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第37話 高校生

 俺は今日から高校生になる。


「高校生か」


 楽しみだ。俺の精神年齢は、もうとっくに社会人くらいだけど、それでも15歳になったこともなかったから、ワクワクしている。


 朝のランニングは続けている。別にもう不審者が現れるわけじゃないとは思うけど、もう習慣になってるからな。それに、もう一つ。


「おはよ」


 いつも蓮と合流する場所には、もう蓮がいた。


「おハよロー!」


 俺は蓮と走り出した。


「なんだおはよろーって?」


 予想してみるか。

 多分、おはようと、よろしくを混ぜたのかな?


「それはもちろん!おはようとよろしくを掛け合わせた画期的な挨拶!」


 おっ!当たったか!?


「と、思わせておいてね、実はもう一つ挨拶が隠れている隠れ挨拶なんだよ!」


「いやいや、挨拶を隠してたら意味がなくないか?ちゃんと相手に伝えないと」


「でもね?おはようは隠れてないから、ちゃんと挨拶はしてるんだよ?そのあとで隠れている挨拶を見つけて、おお!って思わせる、すごい挨拶なんだ!」


「でも、隠れている挨拶って何だ?」


「わからない?」


「ああ、分からない、教えてくれないか?」


「ふっふー、それはね!ハローなんだよ!お、ハ、よ、ローで、ハローが隠れているんだ!」


「おお!確かに!」


「やった!望がおお!って思ってくれた!昨日の夜、柔軟しながらふっと浮かんできた挨拶なだけあるね!」


 相変わらず、よく挨拶が毎日毎日思い浮かんでくるものだな。


「そういえば、今日から高校生活だな、蓮は陸上強いところに入らなくて本当に良かったのか?強いところなら俺以外にも蓮に付いて行ける奴だっているかもしれないだろ?」


「ううん、よく考えてみたんだけどね、私はただ走っていたいんだ、もちろん陸上の大会で優勝したりするのは嬉しいけどね、でもやっぱり私は望と走っていたいの、楽しく話しながら、ただただ走っていたいの、確かに私について来れる人は望しかいないけど、ついて来れれば誰でもいいわけじゃないの、望だから、望だから走っていて楽しいの」


「そうか?ありがとうな」


 どうやら、俺は蓮のためになっているようだ。それは素直に嬉しいな。

 だから俺は朝のランニングをやめられない。

 俺も楽しいからいいけどな。


「よし!望、あの合流川まで競争しよ!」


「よし、負けないぜ!」






「っはあ、はぁ、負けたー!」


「ギリッギリ勝った、はぁ、はぁ」


 俺は地面に倒れこんだ。

 今日は何とか蓮に勝てた。

 比較的距離が短かったから、ほんの少し足の速い俺が蓮にギリギリ勝てた。


 あと50メートル、いや10メートルでもあったら負けていただろうな。


「はぁ、望、動いてないと体に悪いよ、はぁ、」


 悠理は歩いている。走った後は、少しの間軽く歩いたりしないと体に悪いらしい。

 でも、もう動けない。体力の全てを使い切ったから。


「ごめん、無理、はぁ」


「しょうがないなぁ、ほら望、肩捕まって」


「ああ、ありがとう」


 俺は蓮の肩に捕まって、立ち上がり、そのままゆっくり歩き出した。


 ・・・ちょっと恥ずかしいな。

 少し体力が回復してきて、余裕が出てきたからそんなことを考えていた。


 蓮の服越しに感じる柔らかい肌の感触や、暖かさ、甘い汗の匂い、髪の毛からは柑橘系の、


「んっ、も、もう大丈夫だよね、」


「あ、ああ、ありがとな、蓮」


 って、何変態なことを考えてんだ俺は。


「じゃ、じゃあ走って帰ろう!」


「あはは、帰りは軽く流す程度にしてくれよ」


「はーい!」


 俺たちは、来た道を引き返していった。


「ねぇ望?前から疑問に思ってたんだけど、何であの川って合流川って言うんだろうね?別にどこかと合流してるわけじゃ無いから、紛らわしい名前だよね」


「ああ、なんか聞いたことある気がするぞ、それ、確か昔は」






「「「いただきます」」」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、頑張ってね」


「ああ、今日から高校生だからな、頑張るよ」


「私も頑張るよ、望は何より勉強だね」


「う、あはは」


 俺の学校の成績は、小学生まではよかった。

 だけど中学生になって勉強が難しくなるのと同時に、不審者との対決が近づいて来たため、2年生は特に勉強に集中できず著しく成績が下がっていった。


 だけど巻き戻る前よりは確実に勉強はできるようになっている。


 残念ながらそのことを知っているのは俺だけだから、前よりできているからいいじゃ無いかは通用しないが。

 むしろ小学校ではテストができたから、余計に言われる。


「まぁ、頑張るよ」


「僕がしっかり教えてあげるからね」


 巻き戻る前よりできているのは悠理のお陰でもある。というよりほとんど悠理のお陰だ。


 俺の周りには何でこんなに頭がいい人が多いんだろうな?






