「かめはめ波」を撃てるようになった少年
現代のおとぎ話…
ある所に、いつも「チビ」とか「メガネ」と呼ばれて、バカにされている男の子がいました。
彼は、「ボクがもっと強ければバカにされることなんてないのになぁ」と思っていました。
ある時、虫の声を聞きながら、ベランダで夜空を見ていると、星が降り始めました。
彼は、はじめは、「スゲー」と思って見ていましたが、ふと手を合わせ、目をつむり、流れ星にお祈りをしてみました。
すると星は言いました。
「一つだけ願いをかなえてあげましょう」
彼は、びっくりして、あせって言いました。
「かめはめ波がうてるようになりたい!」
流れ星は、「分かりました。かなえてあげます」と言って、水平線の向こうに消えていきました。
最初、彼は、お姉さんに「ボク、かめはめ波がうてるようになったよ!」と自慢しました。
でも、お姉さんは全然興味がなさそうでした。
次に、彼は、お母さんに「ボク、かめはめ波がうてるようになったよ!」と自慢しました。
でも、お母さんは全然興味がなさそうでした。
最後に、彼は、お父さんに「ボク、かめはめ波がうてるようになったよ!」と自慢しました。
お父さんは、「それはすごいなー、見せてよ」と言いました。
彼は、お父さんと裏山に行って、「かめはめ波」を山に向かって撃ってみました。
すると山の上半分がなくなってしまいました。
お父さんと彼は、「ヤバッ」と思って、「かめはめ波」を撃ったことを内緒にしました。
ある休みの日、青空の下、彼が校庭で遊んでいると、いじめっ子たちがやってきました。
彼らは「チビ」とか「メガネ」とか言ってはやし立てるので、彼は、つい「あっち行け! かめはめ波をうつぞ!」と言ってしまいました。
彼らが「うてるもんなら、うってみろー」と言ってバカにするので、彼は、つい「かめはめ波」を撃ってしまいました。
すると校舎の上半分がなくなってしまいました。
いじめっ子と彼は、「ヤバッ」と思って、「かめはめ波」を撃ったことを内緒にしました。
それから、彼はいじめられることがなくなり、「かめはめ波」を撃つこともなくなりました。
彼は高校受験の時、特技は「かめはめ波」と言いました。
すると、第一志望は落ちたので、公立高校に進学しました。
彼は大学受験の時、特技は「かめはめ波」と言いました。
すると、第一志望は落ちたので、専門学校に進学しました。
彼は就職試験の時、特技は「かめはめ波」と言うことをやめました。
すると、第一志望に合格しました。
彼は、一生懸命に働いて、やさしい女性と結婚して、幸せに暮らしました。
彼は、大人になってからも、いろんなあだ名を付けられましたが、もう全然気にしませんでした。
彼が「かめはめ波」を撃つことはありませんでした。
彼がおじいさんになった時、超大型の台風がやってきました。
このまま上陸したら、たくさんの人が死んで、たくさんの畑や田んぼがダメになり、河が氾濫し、たくさんの家が壊されて流されてしまうと、みんな大騒ぎでした。
彼は家族が止めるなか、波の荒れ狂う海岸に行って、暗い空を見上げました。
そして「かめはめ波」を撃ちました。
すると台風は消えてなくなりました。
みんなは喜びました。「奇跡だ」と言いました。
彼が「亀仙人」と呼ばれるようになったのは、この時からだそうです。
おしまい