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大量破壊兵器

イ)大量破壊兵器とは

 大量破壊兵器とは、その名の通り「大量に破壊する兵器」です。

 通常の兵器との大きな違いは、その影響が極めて大きく、そして比較的長期間にわたって影響が残留する点にあります。

 決して、これは使ったら全てが解決する魔法の杖ではありません。戦略的観点から使用の是非を慎重に判断してください。

 ここでは代表的な大量破壊兵器であるN(核)B(生物)C(化学)をざっくり見ていきましょう。


ロ)核兵器

 戦略兵器といえばやっぱりコレ、核兵器です。NBCのNにあたります。

 今回はその原理ではなく、その効果に絞って解説したいと思います。(原理を知りたい方は図書館か「核兵器 原理」でお調べください。物理の教科書があるなら傍に置いた方が良いと思います)(因みにコレだけで本が一冊以上書けます)

 威力はモノに依りますが、戦略核ともなれば都市一つを無差別に焼き、一個師団を壊滅させ、更には広大な放射能汚染により長期に渡ってその地域の使用を不可能にします。

 核兵器は大きく2つ、戦略核兵器と戦術核兵器に分けられます。

 戦略核兵器は国家が国家を目標として用い、戦術核兵器は軍隊が軍隊を目標として用います。


 その他にも、核兵器は起爆の際に電磁パルス(EMP)を放出します。

 EMPに対し対策されていない電子機器にこのEMPを照射すると、電子機器の中の集積回路が焼ききれてしまい、電子機器が使用不可能になってしまいます。

 応用的な使用方法として、高高度(大気圏外)で爆発させ、広範囲の電子機器を使用不可能にし、社会生活を破壊させる事が出来ます。

 しかし、EMP対策された軍需品や、そもそも電子機器が無い異世界に対しては、大きな効果は期待できません。


 核兵器の効果は大きく6つ、熱線、爆風、放射線、残留放射能、放射性降下物、そしてEMPがあります。


 核爆弾の起爆直後、火球と呼ばれるプラズマの塊が生成され、それから強烈な熱線が放射されます。

 その威力は凄まじく、一定距離内のあらゆる物質を蒸発させ、クレーターを生成する事さえ可能です。


 また、核爆弾の起爆に伴って爆心地から外側に向かって強烈な風が発生し、周囲のあらゆるものをなぎ倒します。

 その後、火球によって発生する猛烈な上昇気流により、爆心地に向かって強烈な風が発生します。

 要するに爆風でビンタされる訳です。

 その力は痛いなんてものではなく、場合によっては高層建造物が崩壊します。


 そして放射線。核爆弾が起爆した瞬間に周囲に大量の放射線が放出されます。

 爆発よりもこの効果を重視した中性子爆弾というブツもありますが、「爆発が小さいけど生物への影響が大きい核爆弾」という解釈で大体あってます。

 生物が大量の放射線を浴びると、場合によっては即死したり、即死を免れても遺伝子構造の破綻により遠からず死亡します。

 恐ろしいのが、遺伝子に作用することにより遺伝子障害の原因となる点で、起爆後何十年も影響が残存します。


 残留放射能は、核爆弾が起爆した後に発生する大量の放射性の塵や、放射化してしまった物体により、爆心地周辺が危険な状態になる事を言います。

 放射能とは、放射性物質が持つ放射線を発する力であるので一見この言葉は正しくないように見えるのですが、『地域に残留した放射能』といったニュアンスであり、各所で用いられている用語なので、もし感想等で指摘された場合には適当な論文や資料(相当な権威がある所が良いです)を貼って対応する事をオススメします。

 放射化とは、もともと放射性物質では無かった物質が、強い放射線を浴びることによって放射性同位体、つまり放射能を得てしまう現象です。誘導放射能とも言います。

 残留放射能は、起爆後一週間程度で1000分の1になるので、核爆弾の起爆後は最低一週間屋内に退避することが推奨されています。

 もし核戦争中にこの作品を読んでいる方がいらっしゃるなら、一週間、少なくとも三日間(72時間)は安全な場所で耐えて下さいね。


 次に放射性降下物ですが、これは核兵器によって灰となった様々なものが上昇気流によって巻き上がり、『死の灰』として降ってきたり、一部は成層圏まで舞い上がって太陽の光を遮ったりするものです。