 俺と悠理は高校にやって来た。


 下駄箱に自分のクラスが貼ってあるから、それを確認した。


「俺は1-Aか、悠理は?」


「あー僕はBだよ、違うクラスになっちゃったね」


「そうだな、えっと蓮と隆と灯火はっと」


 蓮はB、隆はA、灯火はBだった。


「なんかちょうど男女で別れたな」


「そうだね、でもクラスは隣だから、会おうと思えばすぐに会えるね」


「そうだな、じゃあクラスに行くか、悠理また後でな」


「うん」






「やっと、やっと見つけましたわ、私は必ず手に入れてみせますわ、そう、刻まれてますもの」






 クラスに入ると、もう隆がいた。隆はやっぱりどんよりとした雰囲気を漂わせている。


「よう隆、これからよろしくな」


「ああ、よろしく頼む」


「まぁ、仕方ないだろ、4クラスもあるんだから確率は、えっと25%でいいのか?」


「ああ、だがもう6年目だ!なぜ、何故なんだ!」


 隆が何を嘆いているのかというと、蓮とクラスが別れたからだ。


 隆と蓮は小学校4年生まではずっと同じクラスだった。


 だけどそこから1度も隆は蓮と同じクラスになっていない。

 俺は中学校までは、先生がそういうクラス分けにしていたと予測している。


 同じクラスにしていると、授業中はずっと蓮の方を見て、黒板を板書するのではなく、蓮の姿や美しさを永遠にノートに書いていそうだから、俺が先生ならそうする。


 流石に高校までその話が伝わっているとは思わないけど、もしかしたら隆は蓮と高校3年間一緒のクラスにならないかもな。


「ドンマイ」


「くっ、望!頼む、蓮とクラスを変わってきてくれないか!?」


「いや、無理だよ!?俺にそんな権力無いよ!」


「望ならできる!頼む、一生のお願いだ!」


「その根拠のない断言やめてくれ!そしてそんなことに一生のお願いを使うな!」


「そんなことだと!?望、お前同じクラスになることの利点を理解できていないのか!?同じクラスか別のクラスかと言うだけで、観察できる時間が大幅に違うではないか!1日の授業が6回×50分で5時間も違うんだぞ!」


「授業中は授業に集中しろ!」


 俺が言えたことじゃないけどな!


「授業など聞き流しているだけで理解できる!」


「てめぇ、なんでそんなに無駄に頭がいいんだよ!その頭脳を俺に寄越せ!」


 なんだよ、聞き流しているだけで理解できるって、俺は真剣に聞いても理解できないよ!


「ほう、感心だ、お前もシスコンになりたかったとはな」


「なんでだよ!今その話してなかっただろ!」


「俺の頭脳をもらっておいて、シスコンにならないとでも思っているのか!」


「なんだと!・・・そうか、ならいいや」


 流石に隆みたいに永遠に妹を覗いてそうなシスコンになんてなりたくは無い。


「ふむ、そうか、感心だな」


「なにがだ?」


「分かっている、そう言うことなんだろう」


「いや、だから何がだって」


「もうとっくにシスコンだから俺の頭脳が無くても問題ない訳だな」


「え?」


「分かっているさ、俺たちは同士なんだ、妹を持つもの同士、そしてシスコン同士なんだ」


「いや、違うって!」


「そうか、俺もそうだと思っていた、やはりシスコン同士ではなく、シスコン同盟の方がいいよな」


「ちがうよ!そっちじゃない!」


「ならシスコン連盟か、いいな」


「だから!」


「お前ら席につけー、席がわからない奴は前に貼ってあるからな、そこ確認しろよ」


「と言う訳だ、シスコン連盟に決定だな、じゃあな」


 俺が否定する間も無く、隆は席に座った。


 その後、俺はクラスからシスコンと認識されるようになった。


 何故なんだ。






 先生の話が終わり、全員で体育館に行き、そこで入学式を行った。


 入学式は退屈だった。こう言う式典ってなんでこんなに眠くなるんだろうな。


 俺は必死に眠気と戦った。

 あと少しで入学式が終わる。

 あとは生徒会長の歓迎の言葉と新入生代表挨拶、校歌斉唱で終わる。あとちょっとだな。


 生徒会長が壇上に上がった。

 なんていうか、生徒会長には気品があった。ただ歩いているだけ、立っているだけで目を奪われる何かがあった。


 その生徒会長と目があった気がした。そしてこちらに笑いかけた?


 いや、気のせいか。自意識過剰が過ぎるってものだよな。


 そうして生徒会長の話が始まった。


「私は六条(ろくじょう) 神楽(かぐら)、いずれ世界に名を刻む女ですわ」


 ・・・なんかすごい人が生徒会長なんだな


「歓迎するわ、ようこそ我が学園へ、私と同じ学び舎で学べることを光栄に思いなさい」


 そう言って壇上を降りて行った。

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