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やきそヴァ マンダム

え〜、ちょっと気付いたことがあります。別に、そんなに重々しい事では御座いません。

それは何かと言うとですね。実は、私がこのサイトに来て小説を書くようになってから、早一年の月日が経ったという事です。つまり、今回の更新は一年記念日更新という事なんですね。

厳密に言えば、もっと早い時期かもしれませんが、一応、一年経過の報告をさせて頂きます。

これまで、ありがとう御座いました。そして、これからも宜しくお願いします。

「あー、もう体育うざい」

「バスケ部が何言ってんの……」

「バスケは別だって」

 そこは、禁断の花園とでも言えば良いだろうか。十数名のうら若き乙女らが何に脅える事も無く、自らのその麗しき肌を晒す一室であった。

 その中でも一際端正で可憐な印象を放つ二人の女生徒、河合美奈と高木裕美もまた、事も無げにその柔肌を露にしていた。

「てゆーか、大磯センセイってマジ厳しいよね。チャイム鳴る前に居ないと欠席扱いだなんて」

 担当の体育教師に対する細やかな愚痴を溢しながら、美奈はワイシャツのボタンを解いて行く。

 美奈は間違いなく美女であった。身長、体型ともスーパーモデル並み。容姿端麗の形容が相応しい。目鼻立ちが整っており、肩くらいの長さの髪は黒く輝いている。彼女は風画、槍牙、進矢と同学年で、女子ではあるがバスケ部である。また、風画の彼女でもある。

「しょうがないよ。大磯センセイって、ウチらの高校に来る前は布野高校だったんだって」

 彼女の姉から聞き入れた情報を自慢気に披露しながら、裕美は自分の鞄から着替えのティーシャツを取り出す。

 裕美もまた、なかなかの女性だった。身長は平均より高めでルックスも良い。ぱっちりとした瞳は、なんともコケティッシュだ。美奈が隣にいるせいで見劣りしてしまうが、それでも彼女の容姿は際だって美しい。彼女もまた風画達と同学年で、バスケ部である。また、裕美は進矢の彼女だ。

 ちなみに、布野高校とは県内きっての不良高校で、喫煙、飲酒、薬物、窃盗。更には売春、傷害、恐喝、暴行と、不良の総合商社なのである。この学校に入学した者の半数以上は、近い将来暴力団と関与、卒業生の半数近くは暴力団関係の職に就くらしい。