 これにより、大規模な核戦争により世界各地でボカスカ核兵器が使用されると、太陽の光が完全に遮られ、「核の冬」が到来すると言われています。

 これは、太陽の光が完全に遮られた事により地表に太陽エネルギーが届かず、最終的に地球は死の星になる(かもしれない)という恐ろしい代物です。(同じ様な事象は大規模な火山噴火等でも発生する可能性がある――というか多分噴火の方が甚大な被害を長期に渡り及ぼしますが)


 EMPは電磁パルスを意味し、簡単に説明しようとすると「電子機器が死ぬやべーやつ」と説明できます。

 核兵器の使用だけで無く、これを発信する為の機器を用いれば発生させる事が出来ます。

 現代兵器の殆どはこれに対抗する為の機能が備わっていますが、あんまり強いEMPを食らうと機能停止に陥ったり、最悪破壊されてしまうので気をつけましょう。


 創作世界では良く、怪獣に対する最終兵器として使われますが、大概使った相手は生き残ってます。どうして。

 因みに先に述べたEMPを用いる事により、敵の民間電子設備を軒並み破壊する事が可能であるため、核兵器の直接使用が躊躇われる場合や、本格的核攻撃の直前に用いて敵に負担を強いるといった活用法があります。


ハ)生物兵器

 生物兵器は、最も古い大量破壊兵器です。NBCのBにあたり、そのものを生物剤と呼びます。

 映画等では、ゾンビやクリーチャーとして登場しますが、現実世界での生物兵器は感染症です。

 先に、『最も古い』と述べましたが、他の大量破壊兵器が主に19~20世紀と、近現代に開発され、使用されたのに対し、生物兵器は、有史以来、攻城戦等で感染者の死体を城壁に投げ入れたりする等の手段によって運用されてきました。


 特筆すべき点は、即効性が無い一方で、社会全体に与える影響が大きく、効果の限定が困難で、かつ安価に製造できるという点です。


 このような特性を持つ生物兵器は、正規戦での運用が難しく、現代では正規軍は保有していません。少なくとも保有していないとされています。

 一方で、安価で大きな影響を及ぼす事が出来る事から、テロリストが頻繁に用います。

 また、化学兵器と同じく、コストの関係で核兵器を保有できない発展途上国等が『貧者の核兵器』として保有するケースがあります。

 オウム真理教が生物兵器の一種である炭疽菌を用いてテロを行うとした事がありますが、失敗しました。よかった。

 因みに創作ではゾンビ化するウイルスとして用いられたりします。こわい。


ニ)化学兵器

 化学兵器は、第一次世界大戦で広く用いられ、現在でも法執行機関等が頻繁に用いる大量破壊兵器です。NBCのCにあたり、そのものを化学剤と呼ます。

 致死性のものと非致死性のものがあり、どちらも国家間が戦う戦場での使用は禁止されていますが、非致死性のものは先に述べた通り法執行機関等が頻繁に用います。

 尚、一般に非致死性の化学剤は大量破壊兵器に含まれませんが、本稿で解説します。


 この兵器の特筆すべき点は、広範囲に迅速かつ甚大な影響を与え、かつ安価である点です。


 我が国ではオウム真理教が地下鉄サリン事件でサリンを発散させ、大きな被害が出たこと等が印象深いですが、近代化学兵器の始祖は第一次世界大戦にまで遡ります。

 当時のドイツ帝国軍は、膠着した塹壕を無力化する兵器を求めていました。

 ハーバーボッシュ法を開発したフリッツ・ハーバーは、塩素ガスを敵に対して散布する事を提案し、1915年にはボリモウにてロシア軍に塩素ガスが使用されました。

 が、当時の塩素ガス散布法は、風向きを読み、タイミングを合わせてボンベを開放するという極めて原始的なモノで、味方にも相当な被害が出てしまいました。因みにその後も何回か、用い、敵味方に少なくない損害が出ています。

 しかしながら、その後砲弾にガスを充填し敵陣地へ撃ち込むという手法が開発され、第一次大戦中、双方が積極的に用いました。

 今日に至るまで、歩兵の携行品にガスマスクが含まれているのは、そういった歴史がある訳です。

 因みにですが、かの有名なナチス・ドイツの指導者、アドルフ・ヒトラーは、一次大戦中にマスタードガス攻撃を受け失明しかけています。閑話として入れても良いかも知れませんね。


 法執行機関が用いる化学兵器とその使用方法は、大きく2つ、スプレー式と弾体式があり、化学剤にはOCオレオレジン・カプシカムCN(クロロアセトフェノン)CSクロロベンジリデンマロノニトリルが主に使用されます。

