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第12話 観察

 学校が終わった。

 これからどうするか授業中にずっと考えていた。

 片道交差点に行っても、認識阻害でうまく認識できなくなるだろう。そして女性と会ったら殺される。もう、女性に協力を仰ぐのはほぼ不可能と見ていいだろう。ならせめて、トラックが女性に激突する瞬間だけでも見ておきたい。何かそこにヒントが隠されているかもしれないから。


 俺は屋上に来ていた。


「?どうした望、ここは立ち入り禁止だぞ」


「頼む、隆、望遠鏡を貸してくれないか?」


「なに?」


「頼む、どうしても必要なんだ」


 隆はトラックや、女性、赤子の違和感を認識していた。もしかしたら隆にはそういう力が効かないだけなのかもしれないが、ここは距離があるため、認識阻害の範囲外なのかもしれない。


「・・・ただ事ではない雰囲気だな、そうか、そこまで」


「ああ」


 隆も何かを感じ取ってくれたようだ。


「そこまでお前も我が妹を覗きたかったとは」


「・・・え?」


「わかる、わかるぞ同士よ!我が妹の陸上姿はまるで地上で煌めく流れ星のようだからな!覗きたくなる気持ちもわかる!」


「いや」


「何も言うな!分かってる、俺には分かってるから、あの真剣な顔を見れば、お前は本気なんだとな」


「ちが」


「まさか、違う、とは言わないよな?それなら貸すことはできない、これは部の備品だ、天文学部でない望に貸すことはできない、屋上からも出て行ってもらおう、だが、我が妹を覗きたいと言うのであれば、兄として、応援しないわけにもいくまい」


 なんか違くね!おかしくね!

 そう言いたかったが、それを言うと問答無用で追い出されそうだった。

 俺が用があるのは街中の方だけだった。別に蓮を覗くわけじゃない、いや、隆がそれだけ絶賛してるんだからほんのちょっぴり興味がないわけじゃない。

 いや、覗かないよ!覗かないけど、なんか気になるって言うか。

 いやいやいや、俺はストーカーじゃない、犯罪者じゃないんだ。

 だから、嘘をつくことにはなるが、どうしても必要なことだ、仕方ない。

 隆なら俺が蓮を屋上からのぞいているなんて噂を流したりはしないだろう。


「さあどうする?覗くか?覗かないか?」


 覗かない、覗かないが、・・・


「覗く」


 別に覗かなくてもバレはしないだろう。

 だが、なんか言質を取られたようで、嫌だった。


「そうかそうか、よし分かった。なら俺は別のところから双眼鏡で覗くとしよう」


 覗くのはやめないんだな。


「明日、感想を言い合おうではないか」


「え?」


「まさか、借りるだけ借りて、覗かないなんて、ありえないよな?じゃあ、そう言うことで」


 隆は去って行った。


 どうすればいいんだ、俺はどうすれば。


 本当に覗くか?いや、俺が覗いたら間違いなく犯罪だろう。隆も犯罪だけど、犯罪の片棒を担ぐことになる。だが、覗かなかったら、嘘をついたことになる。

 どうすればいい、アリバイ作りのために覗くか?いやいや犯罪だ、だが、いや、

 そうして時間が過ぎて行った。


 あとでよく考えたら、もっと後、17時30分くらいに屋上に来て、望遠鏡を貸してくれといえば、こんなことにはならなかったのに。


 結局どうしたかって?それは、想像に任せよう。






 17時30分

 俺は街を覗き込んでいた。

 様々なものが見えるが、道路の端に赤子を見つけた。

 いやなんで?なんであんなところに赤子がいるの?危ないよ、危なすぎるって!

 俺は違和感を抱けている。つまり認識阻害は、かかっていない。やはり距離なのだろうか。

 そして、しばらく経った後、トラックが突っ込んで来ていた。トラックの中には人影が見えた。

 そして、


「は?」


 トラックの前に女性が降って来た。

 そして、女性の結界と、トラックが激突した。

 そして、トラックに押され、女性は赤子の方に近づいていき、赤子の前で完全に止まった。

 結界を見ると、全体のいたるところにヒビが入っており、今にも崩れ落ちそうだった。女性を中心に、球体状にひび割れが発生しているため、見えてはいないだけで、結界は全方位にあるのだろう。

 そして、結界は見えなくなったと同時に、ひび割れも見えなくなった。

 女性は頭を片手で抑えている。

 トラックは潰れている。



「あれ?」


 トラックの運転席に、何もない。


「なんで?」


 人がいない。さっきまで、人が乗っていたはずなのに。

 あれだけの勢いだ。死んでいてもおかしくないのに、血の一滴も見当たらない。


「まさか、認識阻害?」


 いや違う、と思う。それなら違和感を抱けないはずだし、あれも何かの能力なのか?

 わからなかった。

 そして、女性が頭から手を離し、周囲の様子を伺っている。

 隆がまた場面はもしかしたらここかもしれない。

 そして、女性が何かを叫んだかと思うと、赤子を連れて、どこかに行った。


 分かったことを整理しよう。

 ・・・何を整理すればいいんだ?

 とりあえず、あの結界はトラックの全力疾走に耐えられるほどの強度は持っているが、今にも崩れそうになっていた。もう少し強ければ割れるかもしれない。

 そして、結界を張っていても、衝撃は通るのか?いや衝撃というより、強い衝撃なら、結界ごと押すことはできるようだ。

 結界は女性を包む球状に展開されていたと思われる。

 結界は発動して、数秒で見えなくなる。

 くらいかな?

 後のことは今はあまり関係なさそうだ。

 女性がどこかから降って来たとか、トラックの運転手はどこに行ったんだとか、それは不審者には関係ないだろう。多分。

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