表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

やきそヴァ ダイビング

「ようやく追い詰めたぞ」

 進矢は風画を完全に追い詰めた。ここは校舎四階の廊下の最果て。階段も、教室への通路も進矢の背後にある。唯一の脱出手段は、窓だけであった。

「くそ。くそ。ここまで来て追いつかれたか!」

 ここまで来る間に食べていれば良いものを、風画は変な所を律儀に守っていたのだった。彼は未練がましく脱出経路を模索している。

「観念しろ! やきそばゲットぉ!」

 進矢は風画に飛びかかった。逃がしはしない、と跳躍の直後にそう悟った。目の前の風画の姿が視界を占める割合が、時間に比例して大きくなっていく。向こう側の表情も、次第に鮮明になっていった。ただひとつ気がかりなのは、風画が窓の外に向けて、跳躍の姿勢をとっていたことだった。この期に及んで、この男は一体。

 一方、風画といえば、進矢が飛び掛ったその時も、まだ可能性を信じていた。進矢が飛びかかるより早く、残された可能性に繋がる手綱を握る。体を窓に向け、膝を曲げて全身を沈み込ませる。全身のバネを縮ませ、後は一気に解き放つだけだ。運良く、目の前の窓は開いていた。

 風画が進矢から逃げ切れたと信じ切ったその時、進矢が風画に追いついた。腰の辺りを両腕でがっちりと捉え、慣性に従って二人は同じ方向へ飛んでゆく。ただ、風画の手にしていた特大焼きそばパンだけはそうはいかなかった。

『ああ〜!』

 二人は同時に絶叫する。

 進矢が風画に組み付くほんの数瞬手前、風画は全身に溜め込んでいたエネルギーの一部を解き放っていたのだった。だが、そのエネルギーの一部は風画ではなく、彼の手にしたやきそばパンに作用したのであった。綺麗な放物線を描き、それは窓の外へと消えた。

「チクショウ。オレのやきそヴァー!」

 進矢と共に廊下に倒れていた風画は、素早く身を起こしそう叫んだ。

「ふざけんな。オレの三ヶ月は無駄にはさせねえぞ!」

 風画の執念は凄まじく、彼は迷うことなく窓の外へと飛び出した。何の逡巡も躊躇いもない、それはそれは潔いダイビングだった。やきそばパンと同じく、彼も窓の外へと消える。

「風画ァ!」

 ほとんど投身自殺ともとれる風画の行動を目の当たりにし、進矢は彼を呼び止めるべく叫んだ。しかし、風画はそれを空中で聞くこととなるのである。進矢の叫びは、虚しく昼休みの校舎で木霊した。

 今回はダイブについて書いたので大分短くなりました。その為、次の更新は早めにします。土曜日にできればいいなあ、と私は考えております。

 では読者の皆様、土曜日にまたお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