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第10話 認識阻害

 俺は学校が終わった後、部活に行かずに、隆に教えてもらった片道交差点に来ていた。


「まだ時間はあるな」


 この時間で、何をするか、とりあえず、片道交差点が見える近くの飲食店に入った。そしてドリンクバーだけ頼み、何をするか考えた。


 そういえば、俺は、その覚醒者らしき女性に対する説得材料を持っていない。お金なんて、まだ中学生の俺にはほとんどないし、何かしら有益な情報を持っているわけでも、何か力になれることがあるわけでもない。


「どうしよう?」


 最悪、説得できるまでトライし続ける方法もある。あるが、そんなことはしたくない。それは自殺をし続けるってことだ、精神が耐えられる気がしない。


「どうするか」






 17時30分。

 今まで考え続けたが、特に何も思い浮かばなかった。

 隆が言うには17時40分から50分の間くらいと言っていたが、ずれていた時のためにも、もう見ておこう。

 今の片道交差点は、車通りはそれなりにあるな。少なくとも車が途切れることはないだろうってくらいか。

 あ、猫がいる、子猫と親猫かな?可愛い。

 あそこの店の看板は結構汚れてるな、いや、味があるって言ったほうがいいのかな?

 小学生が走り回っているな、なんか微笑ましい。

 道路の端に赤子がいるな、

 おばあちゃんが歩道橋を登ろうとしている。荷物が重そうだ。

 勢いよくトラックが赤子に突っ込んで行っている、

 あ、おばあちゃんの荷物を持ってあげてる優しいお兄さんがいる。親切な人もいるんだな。

 なんかすごい音がしたな。

 あ、親猫と子猫が何処かに行っちゃった。

 赤子の前に女性が立ち、その前にものすごい潰れているトラックがあった。

 お婆ちゃんが優しいお兄さんに感謝している。

 車通りは止まないな、あれ、なんか今すごい痛車が通ったぞ、俺痛車見たの初めてだ、

 あそこの

 ・・・・・・・・


「あれ?」

 いつのまにか18時になっていた。

 トラックと女性と赤子は?

 もしかして、時間が違う?いや、場所を間違えた?

 隆が言ってたようにトラックが激突してたりするなら普通気づくはずだし、なんでだ?


「君、見てた?」


 反対の席の黒髪ロングの女性が聞いてきた。


「?何がですか?」


 その瞬間、その女性の目の色が、赤から紫色に変わっているように見えた。


「あら、君、未覚醒者なのね」


「え?」


「お姉さんに見つかってよかったわね」


「?」


「私は、楽に殺してあげるから」


 目の前の女性がナイフを取り出した。


「?」


 俺は首を切られて死んだ。


「さて、え?きゃあ!」


 世界は光に包まれた。






 チリリリリリリン!チリリリリリリン!


「ハッ!・・・え、なんだ、今の」


 チリリリリリリン!チリリリリリガチャン


 目覚まし時計を止めた、


「まて、待て待て、なんだ今のは」


 鳥肌が立っていた。怖気がした。俺は、何を見ていたんだ、俺は何をしていたんだ。


「ありえないだろ、どうなってんだ、」


 俺は、道の端にいた赤子を、それに突っ込んでいくトラックを、そして、赤子を守った女性を、潰れたトラックを、


「何もおかしいと、感じていなかった」


 途中から、反対の席に女性がいたことも、ナイフを取り出したことも、刺されたことも、

 "なんの違和感も感じていなかった"


「どう言うことだよ、なんだよこれ」


 頭がおかしくなったのかと思った。

 ふと、隆の話を思い出した。


(そしてもう一つ、誰もそのことを気にしていた人間がいなかったんだ。その周りの人間は、普通に歩いていた。何事もなかったかのように。普通なら写真でもとる人間や、立ち止まる人がいても良さそうなのだが)


 そうか、そうだったのか、なんで周りの人が普通だったのかがわかった。あの光景に、なんの違和感も抱かなかったからだ。

 あれが


「認識阻害か」


 そして、あの女性は俺を殺した。つまりあの不審者の仲間なのかもしれない。少なくとも、協力してはくれないだろう。


 やばい、詰んだ、詰んだ気がする。

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