願いを、小説に託して
作者は病んでるのでしょうか……
今ならまだ間に合います。
決して面白い話ではありません。
問題提起でもありません。
議論をしたいわけでもありません。
ただ作者が、頭の中に止めておけなかったことを書いているだけです。
ただ題名が気になっただけなら、ブラウザバックすることをお勧めいたします。
それでも読むというのなら、止めませんが。
……最近、ふと感じる瞬間がある。
どうして私は小説を書いているんだろう、と。
小説家を目指して勉強してきたわけじゃない。
文法や小説のルールなんて知りもしない。
読み手側がどんな気持ちで読んでいるかなんてわからない。
それでも、書き続けているのは何故なんだろう。
――――それができる環境だから?
確かにそれはある。
できる状況で、時間が生まれれば手を出したくなる。
人間なんてそんなものだと思う、興味があれば尚更。
――――他の人の小説を読んでるうちに自分でも書きたくなった?
気持ちはわかる。
ましてやそこに投稿しているのが、自分と同じような人だと思えば尚更。
自分にもできるかもしれない、今はできなくても、できるようになるかもしれない。
自分なら、自分だったら、そう考えられるのはきっと悪いことじゃない。
――――自分の理想を誰かに聞いてほしかった?
そうかもしれない。
掲示板ネタの1つに「ぼくのかんがえたさいこうの(さいきょうの)なになに」とかあったりする。
そういうのはなんだかんだで誰かがその趣旨に沿った内容を出してたりする。
自分の考えを誰かに伝えたいのかもしれない。
でも、それらは全て理由の一部でしか無いような気がする。
他にもきっと色んな理由があるんだと思う、評価されたいとか、書籍化してみたいとか、色んな理由が。
色んなものが少しずつ集まって、大きなものになって、執筆するという意思になっているのかもしれない。
でも、どうしてだろう。
私は最近、何かに操られてでもいるのか、この考えをしたときには必ず1つのことに辿り着く。
――――願い。
言い換えるなら、願望。
聞こえのよくない言葉を使うなら、欲望。
私は、小説に願いを託しているのかもしれない。
――――――――――
私が最初に書いたのは、異世界主人公最強もの。
格好よくて、強い主人公。
なんでもできて、なんでも解決して、どうしようもないことなんて1つも無い。
どうしようもないように見えても、ご都合主義で周りがなんとかしてくれる。
全てが主人公にとって都合よく動き、悪いことなんて1つも起こらない。
何をやっても成功し、何があっても解決し、何が何でも格好よく決める。
それが、理想だった。
きっとそれは、なりたい「自分」だったのかもしれない。
私はきっと、なんでもできるようになりたかった。
私はきっと、なんでも成功できる人になりたかった。
私はきっと、悪いことなんて1つもない人生を送りたかった。
今の自分は、環境が悪いだけなんだと思いたかった。
ここじゃないどこかであれば、自分にとって都合のいい場所であれば、都合のいい能力を持っていれば。
きっと色んな人の小説を読んでいるうちに、自分の中の理想がどんどん膨らんでいったんだと思う。
それが私の頭に納まりきらなくなって、現実という荒波にガリガリと削られていって、自分の中から薄れていくのが怖かったのかもしれない。
だから、きっと書いたんだと思う。
理想の自分はこうなんだと、何かに残したかったんだと思う。
その理想を聞いてくれる人を探していたんだと思う。
理想の自分を聞いて、褒めてくれる人を求めていたんだと思う。
例えば、理想を小説にしたのなら、私は何を理想としていたのだろう。
私はどんな願いを、小説に託したのだろう。
異世界に転生したのは、今の環境を変えたいと願う気持ちからだろうか?
主人公を最強にしたのは、自分が一番になりたいという願いからだろうか?
格好よくしたのは、自分が格好いいと思われたかったからだろうか?
こう考えるようになってから、人の小説を見るときに同じことを考えるようになった。
異世界転生ものは、作者さんが自分の環境を変えたいと思っているのだろうか?
主人公を最強にしたのは、一番になりたいと思っているからだろうか?
格好よくしたのは、格好いいと思われたいんだろうか?
ハーレムにしたのは、女性にモテる自分になりたいから?
政治に関わる話にしたのは、今の政治に不満があるから?
ゲスな男に絡まれる話があったのは、ゲスな男に絡まれたことがあるから?
誰かに復讐するのは、復讐したい誰かがいるから?
きっとこんな考えで誰かの小説を読むのは、よくないことだ。
中には本当に小説家になりたい人や、本気で小説家を目指すために練習として使っている人もいるんだろう。
勉強して、面白い展開を考えて、その結果が今言ったような話になっている人もいるんだろう。
だから、こんな考えを持って誰かの小説を読むのは、きっと作者に対して失礼だ。
それでも、私は考えてしまう。
この作者の「願い」はなんなんだろう、と。
私の「願い」はなんなんだろう、と。
私の願いは、きっとたくさんある。
私の頭の中に納まりきらないくらい、たくさんある。
書いても書いても、いや、きっと書いているからこそなんだろう、後から後から願いが生まれてくる。
私の願いは、私の頭の中に入れておくには、多すぎる。
だから、私はきっと小説を書いているんだろう。
たくさんの願いを、主人公にかなえてもらえるように。
――――私は、小説を書いている。
願いを、小説に託して。
作者は、きっと病んでるんです。
こんな文章を読んでいただきありがとうございました。