 閑話休題。

 部屋中に他愛ない雑談が木霊する中、部屋の外から粗雑で品の無い怒鳴り声が聞こえた。

「邪魔だ! どけ!」

「デカいくせに早いんだよ!」

 その部屋にいた多くの者には、希薄な怒鳴り声だったかもしれない。しかし、声の主とよく見知った彼女達には、言い知れない胸騒ぎがしてならなかった。

「ねえ……。これって……」

 廊下の方をじっと見つめる美奈。着替えはいつしか中断し、前をはだけたワイシャツ姿になっている。

「うん……。嫌な予感……」

 着替えのティーシャツに袖だけを通したまま、裕美は固まっていた。

 その間にも、例の怒鳴り声はその距離を縮め、それと同時に彼女らの不安を煽る。

 そして、その時は来た。聖域が侵されたのである。

 スライド式のドアが轟音と共にあらぬ方向に開いたと思われた矢先、特大焼きそばパンを抱えた男が、室内に突っ込んで来たのだった。

『!』

 室内にいた全員が息を飲み、その場に凍り付く。

 ドアが吹き飛んだのもあるかも知れない。しかし、聖域を侵す者が現れた事が、彼女らの驚きの対象だった。

「何やってんのよー!」

 美奈は顔を赤らめてヒステリックに叫びつつ、はだけた胸を隠すべく、両腕を胴体に密着させた。

「うおおおおおっ」

 多くの叫び声をよそに、侵入者は雄叫びを上げて走り去って行く。

 侵入者が反対側のドアを蹴破り外に出たとき、室内には異様な静けさが訪れた。皆が皆互いの顔を見合わせ、戸惑いと驚きを隠せずにいる。

「あれって……。風画クン……だよね……」

 裕美が小さく溢した。一方、美奈はうつ向いてしゃがみこみ、指で床をなぞりながらぶつぶつ呟いている。

「大バカ……。あんなヤツを好きになった自分が嫌い……」

 そのおり、今度は第二波が襲って来た。

「どこ隠れた! 出てきやがれ!」

 最初の侵入者と同じドアから室内に押し入り、意味不明な事を叫びながら、次なる侵入者がやってきた。

「ちょっ……! アンタ、場所をわきまえ……」

 地が割れる様な叫声。室内の裕美と美奈以外が、一気に声を荒げる。

 二人目が自分と親密な関係である事に驚きを隠せず、裕美は声を張り上げるが口篭る。

「あ、裕美……。あ、いや、あの、これは言葉の綾ってやつで……、それで……」

 意味不明な釈明をしながら、裕美に歩み寄る。辺りの叫声は相も変わらず轟き続けている。しかし、その時だった。二人目の侵入者は、床に転がっていたスプレー缶を踏みつけた。

「! なにぃっ!」

 缶によって足をすくわれ、二人目は裕美の足下に悲劇的なキスをする。しばらして二人目が顔を上げると、そこは正に禁断の聖域。神秘の魔境。最後の秘境であった。誰も知りうることのない奇跡の情景だった。二人目は『春宵値万金』の意味を知った。

「おおう……! マンダム……」

 二人目は床にぶつけたせいか、それとも別の理由かは定かではないが、一筋の鼻血を垂らした。その直後、彼の顔面を裕美の足の裏が踏みつける。

「何がマンダムだってぇ! 何が!」

 裕美はこめかみに血管を浮かべ、更に力強く二人目を踏みつけた。

「ぐぐう……」

「アンタがバカなのは知ってたけど、これじゃ変態じゃないの! 何か言いなさいよ!」

「ああ、もっと……」

「黙りなさい! このAV男優!」

 不幸な事に、二人目の影のあだ名は裕美の耳に届いていた様だった。この時点で既に絶望的だったのだが、これでもう確実である。

 裕美の意を決した行動に触発されたのか、室内にいた美奈以外が一気に二人目に殺到する。吹き荒れる怒号、舞い飛ぶヘアブラシとスプレー缶、飛び交う罵声。地べたに這いつくばる二人目に、一切の容赦も酌量もない暴力の嵐。

「この変態!」

「バスケ部の恥!」

「髪染めてんじゃねえ! 顔だけヤロー!」

 十数名の理不尽な折檻。

 嗚呼、これが終焉を迎えるのはいつの日か。これぞ正しく『天国から地獄』であろう。二人目は無事なのだろうか。よくよく考えれば、彼は後々英雄と称えられるだろう。

「しゅ……、修羅場だ……」

 その場を過ぎ去った一人目は、二人目の安否を気遣い引き返してきたのだが、それはもう手遅れであることに気付いた。特大焼きそばパンを口にくわえ、彼の方を見て合唱。そして黙祷。

(進矢よ。お前はよくやった。君は英雄だ……)

 騒がしい女子更衣室の中で、一人美奈だけが鬱に浸っていたのであった。

どうも皆さんこんばんは。今回ばかりは週一更新を手堅く守っている伊之口です。

今回は、ちょっとアレな描写でした。この様な描写で感じること、それは己の能力の無さです。巧い人は巧いんだろうなあ〜。しかも、今回は一年記念日更新。こんな内容で良いのかなあ〜。

はい。ぼやきはこの辺にいたしまして、これからも頑張っていこうと思います。七月中には完結の予定なので、更新のペースがちょっと縮まるかも知れません。

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