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やきそヴァ AV

 身長一八〇センチ弱。かなりのイケメン。襟足は長めで、全体的に茶色っぽい頭髪。彼の名は飯島進矢と言い、風画の同級生でバスケ部に所属している。他に彼を言い表すなら、顔の割にはバカで、いい加減な性格の持ち主である。

「聞いたぜ風画よお〜。何でも食堂で大暴れしたらしいじゃん。ラグビー部の高畠がキレてたぜ。お前一週間以内に死ぬな、うん」

 風画の肩に腕を回し、気障りな口調で言い放つ。なんとなく、発言が鬱陶しくて仕方がない。

「ついでに美奈ちゃんもかなりオッチーだったぞ。どうする?」

「うるせえな。てめーの趣味がAV集めだって高木ちゃんにバラすぞ」

「趣味じゃねえよ」

「そうだな。お前は出演する方だったよな」

「殺すぞテメェ!」

 風画の一言に憤慨し、声を荒げて怒鳴る進矢。進矢が怒るのには、少し込み入った事情があった。以前、風画が進矢の部屋を訪れた際、彼は進矢の部屋に隠された大量のAVを発見したのだ。その上、ノリでその内の一本を見てみようという事になり、無作為に風画が一本選び出したのだが、その一本がまずかった。それに出演していた男優が、進矢にそっくりだったのだ。しかも後々その男優の名前が『飯島進也めしじましんや』である事が判明し、それからと言うもの、進矢はその事で散々いじくり回されたのである。また、進矢には高木裕美という夏休みに必至になって獲得した彼女がいるのである。男同士では単なる笑い話だが、それが女性に聞かれると冗談では済まされないだろう。下手をすれば絶交されてもおかしくないネタだ。

 閑話休題。

 そのおり、進矢は風画の手にした特製焼きそばパンに気付いた。

「お、これが噂の焼きそばパンか。相変わらずでかいなあ」

 進矢は焼きそばパンに目を落とした。

「風画、これくれ。オレまだ昼飯喰ってないんだ」

「ダメ、絶対ダメ。オレが命懸けで獲得したんだぞ、それこそお前にとっての高木ちゃんの様にな。オレが高木ちゃんよこせ、っつったらどうする?」

「お前には美奈ちゃんがいるだろ。なあ、くれっ」

「うるさい! とにかくこれはオレの物だ」

 そう言うと素早く立ち上がり、焼きそばパンを持ったまま進矢と距離を置く。

「どうしてもくれないんだな」

「ああ、お前は食堂の売れ残りでも喰ってろ」

「イヤだね。もうこうなったら実力行使だ! よこせコラ」

 進矢がそう叫ぶのと走り出すのとでは、ほとんど同時だった。そして、相対する風画も全く同じ瞬間に振り向き、全力で駆け出す。

「待て! それよこせ」

「イヤだね。そんなに欲しかったら追いついて見ろ」

「おお上等だよ。デカい図体しやがって、なにげ俊敏に動いてんじゃねえ」

 風画は右へ左へと巧みに進路を変更し、進矢を引き離す。進矢もそれにすかさず反応し、風画の進路を追って右へ左へと進路を変えていった。

「へっへ。AV男優め、追いつけるなら追いついてみな。ひゃっほう!」

 風画は越えたからかにそう叫ぶと、階段に向かって進路を変える。

「AV言うな!」

 進矢は風画を追って、階段へと吸い込まれた。

 壮絶な追いかけっこの始まりである。

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