 特に後ろの2つを『催涙ガス』と呼称する事が多いです。


 さて、化学兵器禁止条約では、法執行機関が国内に於いて、暴徒鎮圧その他法執行の目的で化学兵器を使用する事は認められています。

 化学兵器と言うと中々に凶悪な響きがありますが、催涙ガスと言うと少々穏やかな雰囲気がしますよね?しない?して下さい。


 では使用方法から順に解説して参りましょう。

 スプレー式は、一般に『催涙スプレー』とか『防犯スプレー』等と呼ばれ、最も一般的に見られる方法です。

 仕組みとしては、内部の化学剤を液体/圧縮ガス若しくはポンプによって噴射し、目標に化学剤を浴びせる事で行動を抑制し、制圧を容易にするといったモノです。

 描写上注意しなければならないのは、一般に催涙スプレーとは、殺虫剤の様にエアゾルを噴射するモノでは無く、水鉄砲状、或いはジェット状、泡状等の、風に強く、そして長距離まで到達しやすい形で化学剤を噴射するモノである点です。

 これは、相手が刃物等の凶器を持っている事も想定される訳ですから、長い射程が必要となると同時に、屋外でも使用されるという特性に依るものです。

 ポケットに収まるものから、大型水筒の様に大きなもの、放水銃に混ぜての使用まで、様々なサイズが存在します。

 この方式に用いられる化学剤の主流はOCですが、稀にCNやCSを用いているモノもあります。


 弾体式は、投擲、若しくは発射機を用いて使用される、暴徒鎮圧等の高烈度環境下で見られる方法です。

 その仕組みとしては、弾体内部の化学剤を、火薬若しくは液体/圧縮ガス或いは弾体の自壊によって噴出させ、広範囲或いは個人に影響を与え、群衆や暴徒を制圧するといったモノです。

 描写上注意しなければならないのは、発射機を用いる場合には一般に曲射兵器であり、群衆に対して直射使用すると、死人や怪我人が出かねないという危険な器具であると同時に、かなり積極的に直射使用されるモノであるという事です。

 過激な暴徒に対して37/40mm催涙弾を直射する治安部隊の迫力は文字を通じても読者に訴えかけるモノがあり、場合によっては人体に突き刺さり、苦痛に悶え、或いは既に死んだ暴徒の身体から催涙効果がある白煙が噴出するという中々にインパクトがある描写が可能です。是非使ってみて下さい。

 手で投げるモノから、火薬の力を用いて発射するモノ、圧縮ガスを用いて発射するモノまで、幅広い方法があります。

 一般に、広範囲に影響を与えたい場合にはCN若しくはCS、個人に強い影響を与えたい場合にはOCが使われる傾向があります。


 法執行機関が用いる非致死性の化学剤には大きく3つ、OCオレオレジン・カプシカムCN(クロロアセトフェノン)CSクロロベンジリデンマロノニトリルがあります。

 OCはトウガラシから抽出した成分で、泥酔者や麻薬中毒者等に対しても効果があります。主に呼吸器や眼球、皮膚に作用し、感覚器を刺激することによって行動を抑制します。が、揮発性が低く、広範囲に影響を及ぼすには向いていません。

 CN、CSは化学的に合成され、OCと同様に呼吸器、眼球、皮膚に作用しますが、泥酔者や麻薬中毒者に対して影響が少ない可能性があるとされています。しかし、揮発性が高く広範囲に影響を及ぼすと同時に、使用後は迅速に大気中に発散してしまう為、暴徒鎮圧等で広く用いられています。




まとめです


イ)大量破壊兵器の定義だよ

ロ)核兵器の説明だよ

  熱線……すごい強い光だよ。死ぬ。

  爆風……すごい強い風だよ。死ぬ。

  放射線……遺伝子をズタズタにするよ。死ぬ。

  残留放射能……使ったあとにも残るぞ!死ぬ。

  放射性降下物……所謂死の灰だ。対策しないと死ぬ。

  EMP……電子機器が死んじゃうぞ。文明が死んで人も死ぬ。

ハ)生物兵器の説明だよ

  特徴……戦場では用いにくいけど、未知の病原体って文明を殺せるぞ!

ニ)化学兵器の説明だよ

  特徴……閉所空間への効果はばつぐんだ!ガスマスクは大事だぞ!

  警察……暴徒鎮圧とかに、非致死性のモノを沢山使うぞ!死なない!

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