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第11話 1日前の日常

 なんで俺はあの女性に殺された?

 未覚醒者って言ってたか?

 覚醒者が、あの不審者と、あの女性で、俺は未覚醒?覚醒者は未覚醒者を殺す必要がある?いや、なぜ俺は未覚醒なんだ?死んだら時が戻る能力を持っているんだから覚醒してるんじゃないのか?


「ダメだ、わからない」


 最近ずっとこんな考え事ばかりだな。

 気分転換は大切だ。ずっと張り詰めていたんじゃ、いつか切れてしまうからな。

 そういえば、今日の日付を確認していなかった。

 俺はスマホを取り出した。


「5月14日か」






「亜美はまだ起きていないのか」


 リビングに降りてきた俺は、朝食の準備を始めた。


「そういえば、最近料理してないな」


 俺は食パンをオーブントースターで焼き、フライパンで目玉焼きを作り、サラダを用意する。以上。


 ・・・これを料理と呼んでいいのだろうか。


 いや、立派な料理さ、俺の中ではな。

 そうやって自問自答しながら朝食を作った。

 朝食ができたが、亜美が起きてこない。


「亜美ー!朝食できたぞー・・・亜美ー?」


 返事がない。まだ寝てるのかな?


「起こしに行くか」


 そう言って、階段を上がろうとしたとき、玄関の扉が開いた。


「ただいま」


「え、ああ、おかえり、どこ行ってたんだ?」


「・・・どこでもいいでしょ、シャワー浴びてくる」


「ああ、あ、朝食はできてるから」


「うん」


 そうか、14日は確か亜美は外泊してたな。

 メシ食うか。


 亜美のシャワーは長い。特に外泊した後とかは1時間以上は出てこない。つまり俺が家を出ても入っている。

 いつも思うけど、学校によく間に合うよな。


「先行ってるからなー!」






 登校中、今日は少し道を変えてみた。


「蓮とはあそこで会うから、待機しているとしたらあそこかな」


 蓮が待機しているであろう場所に後ろから近づき、驚かしてやろうと思う。


「ふっふっふー、蓮の行動は、手に取るようにわかるんだよ、俺は未来から来た男だからな!」


 気が乗って、手を顔に当て、カッコイイポーズを取っていた。


「ママー、あの人誰と話してるのー?」


「シッ!見ちゃいけません!」


「なんでー?」


 俺は崩れ落ちた。


「周りを見てなかった・・・」


 最近いつもそうだ、俺は恥ずかしい目にばっかあってる。呪われているのか?


 いや、自業自得である。


「きっとそうだ、呪われているに違いない」


 いや、自業自得で


「何が呪われてるの?」


「わぁ!」


 蓮が俺を覗き込んでいた。


「い、いや、なんでもない」


 俺が蓮を驚かすつもりが、逆に驚かされていた。

 人生、うまくいかないことばかりだ。


「?まぁいいや、おざい!」


「おはよ」


 蓮が元気に挨拶をしてきた。

 蓮は俺を何か期待した眼差しで見てくる。


「?どうしたの?今日元気ない?」


「そうか?」


「そうだよ!いつもだったら、「なんだおざいって」って聞いてくるのに」


「おはようございますの略語だろ」


「!?なんで!なんで知ってるの!昨日夜私が必死に頑張って3秒かけて考えた挨拶なのに!」


「一瞬じゃねぇか!」


「何行ってるの!3秒だよ!3秒!一瞬じゃないよ!一瞬は、シュン!だよ!3秒は1、2、3だよ!こーんなにも違うんだから一緒にしないで!例えば25メートルを一瞬で走る人と3秒で走る人はぜーんぜん違うでしょ!」


「くっ、随分短いってことを言いたかっただけなのに、そんな例えを出されたら、うまく否定できない」


「1秒を笑うものは1秒に泣くんだから!」


「陸上やってない俺はそんな機会あまりなさそうだけどな」


「そんなこと言ってると、いつか後悔するよ!」


「しないしない」


「じゃあいいもん!、そういえば、今日は違う道で」


 俺は学校まで、蓮と他愛ない話を繰り返していた。

 蓮や隆との会話はいい気分転換になる。






 学校の教室の席に着くと、隆がよってきた。

 今回は、隆を止めてみよう。


「ミッションスタート」


「望何か聞いて欲しいことがあるのかそうかなら聞こう」


「実は昨日」


「なんだ俺には言えないのか」


「いや今」


「そうか俺はお前の友達だと思ってたんだかな」


「言おうと」


「そう思っていたのは俺だけだったのかさよなら望」


 やばい、隆は俺が何を言おうと言葉を止める気が一切ない、なんとか止める方法を考えないと!


「もう会うことはないだろう」


「蓮は可愛いよな」


「そうだろ!そうだろ!!妹は可愛い!可愛すぎる!走っている時も食べている時も寝ている時も!何もかもが可愛く何もかもが輝いている!誰もがその輝きに目を奪われ、誰もがその可愛さに心を奪われる!」


 やばい、別の意味で止まらなくなった。


「ああ、俺ではその可愛さを、可憐さを、眩しさを表現しきることができない、どうして俺の語彙力は少ないんだ!」


 やばい、嘆きだした。


「可愛いは正義という言葉がある、ああそうだとも!妹は可愛い!妹は正義!妹は正義なんだ!いや待て、妹が大正義であることには一切の疑問の余地が入り込むことはありえないが、可愛くない俺はどうなる、可愛くない、つまり俺は悪ということか、いや!正義の反対はなんだ!悪か、いいや違う!正義の反対はまた別の正義だ!つまり、俺は正義、俺は正義ということは俺は可愛いぃぃぃ!!!!!!・・・・・どうしてこうなってしまったんだ・・・」


 隆は机に拳を打ち付け、絶望している。確かに隆は可愛いとは程遠いな。


 こうして隆の暴走は、ひとりでに収束して行ったのであった。

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