カルラの秘密
物事には原因があり結果がある。人生は日々それらの繰り返しで紡がれていく。
「僕が何者なのか……その答えを問えば、教えていただけますか? レア殿」
微かに寝息をたてるアスラを間におき対峙するレアは、カルラの疲労と睡魔によって重く閉ざされた瞼を沈黙で見返した。
「…… すみません。僕は何と愚かなことを……! 」
音にすることを抑えていた言葉が、不意に溢れ落ちたことに、カルラは自ら驚きと後悔を滲ませる。
「外が白んできましたね。アスラには、今日は安静にしておくように言っておいてください。学園へは欠席の連絡をいれておきますから。僕もさすがに力を使い過ぎたようです。少し眠ります」
先の失言を消し去るように、足早に退出していきかけたカルラの背中へ、遅れて答えが届く。
「そなたは……次期獣王となる者であろう?」
運命の女神は、時に気まぐれをおこす。すべては混乱へと導く布石として……。
「……からかうなら相手をお間違えですよ、レア殿」
「はて、おかしなことを……。教えてくれと申した故、与えてやったというに」
「ええ。愚かしい問いへ答えをくださったことには感謝しますが、あなたが真実を口にするとは限らないでしょう?」
「人の子は疑ぐり深いのお」
レアは、 まだ目覚めぬアスラの頬をそっと撫でる。
「良い出来じゃ。しかし、アスラは魔術が使えぬと泣く故、ちと細工をしておいてやるかの」
全身が泡立つ痛みのせいで、アスラは最悪の気分で目覚めた。




