柿?
あ~痛い痛いっ! 痛いって! このバカガラス!
つ、つ、く、な~! 穴開きそうだろ! 俺!
うおっ! 揺れてきた。
酔う! 酔うよ! 俺、横揺れには弱いんだから!
や~め~ろ~おおお……うっ、気持ちワルッ。
だめだ。
考えろ、俺。
これは心理戦だ。敵に握られてる俺の主導権を、取り返さねば。
でも、どうしようか?今のところ、援軍は望み薄だしな。
この柿化の暗示を解くには……?
……俺って暗示かかりやすいって、ミヨが言ってたけど、自己暗示とかもありなのかな?
よし。ほかに対抗策も思い付かないし、やってみるか。
俺は人間! 地に足の着いた人間!
「柿じゃない!……うわ!」
声出た!
「おおっ手だ~足もある。やったあっ!戻ったよ、俺っ!」
俺は自分で自分を抱きしめた。
「Aクラスへようこそ」
背後から不意に声をかけられ、ビクッとして振り向く。
「おや、君は、カルラ殿のところの……」
そこには見覚えのある老人が。
「あ、学園長。どうも、その……はじめまして。一之瀬アスラです」
軽く会釈をする。
無事生還してテンション高めな様を見られたかと思うと、少しばかり気まずい。
「残念だがワシは学園長ではないぞ、アスラ君。このAクラスの担任を任されている、いち教師にすぎぬよ」
「Aクラス?」
ぐるっと見回す。明らかにさっきまでいた講堂ではない。
六畳程の木造の殺風景な小部屋に、俺は担任という老人と二人きり……。
「クラスはA~Zまでランク分けされておって、Aクラスが勿論トップなんだが……。
いまだに鉄の剣を持った者が、このクラスへ来るとは、こりゃ前代未聞の珍事よの!」
がっはっはっはっ、と愉快そうに大笑いしている老人を、俺は呆然と見返していた。
トップ、クラス?! 誰が?!