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ボーダーフリー  作者: ちゃりネコ


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22/27

林間合宿の一幕 

 エルーとドリアドネ、そして雪影の戦線復帰によって、俺達は無事に6日目を乗り切った。

 地獄の林間合宿も残すところ、今夜が最後。

 合宿の目的だった魔力強化は想像以上の効果を生み、候補生達は見違えるほどの成長をみせる。

 基礎的な身体能力の向上に加え、魔力を使用する特殊能力も軒並みレベルアップしていた。


「まぁ、それでもお前は弱いけどにゃ~♪」

「ほっとけ。それよか、気づいてるか? 敵の数も、強さも、初日に比べて段違(ダンチ)じゃね?」


 2日目に現れたズルツェは翌日3体に増え、6日目の昨日は10体の団体様だ。

 その分、得られる魔力も多かったのだが、最終日の今夜は何体お越しになるのか予想もしたくない。


「せめて予約しろってんだ。おもてなしする方の身にもなれよ」

「あっちも忙しくて過労死するにゃー」

「いや、お前はもっと働けよ。このクソニート猫妖怪」


 恒例の(あお)り合戦を終え、拠点の見回りを兼ねて皆に声を掛けておくとしよう。


「スケさんにデュランのおっさん、調子はどうだい?」

「……不死者の体調を気遣うか、小僧」

「はは、確かに余計なお世話だったな」


 聞けば不死者(アンデッド)に属する魔者は、痛覚を捨てた代償に肉体を修復する(すべ)がなく、他者の身体に乗り移ったり、部分的にを補わなければ存在できないらしい。

 文字通り不老不死に近い反面、戦えば戦うほど、元の姿からは遠ざかる運命なのだ。


「武道を極めんとする我輩らにとって、そのような事柄は些事(さじ)なり」

「いつも最前線に立ってくれてるもんな。おかげで助かってるぜ」


 大太刀を扱うスケさんは失った両腕をゾンビの骨で補った結果、今では4本腕の三刀流剣士に変貌を遂げた。

 デュランは度重なる激戦で鎧が破損した為、全身の皮膚に直接金属プレートを埋め込んでいる。

 痛覚を超越した種族特有のパワーアップには、心底驚かされるばかりだ。


「よぉ、ちょっといいか」

「どうしたヘンリー。禁欲生活が長すぎて、とうとう俺が女に見えたか?」

「んなワケあるか! お前から教わった秘薬の作り方だけどよ、調合ピーキー過ぎじゃね? あんなの作れる気がしねーよ」

「そりゃ秘薬だからな。大丈夫だって、お前なら絶対にやれる! 上手くいったら、次は()れ薬の作り方を教えてやる」

「マジかよ! それこそ夢の秘薬じゃねーか!」


 嘘である。

 しかし、在るはずのない物を求め、奔走する青年の姿は実に美しい。

 ヘンリーは大急ぎで拠点へ戻り、秘薬の調合に没頭した。

 あの様子なら、今夜の襲撃に間に合うだろう。


「あの……」

「エルー、昨日も大活躍だったな。君がいれば怖いものなしだぜ!」

「あ、ありがとう」


 連日に渡って巨大ゾンビ、腐肉喰(ズルツェ)を圧倒する少女エルー。

 物静かで引っ込み思案な性格に反して、カトブレパスの能力は凶悪の一言に尽きる。

 彼女が持つ石化の魔眼は、条件さえ満たせば一撃必殺の威力を誇るのだ。


「その……実はちょっと困ってて……」

「なになに? 君には助けられっぱなしだからさ、遠慮なく言ってよ」

「うん、それが……どうしても合わなくて」


 ヤバイ――もしや、候補生の誰かとトラブったのか?

 あるいは、ついにヘンリーが手を出したとか?

 だとしたら、あいつを犠牲にしてでも……。


「いただいた下着のサイズが……合わなくて……」

「あ、そっちか。林間合宿が終わったら、()()()()()()()を探しておくよ」

「……!」


 エルーの瞳に魔力が宿る。

 全身に鳥肌が立ち、うっかり地雷を踏みつけた自分の愚かさを呪う。


「ちょ! あー、あー、用事を思い出したー! ゴメーン、それじゃー!」

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