を覗いていると言ったとき、天文学部という言葉が出てきたということは、望も、妹は星だと理解してるってことだからな」
「あ!?いやいや、違うぞ!」
「照れるな照れるな、お前も、俺の妹は星だと・・・・・・・・・・・」
「?どうした」
「俺の妹はやらんぞ!貴様を弟だなんて認めるか!」
「どうしてそうなった!」
キーンコーンカーンコーーーーン
「あ、本題を話せなかったな」
「俺もだ」
「また後でだな」
「ああ」
「隆、聞いて欲しい」
「なんだ?」
全部本当のことを話す必要は無い。
「今からいう設定の敵を倒すにはどうすればいい?」
「ちょっと待て、それはネタか?ガチか?」
何かいつもと違う雰囲気を感じ取ったんだろう。
「ガチだ」
「そうか、話せ」
そして、俺は状況と、不審者について話せることは話した。
「それが何について話しているのかは聞かないでおくとしよう」
「ありがとう」
「取れる手は一つだ」
「!?なんだ?」
「先手必勝、それしかない」
「先手必勝」
「相手の出る位置、時間がわかっているなら、その一瞬だけは、こちらが有利だ、不審者は、当然、こちらの状況などはわかっていたとしても、自分が現れ、襲うことまで分かられているとは思うまい、」
「そうか、」
「そして、最初の一撃がわかっているのも大きい、背後から体の中心あたりへの攻撃、わかっているのなら避けることも可能だろう、だが、時間が経てば当然こちらが不利だ、というより、最初の一撃を外したらおしまいだ」
「なんでだ?」
「最初の一撃を外したら、不審者は、瞬間移動で遠くに離れて、そこから刃物を操って攻撃してくるかもしれない、そうなったら近づくことはできないだろう。 」
「そう、だな」
「それに、暗殺者という設定なのだろう?実践慣れしている相手に、まともに戦って勝てるものではないだろう、だから先手必勝、これしかない、相手が油断している最初が、最後のチャンスだ、」
「ああ、」
「たとえうまくいっだとしても、2回しか攻撃のチャンスはない、最初に現れた瞬間、そして、背後からの刃物をかわした瞬間だ、もちろん、最初に現れた瞬間に攻撃することによって、背後からの刃物は来ずに、遠くに瞬間移動するかもしれない、だから、最初に決めろ!俺から言えることはそれくらいだな」
「ああ、ありがとう」
「・・・負けるなよ、負けたら恨んでやるからな」
「・・・俺のことじゃねぇよ」
「そういうことにしておこう」