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【その3】 入学式

 入学式当日。

 

 白い大理石の床と壁で巡らされた、円形の広間。

 高く、吹き抜けになっている天井にある小さな窓から、降り注ぐ光。

 そこに俺を含んだ30人程の新入生が、皆一様に朱色の制服を着て、整列している。男は膝丈のジャケットにズボン。女はワンピースにケープを羽織っていた。

 ミヨの能力で、屋敷からダイレクトにこの広間へ来た為、俺には外の様子は全く分からない。

 

 前方の檀上では、ボソボソと祝辞?を述べる学園長らしい老人。そして、その両脇には、お偉いさんの面々が居並ぶ。煌びやかな金の刺繍を施した、純白のローブをまとう数名の男女……の中にカルラを見つけた俺。いつにもまして偉そうだな。


《カルラ様は、ハザマの世界を治める一族の一つを担っておいでなのですよ。アスラ様の世界でいう、いわゆる王侯貴族のようなものですわ》


 ミヨの言葉を思い出した。

 偉そうではなくて、事実、偉いんだなあいつは。 

  

 それにしても……その他大勢の中から数歩さがって、カルラを客観的に眺めると、セレブオーラの半端ないことに気付かされる。

 それに比べて俺は……特訓の甲斐無く、唯一鉄の剣を腰にぶら下げ、劣等生として注目の的。

 俺の苦行の成果はズタボロのジャージのみ、だったわけだ。

 

 確かに、カルラが不機嫌になるのも無理ないか?

 朝から完全無視だもんな。態度が子供で困る。いや、13歳はまだまだ子供か。

 

 いまだ、学園長?の聞き取れないボソボソが続く。

 聞き取れないにもかかわらず、会場を満たしていく……俺は、圧迫めいたものを感じた。


 まるで念仏みたいだ。


 そう思った途端、視界に映る景色がパッと変わった。


 青、い空?

 え? 空?

 周りを見渡そうにも、体が動かないようで……。

 仕方ない。視界で捉えられる限りの把握を試みるか。

 正面は空。上方は……でかい山吹色の物体。あれは、もしかして柿? そして、下方にも柿? しかも枝に実っている状態だ。後方は確認できないが、おそらく柿?

 さて……ということは、俺も柿?

 

 いやいやいや、柿に視力や思考はありえないから。

 

 結論……これは、暗示だ。

 

 でも、何で? 何で俺は柿やってるの?

 軽くパニクる俺の耳に、バッサ、バッサと羽音が……。

 聴覚もあるんだ。と感心している場合ではない。羽音の正体はカラスだ。俺の目線のすぐ隣の枝に、奴はとまった。じっと見つめられて……。

 もしかして、俺は熟し柿なのか?! カラスの好物の?

 

 うわあ……! 天敵登場で、絶体絶命な俺。

 

 誰か、この暗示を解いてくれ……!


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