迷子の妖精さん
自分が『周りの人間と違う』ことに気付いたのは、14歳……案外鈍いらしい俺。
‘妖精さん’と俺が勝手に命名したこいつらは、俺の記憶の始まりから存在している。
3歳くらいだろうか?
彼らがネバーランドへ案内してくれるティンカーベルでないことは、明白。
しかし、昆虫の翅のようなもので浮遊する姿から、子供の語彙力では妖怪か妖精くらいが限界だったのだろう。
俺の部屋に住み着いている妖精さんは14体。子猫サイズがほとんどなので、圧迫感はあまりない。
動物的なモノや物質的なモノ植物的なモノ……外見は様々だ。大体が勝手にゴロゴロくつろぎし放題で、俺の言葉に反応することはない。
唯一、俺の怒りと同調するのが、見た目ピンクのサボテン型抱き枕……他の妖精さんと違って、大きくて、レアものって意味合いから、そのまんまレアと呼んでいる。
存在理由は謎だが、何の実害もないので、彼らに関して深く考えないまま日々を過ごしていた俺に、ハーフの従妹が現れたのは、ひと月前。全くの寝耳に水だったが、俺が本当に驚いたのは、カルラが俺と同じように、妖精さんが見えるということだった。
カルラもまた、人非ざるモノと共存していた。
ミヨとリノがそれだ。俺のところと同種というが、格差ありすぎ……。
彼らは霊体に近い、気の塊だそうで、波長の合う人間のもとに寄り添う習性があるらい。
もともと棲む世界が違う彼らが、何らかのアクシデントで、人間界へ迷い込んでしまっているのだそうだ。
妖精さんたちは、迷子だった。
可哀想に、帰る手段は分からないらしい。
「おいおい、もう9時かよ? カルラの迷惑なモーニングコールのせいで、午前の講義、サボりになったじゃないか!」
とりあえず、同じ講義とってる友人に欠席連絡と、学食で落ち合うようにメールしといて、俺は猛スピードで出かける準備を整える。
そして、急ぎ玄関を出ると、自宅屋根からリノに声をかけられた。
見れば、リノがにこやかに手を振る後ろで、ミヨがこちらをジッと見詰めている……というか、睨んでる?
知らぬ間に怒りをかっていたとは、気付きようもなく……。
気付いたときには、運命の分岐点に、俺は立っていた。