第17話 夜、
俺たちは家に帰った後、ボードゲームをしていた。
今やっているのは大どんでん返しゲームというやつた。
100マスあるすごろくで、サイコロを振って出た目の数だけ進んでいき、100マス目ぴったりに止まったら勝ちのゲームだ。
途中のマスで、止まったら一回休みや、一位の人と場所を入れ替えるマス、10マス進むマス、サイコロをもう一度振れるマス、10マス戻るマス、相手を6マス戻すマス、そして一気に50マス駆け上がるマスなど、色々なものがある。
今はお母さんが95マスでリーチをかけていて、亜美が72マス、俺が63マス、悠理が62マス、そしてお父さんが12マスだ。
お父さんだけひどすぎる。
一回休みや、戻るマスを引き続け、全然進んでいかない。逆にお母さんは絶好調。50マス駆け上がったり、もう一度サイコロを振ったり。
子供達3人は進んだり戻ったりでいい勝負をしていた。
「またパパがダメダメ」
「そしてお母さんが早すぎる」
「なんだかよく見るなー」
そう、運のゲームであるはずなのに、お父さんは本当に弱くて、お母さんは強い。
このゲームだけじゃなくて、他の遊びでも似たような結果によくなる。
次はお父さんの番だ。
「ふっ、諦めろ聖也」
お母さんがお父さんを煽っている。
「僕は諦めないよ、だって、諦めるのは苦手だから」
そしてお父さんは3を出した。
そのマスは、一位の人と場所を入れ替えるマスだった。つまり、お父さんが95マスまで進んで、お母さんが15マスまで戻った。
「諦めなければ、なんとでもなるんだ」
本来、15マス目にある為、ここまで劇的に影響はないのだが、大どんでん返しが起こった。
「・・・ふっ」
15マスまで戻って、一番最下位になったはずなのに、なぜかお母さんが嬉しそうだった。
そして、結果はお父さんが1位で、亜美が2位、悠理が3位で、お母さんが4位、俺が5位だ。
・・・俺が、5位だ。
「・・・なぜだ」
ギリギリ越された。
この結果はたまに起こる。
基本的にお母さんが誰よりも強くて、1位か2位、たまに3位になる。
お父さんは逆に5位か4位、たまに3位になる。
だけど偶に、かなり差が離れている状況から、お母さんを超えてお父さんが優勝することがある。
大どんでん返しゲームのように、逆転のすべが残されているのならわからなくもないけど、逆転の道なんてどこにもなさそうなゲームでも偶に起こす。
そういうゲームではお母さんは満足そうにしている。
今俺は自分の部屋にいる。
悠理は風呂に入っている。だから久しぶりの1人だ。
そういえば、お父さんとお母さんなんだが、8年後と8年前で容姿がほとんど変わっていない。
お父さんは黒髪黒目で、背は高い。だいたい20代後半くらいに見え、
お母さんは赤髪赤目、背はお父さんより少し下で、スタイルもいい。だいたい20代前半くらいに見える。
よくみんなからお前の両親若いね、綺麗だねと言われたけど、今思うと確かにそうだ。
いや、少しは変わっているんだが、よく見ないとわからないくらいだ。そんなに変わらないものなのか?随分若作りがうまいのかな?
なんか不思議なことが周りに起こりすぎてるせいで、姿が変わらないことも何かの能力なのではとか疑ってしまいそうだった。
と、いうよりも、今まで、過去に戻ってきてから色々ありすぎたせいで、まるで不審者のことを考える余裕がなかった。
少し整理しておこう。
まず、あの不審者の結界を破るのは無理だ。
俺が1000発叩かないと破れないなんて、まず武器が持たないだろうし、体力も持たないだろう。
ならどうするかなんだが、あの不審者が現れないようにする方法はあるのか?
過去を変えれば、現れなくなる可能性もあるが、その神託とかいうやつが、誰がやっているとかの情報を聞き出す前に過去に来た為、どうすれば来なくなるのかの検討がつかない。回避は難しそうだ。
もちろん過去が変わる為、不審者も来ない可能性もある。あるが、絶対に来なくなる方法がわからない為、不審者対策は考えておかなければならない。
あの女性、香月って言ってたか?その人も不審者の仲間なのだろう。
あの破滅者どもと、不審者が言っていた為、敵対する組織か何かはあるようだが、その人たちがどこにいるのかもわからないし、なんか響きが怖い。
俺の力は、死んだら過去に戻る。戻る時間は8年までは戻れる。何も考えなければ11時間30分から20時間の間くらい戻るか、朝まで戻る。
そして、悠理も巻き戻りに巻き込まれた。これは俺の体を触っていたからなのか、もしくは悠理が特別なのか、もしくは他に原因があるのかとかはわからない。
あの不審者の仲間だけが俺を殺すのか、もしくは覚醒者は未覚醒者を殺さなければいけない何かがあるのかもわかっていない。
前者ならまだいい。
だが後者だった場合、覚醒者を味方につけるのが難しくなる。覚醒者の味方がいれば不審者を撃退してくれるかもしれないが、味方になってくれる人がいないのではどうしようもない。
俺は不審者が言うには未覚醒者らしい。明らかに普通の力じゃないものを使っているが、未覚醒者らしい。つまり、俺には覚醒の余地があるってことだろう。
確か、神託に呼ばれて来たからお前は覚醒者じゃないみたいなことを言っていたはずから、覚醒していれば不審者が現れることもなくなるかもしれない。
覚醒、どうやってするんだ?
なぜ、覚醒者は未覚醒者を殺す?覚醒者が増えれば神秘の秘匿が難しくなるためか?
そういえば、過去に戻る前、不審者の言い回しに変なところがなかったか?
なんだったか、確か、結界のことを聞いた時だ。
(・・・いいだろう、どうせ、早いか遅いかの違いしかない、結界の話なら、先に聞かせても問題なかろう、覚醒者どうしの戦いの場合、結界はほとんど意味をなさないからな)
早いか遅いかの違いしかない?先に聞かせても?
まるで、俺を殺した後に、
「望!何して遊ぶ?」
悠理が部屋に来た。
風呂上がりで濡れた銀色の髪。
まるで雪のような白い瞳。
将来絶対に美人になると確信できるような美幼女が、パジャマ姿で俺の部屋に来た。
「そうだな」
何考えてたか忘れた。まあ、あとで考えればいいか。
「亜美は?」
「亜美ちゃんは部屋にいるんじゃない?」
「よし、3人で遊ぼう」
また仲間外れにするのはな。
「うん!」
こうして、俺と悠理と亜美は、亜美の希望でおままごとやお人形遊びをした。昔なら、他の遊びが良かったかもしれないが、仮にも中学生だったから、妹の遊びに付き合った。おままごとは、かなり恥ずかしかったけどな。
そうしてお父さんに夜更かしはあまりダメだよと、そしてお母さんに早く寝るぞ、と言われるまで遊んでいた。