カルラの誤算
カルラは目を閉じていた。
広間のざわめきと、自分に向けられた無遠慮な視線のすべてに、沈黙を返していた。
凛とたたずむ外見とは裏腹に、彼の胸中は穏やかではない。
(最下位クラス確実のアスラが、トップ通過だなんて……目眩がする)
今、進行しているのは、新入生の選別式。
かけられた暗示から、いかに早く己を解放し得るかで、実力を測る。そして、個々の能力に応じたクラスへ振り分けられるのだ。
その動向を、新入生各自に付けられた管理者達が、一様に見守っていた。
「Aクラス、二人目を報告いたします」
主を失って、棒立ちになっている生徒たちの上空を、一羽の白いカラスが旋回している。
このカラスの口ばしを通して、音声が届けられているようだ。
「シムール家……ユイカ。管理者サボー。以上」
シムール家とはカルラの家名である。
(?…ユイカ?……誰だ?)
カルラは目を開けた。
上位者2名を独占した、賞賛と嫉妬の的にありながら、カルラの内心を言い知れぬ不安が襲う。
(管理者サボー? 無論うちにはそんなヤツはいないが……。待てよ? サボー?……サボテン…?…まさか…)
自ら導き出した確信に、本当に目眩がしてきたカルラであった。